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#思想

樹木を上から見ると曼荼羅になる -ヴァレラ&マトゥラーナ『知恵の樹』を読む

樹木を上から見ると曼荼羅になる -ヴァレラ&マトゥラーナ『知恵の樹』を読む

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ウンベルト・マトゥラーナとフランシスコ・バレーラによる『知恵の樹』を読む。マトゥラーナとヴァレラは神経生物学者であると同時に、生命とは何か(生命と非生命のちがいはどこにあるのか)を問う中で、分節以前・区別以前からの分節化のプロセスを区別の体系たる言語によって思考する仏教の思想に接近したというおもしろい方々である。

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両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

両義的媒介項としての宿神 -中沢新一著『精霊の王』を精読する(2)

中沢新一氏の『精霊の王』を精読する連続note。

第一章「謎の宿神」を読む。



「侍従成通卿と言えば、比類のない蹴鞠の名手と讃えられ…」(『精霊の王』p.4)

この一節から始まる第一章は「蹴鞠」の話である。

「精霊の王」たるシャグジ−宿神は、日本列島に国家が成立する遥か以前から祀られてきた神である。

その精霊の王の話をするのに、なぜ国家が成立して数百年を経た後の時代の芸能のことから始

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複数の意味分節体系を共-変容させる ー井筒俊彦著「意味分節理論と空海」を読む

複数の意味分節体系を共-変容させる ー井筒俊彦著「意味分節理論と空海」を読む

(この記事は有料に設定していますが、全文無料で立ち読みできます)



井筒俊彦氏の『意味の深みへ』に「意味分節理論と空海」という論考が収められている。これがとてもおもしろい。

副題に「真言密教の言語哲学的可能性を探る」とある。

空海というのは弘法大師空海のことである。

空海は言語ということを徹底して考え、その秘密というか、通常の日常の言語の"表向き"の姿の、はるか向こうに隠れている深層を

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つながりきれない社会の中で~デモステネス『弁論集 6』

つながりきれない社会の中で~デモステネス『弁論集 6』

先日の記事で、本書の面白さについておおいに語った。

本稿では主に、弁論集第6巻で扱われる具体的な裁判記録を手引きとして、当時の法体系とそれを支える思想、そこから垣間見える古代ギリシアの価値観について、具体的に触れていきたい。

2,000年以上前の文化と現代の文化の間に横たわる大きな断絶と比べると、両者の法制度の間にある共通点の多さがよほど目を引く。上の記事で書いたのは、そうした側面だった。

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哲学者アレントは、大衆を政治的に動員するプロパガンダには、一定の特徴があることを指摘していた

哲学者アレントは、大衆を政治的に動員するプロパガンダには、一定の特徴があることを指摘していた

哲学者ハンナ・アレント(1906~1975)は1951年に『全体主義の起源』という著作の中で、全体主義が形成される過程を独自の視点で検討しているのですが、特に全体主義の確立を目指す政党が大衆を組織する際に使うプロパガンダに一定の特徴があることを指摘していました。

アレントの説によれば、プロパガンダによって政治的目的を達成するためには、プロパガンダの内容に新規性、独創性を持たせてはならず、かつその

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