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土竜のひとりごと

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エッセイです。日々考えること、共有したい笑い話、生徒へのメッセージなどを書き綴っています。
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#生きる

第4話:おばあちゃん

第4話:おばあちゃん

おてんとうさま

おてんとうさまに
恥ずかしくないように
生きなさい

いつもおばあちゃんは
そう言った

ふと見上げると
頭の上には
青い空と
ほっかりと
おだやかな
おてんとうさま

正しさとは
案外
そんなものなのかもしれない

これもまた愚話である。

学生時代、ガラにもなく思いっきり贅沢をしてみたいと思うことがあった。別段これと言って深い理由があるのではなかったが、時としてほとんど衝動的

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私が先生をちゃんと死なせます

私が先生をちゃんと死なせます

昨年の8月の人間ドックを受けました。血液検査、腹部エコー、胸部レントゲン、胃のX線検査、すべて異常はないとのことでした。

もう15年以上毎夜、酒を飲み、煙草は40年間、コンスタントに一箱を吸い、日々はほとんど疲れ切ったボロ雑巾のように生きているのに。丈夫な体をくれた親に感謝したいと思います。

ただ、今回のカウンセリングの先生は呼吸器系の専門の先生で、こうも言われました。
「レントゲンで見る限り

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第46話:黄金バッド

第46話:黄金バッド

僕のオモチャに関する記憶はオヤジが黄金バットの人形を買って来てくれたことに始まる。金色に塗られたセルロイドの体に、表は黒、裏は赤のビニールのマントをつけた小さな人形だった。

今のものに比べれば安っぽいものであったに違いないが、その日は嬉しくて、手に持ってそれを飛行させてみたり、紐を付けて壁に吊り下げてみたり、一日中それを眺め、それと遊んだことを今でも鮮明に記憶している。

小さい頃、家は貧しかっ

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やる気のないゆるさが大好きでした

やる気のないゆるさが大好きでした

退職前に新聞部の生徒から「教員人生を振り返って!」と言われたので、自分の過去を振り返ってみた。

子供時分から、成績も悪く、いたって不器用。だから高校時分も、つまづかなくていいことにもつまづき、人間について考えたいと文学部に進んだ。

教員になったのも、カッコよく社会の歯車になりたくなかったと言ってみたいが、そうはなれなかったというのが実際のところ。

勤めてからも大概はつまづいていて、普通高校2

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第42話:視点

第42話:視点

ある同僚に聞いた話であるが、北海道の人が静岡に来てまだ間もない頃、何でもゴキブリを見て「なんてつやのある美しい虫だ」と思い、その美しい虫をつかまえて虫籠に入れて飼っていたらしい。
北海道ではゴキブリがいないらしく、静岡に来て初めてゴキブリを見たとのこと。職員室の机の上に大事そうにそれを置いたところが、女生徒が早速見つけて絶叫したので、何故かとその理由を聞き、初めてこのゴキブリが「そういう虫」である

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消滅と再生

消滅と再生

一説によると
月の語源は「尽き」だと言われる。
月は現れて、
太って、やせて、
そして消えてしまう。

月が隠れることを
「月籠る」と言い
それが「つごもり」に転じた。
それが「みそか」と言われるのは
太陰暦でのひと月が
約「三十日」であったからだ。
「三十歳」を「みそじ」と言うように
「三十日」は「みそか」と読まれる。
「晦」という字も
月の消滅した暗さを表す。

一度消えても
月はまた現れる。

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コロナに関する断想

コロナに関する断想

コロナウイルスに世界が揺れている。学校も揺れている。当初、まさかそんなことになるとは思わなかったが、僕も三日に一日の出勤で他は在宅勤務になった。

一日、家にいて映像授業を作っている。ITCなどに手を出さないと決めていたが、これもひとつの好機と思い直し、スマホも買い、日々、ひたすら作っている。

そう言うと格好はいいが、実際は、機材とグーグルとの闘い。ひとつつまずくと、それを解決するために半日かか

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