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#私の作品紹介

絵描きの息子、おとしだまに小学生の頃の望みを思い出す

絵描きの息子、おとしだまに小学生の頃の望みを思い出す


ウーパールーパーを買うんだ

除夜の鐘を遠くに聴きながら
考えていたんだ
僕は寒いベランダから
冷たくてきれいな夜空の星を
みていた
静寂

年の移り変わりを示す鐘の音とは違う
凍るような音階が
どこからともなく
額の奥で共鳴する

夜空の星が
ぐんぐん近づいてくる
夜空の音が
どんどん近づいてくる
星が? 音が?
違うよ
僕が近づいていってるんだ

僕は夜空に向かい
「ありがとう」って言ってみ

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貧しい絵描きの御伽噺2(短編全2回)

貧しい絵描きの御伽噺2(短編全2回)

 翌朝、扉の外に見慣れない小さな箱が置いてありました。
 絵描きがおそるおそる開けてみると、中には幾重にも重ねられたビニール袋の中に、ギウギウに詰まった何色かの絵の具らしきものが、まるで何かの内臓のようにありました。
 絵描きは、この一見恐ろしげに見える、内臓のような絵の具らしき物を訝しみましたが、もしやこれは、夢の中の炎の女神からの贈り物ではないかと気づきました。
 急いでビニール袋をメリメリと

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貧しい絵描きの御伽噺1(短編全2回)

貧しい絵描きの御伽噺1(短編全2回)

 今から少し前、あるところに、心の病でからだが動かなくなった絵描きがおりました。
 絵描きは絵描きですから、絵を描くことしかできません。
 絵を描けなくなった絵描きは、自分がもう、何の役にも立たないのだと悲しんで、消えることばかり考えていました。
 けれども、絵描きには小さな子供がありましたので、役に立たなくても消えることはできませんでした。
 子供は絵描きに言います。
「しぬまで絵を描きつづける

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絵描きがいい気になって投稿す

絵描きがいい気になって投稿す


圭果さん♡ アッシュさん♡投稿しちゃいました〜

おふたりのありがた〜いコメントでいい気になり、昔のタブローをうっかり投稿しちゃいましたぞ。

激しい盛り上がりを見せる、秋の俳句大会#白杯。
のろまの弘生はようやく数日前に、三句の応募投句を終えました。
ホッ……

そんな中、#白杯の応募記事のトップ画像に使用した絵の全体像を見たいと仰る奇特な西野圭果さんとさらに背中を押して下さるアッシュさんがい

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絵描きはしばしばいつもの場所に戻る

絵描きはしばしばいつもの場所に戻る

一握の産土を持ち歩くこんにちは。絵描きの弘生です。
足元の石畳から、可憐ながら力強く咲く濃いすみれ色のすみれを撮りました。かわいいですねぇ。
名付けるとしたら、

「すみれ色の菫」ってところでしょうか。
数年前、そんな愛で甲斐のあるすみれ達が、自治会の草取り行事で無残に根こそぎむしり取られ、驚いた私は、根ごと抜かれたすみれ達を持ち帰って、ベランダのプランターに植え替えたことを、ふと思い出しました。

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絵描きの日記をめくって下さい

絵描きの日記をめくって下さい

ずっと産土を探している
昨日9月8日、東京都美術館での展覧が最終日を迎え、ようやく少しホッとしているところです。
その準備に加え、やりたいこと、やらねばならぬこと、やれと言われること、目白押しで、2ヶ月近くに及ぶ寝不足、不摂生。体調不良は当然といえば当然ですが、動けるということは素晴らしい!

今回発表の作品は、5点でひとつの作品になり、展示空間や気分で、並べ方を変えることができます。全体像ではあ

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月の無い夜に絵描きが思うこと

月の無い夜に絵描きが思うこと


月の無い夜
月の無い夜は

魂の計画をたてよう

次の世界があるのなら

今度こそ正直に生きてみよう

土から這い出た蝉の子のように

曖昧な部屋から這い出したら

地上にはみ出た根っこに

翻弄されている年老いた木に

語りかけてみる

昼間の痛いほど眩しい青空は悲しい

咲き誇る花が多すぎるのは悲しい

川岸から聴こえる讃美歌は悲しい

三角形の気の遠くなる重なりを

くぐり抜けさえすれば

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