そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第3章 ラスン救済編 5】
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ーフィールド リベール街道ー
《グォォォォォ!!》
ミシ…ッ!
【イーグルベア(凶)はリリアルの体を締め上げている!】
「……い…あ…!…」
【リリアルは10のダメージを受けた!】
グリル リリアル
HP 21 HP 4
MP 9 MP 4
LV.6 LV.7
「う…うわぁァァァァッ!!」
【グリルの攻撃!】
《グゥゥゥゥ…!!》
ギラ…!
【イーグルベア(凶)の爪が不気味に光っている!】
「…立ち向かっては…駄目です…!……逃げて下さい…ッ!…」
ビュアッ…!
【イーグルベア(凶)の鋭い爪がグリルを襲う!】
バシャァァァ…!
【イーグルベア(凶)に謎の液体がかけられた!】
《グオォッ!?》
バッ
【リリアルは解放された!】
「……う……ゴホ…ゲホ…ッ!…」
《グォォォォォ…!!》
【イーグルベア(凶)はもがき苦しんでいる!】
「………ッ?……一体…何が…?」
コロン…
【空のビンが転がっている!】
「…これは…聖…水…?…」
もう…いっちょ!
【マサアキは聖水を投げた!】
《グァウッ!!》
ガシャァ!
【しかしイーグルベア(凶)に弾かれてしまった!】
離れろリリアル!
「…ッ!?……あ……」
「マ…マ…!マサ…!」
《グガゥゥゥゥ…!!》
ヒュオォォ…!!
【邪悪なオーラがイーグルベア(凶)をさらに取り囲む!】
【イーグルベア(凶)はマサアキを睨みつけている!】
んあぁ?てか、熊こんなだったっけ!?
「マザアギ~〜ッ!!」
「何やってたんだよもうっ!!来るのおそいぞバカマサアキ!!」
…………
「…ん?おい!へんじくら痛い痛い痛い!?」
ギリギリ…!
【マサアキはグリルの頭をわしづかみにした!】
そりゃ激しく俺の台詞だ…!このクソ馬鹿ガキ…!
「取れちゃう取れちゃう!!」
はぁ〜……ったく、何勝手なことしてやがる
あ~あ~、角と牙と尻尾は元より、翼も殆どねぇぞ
まもなく公園で泥まみれになるまで遊んだ少年の出来上がりじゃねーか
「マサアキたちがリリねーちゃんを置いていくからだろ~」
それがな?囮ってんだ
分かる?囮?
「さっきリリねーちゃんにもそれ聞かれた~鳥の仲間じゃないのか?」
マジかこいつ…そらこの作戦がうまく行くわけはねぇよ…
リリアル、お前も大丈夫かよ?
「……ご覧の通り……全く大丈夫じゃありません…もう死にそうです…ボロボロに弱っている私を見て興奮したいのなら…今が大チャンスですよ…」
おう、大丈夫そうだな
「…ついに…軽くいなされるまでになってしまいました…魔法に続き私の色香も安っぽくなってきたみたいです…もっと女を磨きましょう…」
このシチュエーションでどういう決意表明してんだよ
「……………あの?…」
あん?
「…何故…あなたまで来てしまわれたのですか?…」
………
「…おかげで…囮作戦は見事に失敗です…せっかく無礼を振るった事や迷惑をかけた分…せめてもの償いとして私一人で残ったというのに……とんだ嬲られ損ですよ……」
「…………それともやはり……私の力は信用できませんでしたか?…」
そうじゃねぇって、こっちこそ悪かったな。うちのアホが暴走しちまってよ
あんたの覚悟踏みにじっちまった
魔法も、実は満足に使えないんだろ?
「………………」
やっぱりか
その様子だと、最初から全部分かってて残る気だったな?
無茶苦茶なやつ…相当イカれてるよ。お前
「……何とでも言って下さい…私の判断が間違っていたとは思いません…全員が一斉に全滅するよりは確実にマシだったは──ッんぐ!?…」
【マサアキは薬草を使った!】
【リリアルはHPが回復した!】
マサアキ グリル リリアル
HP 76 HP 21 HP 34
MP 0 MP 9 MP 4
LV.8 LV.6 LV.7
「…えほッ…!…………何なのですかあなた達は揃いも揃って…イカれてるのはそっちでしょう?…」
「…レディの繊細な口元を一体何だと思っているのですか…神の天罰が下りますよ…」
減らず口だと思ってるよ。そうやって薬草食ってしばらく塞いどけ
レディ扱いしてほしいんならな
「………むぅ…生意気です…」
「よ~し!マサアキが来たからおいらもまた……あれ?…」
ヘタン…
【グリルは力無く座り込んだ!】
どうした?
「足が動かない…何でだ?」
暴れすぎだ。お前は少し休め
「うん…そうする」
ありゃ?なんだ、珍しく素直だな
「マサアキ来たし、もう大丈夫だろ?…」
おぉう…あんま過大評価してくれんなよ
「…おいらちょっと寝ていいか?……ZZZ…」
はえーな、確認とる前に寝やがった
よっぽど疲れたのか?
「…まぁ…そこそこ頑張りましたからねこの人…」
そうなのか?
ん…?いつの間に虫から人にクラスチェンジしたんだ?
「………ッ///……の…皮を被った虫けらなりには…という意味です…」
ふーん、めんどくせ…
「…さ…さて…そんな事はさておき…」
《グォォォォォ!!》
【イーグルベア(凶)は怒っている!】
「…あなたの聖水により…いたく憤慨しているようですよ…」
俺の聖水とかいう言い方、なんかやめてくんない?
あらぬ誤解を招きそうだから
「…ここからどうするおつもりですか?…申し訳無いのですが…今の私はもう戦いでお役に立つのは難しいかと…」
あ~あ~いいよ
お疲れさん、別に手助けは必要ねーよ
「…しかしあなた一人では…何か策はあるのでしょうか?…」
あったり前よ、お前らと違って俺は堅実で用心深いんだよ
薬草80枚、毒消し草50枚、使い所が限られている松明ですら30本も所持
マサアキ大好き聖水に至っては道具屋のおばちゃんにもうそれ以上持てないよ。と言われた程だ
これだけアイテムがあれば何とかなるだろ
「…それは確かに心強いですが…具体的な作戦は?…」
勿論来る途中に色々考えたぞ
その結果、薬草数枚を口に含みつつ、右手には投げて攻撃する用の聖水を、左手には魔物がなるべく寄って来ないように松明を持った状態、後は自分に怖くないぞと暗示をかけるため鼻唄を歌いながら戦うのがベストだという結論に辿り着いたんだが
どう思うこれ?
「…どう思うと言われましても…珍妙な儀式のようだとしか思えません…」
珍妙な儀式言うな。これでも真面目に考えたんだから
「…必死なのですか?…魔物を馬鹿にしているのですか?…」
必死なんだよ
あんましこき下ろすんじゃねぇよ。不安になるだろ
マサアキ
HP 76
MP 0
LV.8
よひ、こへではんへきだ!
【マサアキは薬草、松明、聖水を装備した!】
「…凄い…本当にやるのですね…」
「…かつて人類に消耗品でこれほどまで身を固めた人がいたでしょうか…」
へへ…ほうか?へれんな…
「…別に誉めてませんよ?…」
ほれはひんひはいろひゅうひゃはまら!ひんはほへにふふへ!
「…はぁ?…ひょろひょろひょろと…何を言っているのかさっぱり聞き取れません……」
《グゥゥゥ…!!》
【イーグルベア(凶)は様子を窺っている!】
「……あ…でもさすがの魔物もマサアキさんの未知なるスタイルに若干怖じ気付いているようです…」
やふなはいまひかれーっては?
うっひ!いくへほい!!
ハラ…
【マサアキの口の装備が一部外れた!】
あ!いひまいおひは!!ひろっれひろっれ!!
「…何をやっているのです千載一遇のチャンスに…ふざけているのですか?…」
ふはへてれーよ!!
バシャァ…!
【マサアキは聖水をリリアルにぶちまけた!】
あ…
【リリアルは濡れている!】
「…ッ……やってくれましたね…」
ひがっ!?わらろりゃ…!
ドスッ
【リリアルの攻撃!】
ブフゥッ!?
【マサアキに8のダメージ!】
バサァ…!!
【マサアキの口の装備が全て外れた!】
「…や…!…なんかいっぱい飛び出てきました!…もう何なのですかこの生き物!?…気持ち悪い!…」
お…お前が腹パンするからだろうが!!
マサアキ
HP 68
MP 0
LV.8
ちきしょう余計な手間を!またセットし直さねーと!
薬草拾い集めるの手伝ってくれ!
「…手助けは必要ないとか言ってませんでしたか…?」
そこなんで厳しいんだよ!?じゃあ必要ある!
ここだけでいいから!
「…というよりあなたの口に入っていた物を拾う気になどなれないのですが…」
潔癖発揮してる場合か!露骨に嫌がってんじゃねーよ!
「…そもそも入れすぎではないのですかこの量は…先程もうまく喋れていませんでしたし…一体何枚入れていたのですか…?」
40枚だ
「……この人怖いです…」
「……それはどう考えても詰め込みすぎでしょう…」
いやでも、お前これスゲー画期的なんだって
見てくれは悪いかも知んないけど、一食みすれば即体力回復するんだから
しかも束ねた分だけ効力は持続するんだ。これは身をもって検証済みだから間違いない
「…前々からこのような奇人めいた事をやっていたのですか…」
誰が奇人だ。誰が
村の知り合いに修業をつけてもらってた時期があってな、編み出したのはその時だ
当時は最高62枚だったかな。付いたアダ名はアンデットだった
「…ば…化け物……奇人どころか化け物がここにいます…」
──と、無駄口叩いてる暇はなかったんだな
早く…
「……!…マサアキさん!…」
へ…?
ダンッ…!!
《ウガァァァァ!!》
【イーグルベア(凶)は勢いよく飛びかかってきた!】
うおあぁッ!?
バッ!
【マサアキは紙一重で攻撃をかわした!】
っぶね~!!あいつ俺への攻撃戸惑ってたんじゃねぇのかよ!?
「…よくよく見たら隙だらけ…と言うことに気付いたようですね…」
「…これからガンガン来そうです…気を付けて下さい…」
マジかよ…!
やべーやべー!急いでセッティングしないと…!
ん、あれ?俺の荷物…
俺の荷物は?
「……?…今しがた持っていたではないですか…」
……のはずだが、ないんだよ。あれ?
【マサアキは辺りを調べた!】
【しかし何も見つからなかった!】
おかしーな…
「…あ…あの……マサアキさん…あれ…」
ん?
ガサガサ…!
【イーグルベア(凶)はマサアキの荷物をいじくり回している!】
《ガウゥ……!》
あぁ……なんて事だ…
猫ババされた!俺の荷物を熊に!
「…熊ババですね…」
言ってる場合かよ!
あのリュックを取られたら、俺なんてただの無能な家畜だ!!取り返さねーと!
「…じゃあマサアキさんはあっちが本体みたいなものなのですか?…」
そういう意味で言ったんじゃないが、そう思ってくれても構わない!
それくらいに大事な物ばっかり入ってんだよ!地図とか図鑑とか残りの消耗系アイテムも…全部あの中だ!
どうすんだこれ!もう珍妙な儀式出来ねぇじゃねぇか!
「…自分で言っているではありませんか…珍妙な儀式…」
グィィィィィ…!!
【イーグルベア(凶)は力まかせにリュックを引っ張っている!】
やめてくれぇぇ!!リュックってそんな伸びるように作られてないからァァァ!!
バリバリ…!!
【イーグルベア(凶)はリュックを引きちぎった!】
あぁ…!!
「……あぁ…リュックがバラバラに…」
…………ッ!
「…な…なんでしょう今のは…大切な物を壊された時によくある感動を誘う回想のようなものが…気のせいでしょうか?…」
「…でも…リュックで?……形見のペンダントとかなら分かるけど……リュック?…」
「…物として弱くないですか?…わかりませんが…」
「…リュッ君って?…やだ……想像したくないです…」
「…あぁ……ちょっとキツイかもしれません…痛々しい…聞くに耐えない………誰か助けて…」
「…リュッ君てすごい言う…」
「…もう勘弁して下さい……何ですかこの現象?…脳への直接攻撃のような…私がお友達になれば許してくれますか?…」
《ウガァァァァ!!》
【イーグルベア(凶)は雄叫びをあげている!】
ドドドド…!!
【イーグルベア(凶)は勢いよく突進してきた!】
「……!…マサアキさん…敵が!…ドギツイ回想を垂れ流している場合ではありませんよ!…」
「…色々しっかりしてください!…」
《グォォォォォォ!!》
「…くっ!…」
バッ…!!
【リリアルはマサアキを庇い間一髪、攻撃をかわした!】
「…マサアキさんお気を確かに…まだ戦いは終わってませんよ…」
いやぁ……終わったよ俺の人生、なんせあっちが本体だしなぁ
勇者マサアキは既に8割方破壊されてしまったよ
「…何を言っているのです…体はまだ動くでしょう?…しっかり立って戦うのです…」
無茶言わないでくれ…もう俺には何も残ってない…
リュッ君が死んだんだぞ…?
「…感情移入しすぎでしょう…リュッ君をまずやめて下さい気味が悪い…物に名前付けるとか異常者のそれですよ…」
チェーンソーに名前付けてる奴が言うな…
「…リュックならもっとカッコいいのを買ってあげますから…とにかく今は戦いに集中してください…」
「…私はもう…庇う事も出来そうにないので…」
【リリアルは足にケガを負った!】
…っ!?お前…その足…
「…名誉の負傷という奴です…気にしないでください…」
……悪い…
ははは…ざまぁねぇな俺、結局足を引っ張っちまってるわ
それどころか、庇ってもらって逆に怪我させちまうとか
何しに戻って来たんだって感じだよな
みっともねぇ…
「…みっともないなんて…そんなことはありませんよ…」
え…?
「……マサアキさんも虫けらさんも……私を助ける為に戻って来てくれたのでしょう?…」
………
「……囮作戦という名目から考えるとそれは確かに誉められた事ではありません…その上お二人の戦いぶりは…私が見ていた限りどうしようもない雑魚でした…」
慰めてんのか貶してんのかどっちなんだよ…
「……しかし……それでも私は嬉かったのです…勝ち目の殆どない魔物相手に…あなた方が不恰好になりながらも助けようとしてくれた事が……」
「……魔物を一撃で仕留められるような強い人に助けて貰うよりも…ずっとずっとです…」
………
……けど、助けられなきゃ意味がねぇ……
「…だから…これから助けてくれるのでしょう?…」
《グォォォォォ!!》
【イーグルベア(凶)はマサアキに狙いを定めている!】
あぁ……
ごめんな、正義のヒーローみたいにスマートに助けてやれなくてよ
でも……おかげでもう大丈夫だ。今落ち着いた
少しだけ待っててくれ
〜To be continued〜
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