真形雅人

内視鏡検査を主とした業務にあたっている内科医。患者や知人から聞かれることをまとめていき…

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内視鏡検査を主とした業務にあたっている内科医。患者や知人から聞かれることをまとめていきたい。少しでも健康に日々を送る手助けになれば。東北に縁がある。夢は空を飛ぶこと。

マガジン

  • 抗がん剤に詳しくなる

    「抗がん剤」と聞いても、どんな薬があるのか、どんな作用があるのか分からないことも多いと思います。消化器癌で用いられる薬を中心に、解説していきます。

  • ヘルスケア、まーがた

    健康に気を使うべきなのは、分かる。健康診断も受けている。でも、何に気をつけたらいいのか?健康診断の結果、これは果たして病院に行くべきなのか?今ある症状は、救急車を呼ぶべきなのか?なとなど、今まで受けた質問をまとめています。

記事一覧

分子標的薬各論~抗RANKL抗体~

概要未熟な破骨細胞の表面には「RANK」と呼ばれる受容体がある。この受容体に結合するリガンドに「RANKL」と呼ばれる物質があり、RANKに結合すると破骨細胞は成熟する。が…

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4週間前

分子標的薬各論~BCR-ABL阻害薬~

概要ヒトには対になった染色体が23組、計46本存在する。この染色体は1番から23番までの番号がついているが、まれに染色体の一部分が、ほかの染色体の一部分と入れかわるこ…

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1か月前

分子標的薬各論~EGFR阻害薬~

EGFR阻害薬とは上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Recepeter、EGFR)を阻害する薬剤である。EGFRにはチロシンキナーゼが含まれるが、抗体薬は受容体に結合するこ…

真形雅人
1か月前

分子標的薬各論~HER2阻害薬~

HER2とはヒト上皮成長因子受容体2(Human Epidermal growth factor Receptor type2=HER2)のことである。前回記載した、EGFR(Epidermai Growth Factor Receptor)と似てい…

真形雅人
1か月前

抗がん剤各論~微小管阻害薬~

微小管二重らせん構造をとっているDNAだが非常に長いため、普段は特殊なたんぱく質を中心に固まっている。この固まった状態を染色体と呼び、必要な時に必要な場所だけが緩…

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2か月前
1

抗がん剤各論~抗腫瘍性抗生物質~

DNAに結合し、合成を阻害するにより抗腫瘍効果をあらわす薬剤である。土壌に含まれるカビなどの微生物から作られた製剤であり、抗腫瘍性抗生物質(または抗がん性抗生物質…

真形雅人
2か月前

抗がん剤各論~トポイソメラーゼ阻害薬~

トポイソメラーゼ2重らせんになっているDNAを複製するためには、ほどいて1本にしたり、また2本に戻したりする必要がある。このDNA立体構造を維持、変化していくのに必要な…

真形雅人
2か月前

抗がん剤各論~プラチナ(白金)製剤~

DNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導する。薬剤の構造中にプラチナ(白金)を含むためプラチナ(白金)製剤と呼ばれる。なお、プラ…

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2か月前

抗がん剤各論~アルキル化剤~

アルキル化剤はマスタードガスの研究から開発された抗がん剤で、主に血液疾患に用いられる。適応に消化器病が記載されているものもあるが、実際に消化器癌で使われることは…

真形雅人
2か月前

抗がん剤各論~代謝拮抗薬~

前回、抗がん剤には①代謝拮抗薬、②アルキル化剤、③プラチナ(白金)製剤、④抗腫瘍性抗生物質、⑤トポイソメラーゼ阻害薬、⑥微小管阻害薬があることを書いた。今回はそ…

真形雅人
2か月前

抗がん剤(抗悪性腫瘍薬)~総論~

一般的に、悪性腫瘍に対する治療は①手術、②化学療法(抗がん剤)、③放射線治療、である。他の臓器に転移がある場合、手術加療が難しく化学療法が選択されることが多いが…

真形雅人
2か月前

血が足りないならレバーを食べればいいじゃない。

貧血。血液中の「赤血球」という成分が少ないことを指し示す言葉である。なぜ赤血球が少なくなるかというと、血が作られる分を超える量が出ていく(もしくは壊れる)からで…

真形雅人
3か月前
1

塩分制限は本当にした方がよいのか?

スーパーで買い物をしていると、やたらと目につく言葉がある。それは「減塩」だ。醤油、味噌といった調味料をはじめとして、レトルト食品やお弁当など多くの商品が減塩をう…

真形雅人
3か月前

いびきに関する論文まとめ

小児とフーセンガムトレーニング小児を対象とした実験で、フーセンガムトレーニング(ガムを噛む、舌でガムを丸める、舌と上顎で押しつぶす、ガムを膨らませる等を行う)に…

真形雅人
3か月前
4

究極のアンチエイジング

人間の苦しみを仏教では、生・老・病・死の4つで教えられているが、その中でも老いる苦しみは皆実感として持っているだろう。 人類永遠の夢である不老不死。それを実現す…

真形雅人
3か月前
4

アイドルと子宮内膜症

日本で最も歌唱力のあるアイドルと言えば? そう、松浦亜弥。間違いない。 そんな松浦亜弥さんが公表した疾患、それが子宮内膜症である。 ではどんな病気なのか。 概要本…

真形雅人
3か月前
分子標的薬各論~抗RANKL抗体~

分子標的薬各論~抗RANKL抗体~

概要未熟な破骨細胞の表面には「RANK」と呼ばれる受容体がある。この受容体に結合するリガンドに「RANKL」と呼ばれる物質があり、RANKに結合すると破骨細胞は成熟する。がん細胞はこのRANKLの生産を促進し、破骨細胞の働きを過剰に活発化する。その結果、破骨細胞と骨芽細胞のバランスが崩れ、破骨細胞が骨を溶かしていく。このRANKLを標的として、骨転移や多発性骨髄腫に効果をもたらす抗RANKL抗体が

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分子標的薬各論~BCR-ABL阻害薬~

分子標的薬各論~BCR-ABL阻害薬~

概要ヒトには対になった染色体が23組、計46本存在する。この染色体は1番から23番までの番号がついているが、まれに染色体の一部分が、ほかの染色体の一部分と入れかわることがある。これを「転座」と呼ぶ。

慢性骨髄性白血病(CML)患者の白血病細胞において、9番染色体と22番染色体の間における転座が見られることが知られており、この転座した染色体を「Philadelphia染色体(フィラデルフィア染色体

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分子標的薬各論~EGFR阻害薬~

分子標的薬各論~EGFR阻害薬~

EGFR阻害薬とは上皮増殖因子受容体(Epidermal Growth Factor Recepeter、EGFR)を阻害する薬剤である。EGFRにはチロシンキナーゼが含まれるが、抗体薬は受容体に結合することで、小分子薬は膜を通過し、細胞内からチロシンキナーゼに結合することで作用する。つまり、EGFRとは「受容体型のチロシンキナーゼ」であり、その作用を外から(=抗体薬)、もしくは内から(=小分子薬

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分子標的薬各論~HER2阻害薬~

分子標的薬各論~HER2阻害薬~

HER2とはヒト上皮成長因子受容体2(Human Epidermal growth factor Receptor type2=HER2)のことである。前回記載した、EGFR(Epidermai Growth Factor Receptor)と似ていることからも分かるように、HER2にもチロシンキナーゼが含まれている。HER2タンパクは細胞を増やす信号を受けとると、2つのヒト上皮成長因子受容体がく

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抗がん剤各論~微小管阻害薬~

抗がん剤各論~微小管阻害薬~

微小管二重らせん構造をとっているDNAだが非常に長いため、普段は特殊なたんぱく質を中心に固まっている。この固まった状態を染色体と呼び、必要な時に必要な場所だけが緩んで、少しだけほどける仕組みになっている。細胞分裂時、この染色体を2つに分ける働きをするのが微小管である。

種類細胞分裂には、①微小管が伸びて染色体と一体になった「紡錘体」と呼ばれる構造を形成する時期と、②紡錘体が分裂して微小管が切れ(

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抗がん剤各論~抗腫瘍性抗生物質~

抗がん剤各論~抗腫瘍性抗生物質~

DNAに結合し、合成を阻害するにより抗腫瘍効果をあらわす薬剤である。土壌に含まれるカビなどの微生物から作られた製剤であり、抗腫瘍性抗生物質(または抗がん性抗生物質)と呼ばれる。これも消化器癌に用いられることは少ないため、サラッと紹介のみに留めておく。

種類(数が多いため、一部のみ記載)<アントラサイクリン系>
ドキソルビシン(アドリアシン)
アクラルビシン(アクラシノン)
アムルビシン(カルセド

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抗がん剤各論~トポイソメラーゼ阻害薬~

抗がん剤各論~トポイソメラーゼ阻害薬~

トポイソメラーゼ2重らせんになっているDNAを複製するためには、ほどいて1本にしたり、また2本に戻したりする必要がある。このDNA立体構造を維持、変化していくのに必要な酵素がトポイソメラーゼであり、その作用を阻害するものがトポイソメラーゼ阻害薬である。トポイソメラーゼ阻害薬によってDNAの切断・再結合がうまくいかなくなったがん細胞は正常な分裂ができなくなり、アポトーシスが誘導される。

種類トポイ

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抗がん剤各論~プラチナ(白金)製剤~

抗がん剤各論~プラチナ(白金)製剤~

DNAに結合することでDNA複製を阻害し、がん細胞の自滅(アポトーシス)を誘導する。薬剤の構造中にプラチナ(白金)を含むためプラチナ(白金)製剤と呼ばれる。なお、プラチナ製剤は開発された時期によって第一~第三世代に分けられているが、第二世代は消化器癌に用いられることは少ないため、シスプラチンとオキサリプラチンを中心に解説する。

種類第一世代:シスプラチン(アイエーコール®)
第二世代:カルボプラ

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抗がん剤各論~アルキル化剤~

抗がん剤各論~アルキル化剤~

アルキル化剤はマスタードガスの研究から開発された抗がん剤で、主に血液疾患に用いられる。適応に消化器病が記載されているものもあるが、実際に消化器癌で使われることは多くないため、今回はサラッとだけ。

作用機序DNAをアルキル化する(2本のDNAを異常な形で結合させる)ことで、DNA複製を阻害する。

種類(適応は添付文書より)イホスファミド

肺小細胞癌、前立腺癌、子宮頸癌、骨肉腫、再発又は難治性の

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抗がん剤各論~代謝拮抗薬~

抗がん剤各論~代謝拮抗薬~

前回、抗がん剤には①代謝拮抗薬、②アルキル化剤、③プラチナ(白金)製剤、④抗腫瘍性抗生物質、⑤トポイソメラーゼ阻害薬、⑥微小管阻害薬があることを書いた。今回はその内の一つ、代謝拮抗薬についてである。

代謝拮抗薬の種類抗がん剤は主に細胞分裂を阻害することで効果を発揮すると前回記載した。細胞分裂には、核酸を合成する、DNAを複製する、分裂するの大きく3つの要素があり、この核酸合成を阻害するのが代謝拮

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抗がん剤(抗悪性腫瘍薬)~総論~

抗がん剤(抗悪性腫瘍薬)~総論~

一般的に、悪性腫瘍に対する治療は①手術、②化学療法(抗がん剤)、③放射線治療、である。他の臓器に転移がある場合、手術加療が難しく化学療法が選択されることが多いが、化学療法は「根治を目指す」というより「進行を抑制する」といった側面が大きい。

ただこの化学療法、非常に薬剤の種類があり、自分が一体何の薬を投与されているのかよく分かっていない人も多い、というか大半である。そこで今回から抗がん剤について(

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血が足りないならレバーを食べればいいじゃない。

血が足りないならレバーを食べればいいじゃない。

貧血。血液中の「赤血球」という成分が少ないことを指し示す言葉である。なぜ赤血球が少なくなるかというと、血が作られる分を超える量が出ていく(もしくは壊れる)からである。逆に言えば、出血していてもそれを補えるくらいに血が作られていれば貧血が進むことはない。今回は、貧血改善に必要な栄養素である「鉄」についてまとめてみる。

鉄の種類赤血球を作る上で最も欠かせないもの。それが「鉄」である。鉄には、動物性食

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塩分制限は本当にした方がよいのか?

塩分制限は本当にした方がよいのか?

スーパーで買い物をしていると、やたらと目につく言葉がある。それは「減塩」だ。醤油、味噌といった調味料をはじめとして、レトルト食品やお弁当など多くの商品が減塩をうたっている。塩分制限は本当にした方がよいのだろうか。現在までの研究結果を振り返ってみる。ちなみに結論は、「心臓・腎臓・肝臓が悪い人は減塩した方が良い。それらに問題がない場合、血圧と塩分が関係する、とは言い切れない」である。

1954年、ダ

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いびきに関する論文まとめ

いびきに関する論文まとめ

小児とフーセンガムトレーニング小児を対象とした実験で、フーセンガムトレーニング(ガムを噛む、舌でガムを丸める、舌と上顎で押しつぶす、ガムを膨らませる等を行う)によっていびきが軽減した、という報告がある。
<文献>
松井美咲氏ら、フーセンガムトレーニングによる幼稚園児の口腔機能への影響、薬理と治療51巻4号、Page581-586

いびきと自律神経の関係いびきの原因として「舌根沈下」が挙げられるが

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究極のアンチエイジング

究極のアンチエイジング

人間の苦しみを仏教では、生・老・病・死の4つで教えられているが、その中でも老いる苦しみは皆実感として持っているだろう。

人類永遠の夢である不老不死。それを実現する、老いた体を戻す薬は存在するのだろうか。

結論現在、一般的に使える薬はまだない。ただし、臨床試験が行われている治療法はいくつか存在するのだ。

老化細胞はなぜ病気を引き起こすのか?細胞は一定の増殖後、分裂を停止する性質を持つ。これを「

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アイドルと子宮内膜症

アイドルと子宮内膜症

日本で最も歌唱力のあるアイドルと言えば?
そう、松浦亜弥。間違いない。

そんな松浦亜弥さんが公表した疾患、それが子宮内膜症である。
ではどんな病気なのか。

概要本来、子宮の内側にだけ存在する「子宮内膜」が、子宮内側以外で増殖してしまう病気である。20~30歳代の女性に多く発症し、加齢による女性ホルモン分泌の減少を境に症状が治まるのが一般的である。

子宮内側以外の場所とは?頻度が多い場所として

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