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#読書感想文
『メタバース進化論』感想
メタバースは、近年にわかに注目を集めるフロンティアの名称である。本書は、その原住民自身による入門書。自らの体験と統計を基に記されるメタバースの現状や、経済や哲学の観点から描かれる展望に、好奇心をくすぐられる。
わたしはふと、希望に満ちたその筆致から、小学生の頃に読んだ『あたらしい憲法のはなし』を連想した。戦後日本で、平和や民主の素晴らしさをうたった官給本だ。『メタバース進化論』も、新しい時代の
第一回かぐやSFコンテスト最終候補作感想
候補作品は以下のサイトで公開されている。
①「Eat Me」
現実に居場所を失って、図書館に魂を、社会に肉体を捧げる、主人公。成長する学校図書館に就職する者たちは、例外なく「マザー」の内部に吸収されて、今度は吸収する側に回るだろう。繰り返される永遠。図書館という名の永久機関。強制と支配の社会(物質世界)から、逃れるための図書館(精神世界)の姿が垣間見える一方で、社会に居場所をなくした人間は、社
「なめらかな世界と、その敵」感想————「時代」と「共存」
2020年という大きな区切り、一つの時代の転換点が、目の前にある。本作には、まさにその「転換」と、「それ以前」を象徴するエッセンスが見られる。そしてしつこいくらいに追求されているのが、対立するものの「共存」。興味深いのは、作者は作中、あらゆる「転換」あるいは「幕開け」において、そこに少なからず希望を見出していることだ。各短編は全く別個に書かれたモノであり、こうした視点で読むことに疑いを持つことは避
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