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謎の会社「出前やかた」の呪い③

コンタクト

16:50 電話が鳴る。
林田からの報告かと思い電話をとろうとするとサポートセンターの番号ではない。

まさかの担当者からの折り返し?
林田ついにやったな。心の中でガッツポーズをとった。

「出前やかたの沢村と申します」
「この度は大変申し訳ありませんでした。」
「何度もお手数をおかけしてしまい恐縮です。」

なんだこれは?違和感を覚えた。
口調もしっかりしているし言い訳ではなく謝罪から入る。まったく呪われている感じがしない。

サポートセンターがあれだけ呪われていたのだ。頑なに姿を表そうとせず非常識な対応を繰り返していたのだ。本体の担当者は相当呪われているはず。

なのにこの沢村という男はちゃんとした口調で常識的な言動をする。

おかしい。演技か?いや、呪われている人間にそこまでの演技ができるわけがない。

頭の中を様々な思考がめぐる。

返答に困り言葉が出てこない。

沢村がさらに続ける。

「請求書の件ですがまだ調査の結果が出ておりません。」

「取り急ぎお詫びとご報告をお伝えしたくお電話いたしました。」

「いったいどうなっているのですか?」
ようやく言葉を絞り出した。

沢村の説明を要約すると
高山社長の会社は売上の入金が末締めの5日後払いに設定されている。
末締め翌末払いなら売上に対して手数料が40%のところ5日後払いだと41%になるという。つまり5日後払いに1%の手数料がかかるらしい。
そしてその1%はなぜか翌月に請求するらしく売上がない月があると1%の手数料だけが計上されるという。
例えば9月に2000円の売上があり10月5日に40%の800円が引かれ1200円が入金される。5日後払い手数料1%の20円が10月に計上されるが10月の売上が0円なら20円の請求だけがくると。
なんとも意味深不明な仕組みだ。

ただ以前にも高山社長の会社と請求書の件でトラブルになったことがあるらしくどういう経緯で今の支払い形式になったのかが不明で調査中というらしい。

ちなみに沢村は加盟店登録の部署で営業や経理の担当とやり取りしている最中だという。

その説明をうけ俺の方でも高山社長に経緯を聞いてみることにした。

連絡が途絶えると振り出しに戻ってしまうので沢村の連絡先を聞くとあっさりと電話番号を教えてくれた。

そして週明けの月曜日に再度沢村から電話をするとの約束もしてくれた。

これから呪いとの本格的な戦いがあると構えていた俺にとっては想定外の展開だ。
そして沢村は人間としてのまともな会話が成り立つ。対応も社会人として常識的だ。
間違いなく呪われていない。

この調子ならあっさり解決しそうな展開だ。
呪われていたのはサポートセンターだけだったのか?
呪いによりサポートセンターが引継ぎを怠り事が進まなかっただけなのか?

いや違う。
そうだとすると高山社長の会社にトラブルを起こしている請求書に憑いていた呪いの説明がつかない。
請求書は本体が発行しているはずだ。

何とも言えない違和感を抱えながらも、とりあえず高山社長に中間報告を兼ねて以前の請求書トラブルの件も聞いてみることにした。

※この物語はフィクションです。固有名詞はすべて架空のものです。

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