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写真による新たな都市論へ? 時津剛 『BEHIND THE BLUE』
ここ数年、路上生活者の「ブルーシートの家」を見かけなくなった気がする。それはわたしの”言われてみれば”な感想でもあり、これから論じようとしている作品の根本でもある。
「ブルーシートの家」は見かけなくなったのではなく、都心部から排除され、いわば不可視化されているに過ぎない。
そのことは、時津剛の写真集『BEHIND THE BLUE』の表紙と、新宿のニコンサロンで開催中の同名の個展のフライヤーに使
モノを見る人と写真を見る人の“pile”− 松元康明の2つのシリーズをめぐって
松元康明は、高校卒業後にツアーコンダクターになることを志してアメリカに留学した。卒業間近になって必要単位が足りないことに気がつき、ヨガか写真の授業かの履修という選択に直面し、後者を選んだことで写真の道に進むことになったという。その後、サンフランシスコ・アート・インスティテュートの写真学科に再入学し、リンダ・コナー(Linda Conner)に師事して写真家としての道をあゆみ始めることとなる。
かくも白き雪 大西廣先生を憶う
夕方大学の恩師から久しぶりに電話がかかってきた。
電車に乗っていたので取れなかったが、とっさに虫の知らせを感じた。なぜか、ぼくはこういうのがよくわかってしまう。コールバックすると、大学院で大変に薫陶をうけた大西廣先生がお亡くなりになったという。
大西先生は、東大の助手からニューヨークのメトロポリタン美術館の学芸員になられてお勤めののち、国文学研究資料館整理閲覧部長、武蔵大学の教授を務められたと
憧れの鏡に映る閉じられた扉ー幸本紗奈〈Other mementos〉をめぐって
鍵を閉めて、慣れないベットの端に座ってしばらくじっとしていると、とりとめもなく浮遊していた視線は鏡ごしにドアの把手をとらえて落ちついた。ものの輪郭が溶け、だんだんと視界がぼやけていく。その時ふと、いつか見た夢の一片がたちまち鮮やかに蘇るような、あるいは初めてものごのに在り方に気づいてしまったような、妙な感覚がこみ上げた。(幸本紗奈「この中のある写真について」)
幸本紗奈の〈Other m
「きわめて宙吊りなわたし」であることの歓びー山端拓哉〈ロシア語日記〉展
相手は、自分の二の腕を反対の手で軽く触れるジェスチャーをしながらいった。
「BCGの跡がない。きっとやっていないんだろう。この書類をもってクレテイユ病院に行きなさい。ただで注射してもらえるから」
だれにも分かってもらえないと思うけれど、僕がフランスに留学して初めて嬉しいと思ったことばだ。山端拓哉の個展〈ロシア語日記〉を見て最初に思ったのは、この歓びに少し似ているということだ。
この、BCGの
「#あなたの一押し写真集」企画・審査雑感
ツイッターを使っていない人にはなんのことやらといった感じだろうけれど、「#あなたの一押し写真集」というハッシュタグをつけてもらってみなさんの一押し写真集を募るという企画をやっていました。
前回、一万円で始める写真史という企画を、若手写真研究者のはいあたんさん、1-Zoh(播磨屋市蔵)さんとやったことがあり、かなりいろいろなご意見や資料の紹介があって楽しいと同時に勉強になった。その時から、次は