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ストレス社会よ、みんなでうどんを打とう。


なんだか最近イライラがおさまらない。

秋の花粉でくしゃみが止まらないし、寒くて朝は起きれないし、

家を出た直後に雨が降り出すし、満員電車は臭いし、

若い女だからって取引先に舐められるし、

大学時代の仲良し3人組は私以外の2人で遊びに行ってる。

平日に苦手な先輩から飲み会に誘われるし、靴下脱ぐと突然足が痒くなるようになった。

あ〜ストレス。くそくそくそ。
秋口はいつも体調が優れないし、自律神経がおかしくなるし、1崩れると100崩れるようなギリギリ状態になる。
ジェンガのようなメンタル。秋口ジェンガメンタル女、今年もあらわる。


「そうだ。うどんを打とう。」


晴れた土曜の朝6時。
平日の習慣で早く目覚めてしまって、2度寝をするかしないかウンウン悩んでいた私に突然降りてきた。

「うどん、打ってみようかな。」

もちろんうどんを打ったことはないし、作り方も知らない。
けどイライラだらけの毎日だったのに、なんだかワクワクしてきたじゃないか。

寝ぼけ眼で検索。  「手作りうどん 打ち方」

めちゃくちゃ出てくる。こんなにみんな手打ちうどん作ってるの?

調べてみて知ったことだが、うどんを自宅で手作りしている人は意外と多いようで、まだまだ私の知らない楽しいことを知っている大人が沢山いるんだなと思った。

そうと決まれば買い物だ。

9時スーパー開店凸。

寝起きパジャマ女、強力粉とコーンスターチを抱えて歩く。
なんだろう、不審者かもしれない。

両親は朝早くから外出していたので私の突然のうどん職人デビューは誰にも咎められることもなく、静かに幕を開けたのだった。

いざ、うどんを打つ。


うどんの作り方を簡単にまとめると
粉・水・塩を混ぜ合わせる→踏む→伸ばす・切る→茹でる
の4STEPあり、その間に随時生地を休ませる時間が発生するといった具合である。

①混ぜ合わせる

まずは粉と水、塩を混ぜ合わせるのだが、材料がシンプルすぎて非常に心配になる。しかもいざ混ぜ合わせてみるとぜんっぜんまとまらなくてさらに心配になる。大雑把で有名な私だが、今回は丁寧に計ったはずなのになあ。

うどんには己の弱い部分を見透かされているようだ。

②踏む


意外にも、生地を10分置いてみるとあら不思議!しっとりしてきたじゃないか。ではでは、踏んでいきましょう。

漏れたり足に触れたりしないようにジップロックで厳重に包み、いざ恐る恐る足を踏み出す。

うわあ〜

なんか踏んではいけないものを踏んでいるような、でもなんだか気持ちいいような。初めての感覚。

そのまま勢いに任せ、のしのしと踏んでいたら、だんだん勇ましい気持ちになってきた。

くそ〜、あの取引先、若い女が相手だからって無理難題押し付けてきて!!

うわ〜あの先輩のあの発言、本当に失礼だったな!!!

雨降ると満員電車って急に臭くなるのマジなに?!

3人で仲よかったのに2人で遊ぶって何?!せめて私の見えないところでやってよ!!!

心の中に鎮めていた怒りの言葉たちが湧き出てきて、それを一つ一つ自らの足で踏みしめて、潰していく気分だった。

生地に艶が出てツルッとするまで5,6回程踏む作業を繰り返した。

生地がピカピカに光り出す頃には、私の中にずっと溜まって苦しめていたあのイライラたちは、消えていた。

③伸ばす・切る

少し長い時間休ませて、すっかりツヤツヤになったうどんちゃんを伸ばしていく。
これがなかなか難しい。

伸ばすための棒も短いお菓子作り用のものしかないため、全体が均一に薄くなるようにするには、力を一定に、いろいろな方向へ伸ばしていかなければならず、かなり集中する必要があった。

手先の感覚、目の前の白い生地、伸ばしていく方向。
時間を忘れて夢中になった。

均一になった生地を折りたたみ、食べたい大きさに切る。
完成した時の食感や食べやすさを考えると、可能なまで均等に切り分けたい。

そこには私とうどんだけの世界があった。

うどんに向き合い、うどんも私に向き合う。
投げた分だけ返ってきて、返ってきた分だけ投げる。

これは対話であり、恊働であり、芸術なんだと思った。

④茹でる

大きい鍋にたっぷりのお湯を沸かす。
渾身のうどんを鍋の中にほぐしながらいれる。

私の気持ちは穏やかだった。
私のストレスが踏み込められたうどんは今、
ぐらぐらと煮える鍋で茹でられている。

熱湯消毒みたいな感じで、ストレスの毒性が鍋の中で消滅していっているような、妙な穏やかさと清々しさがあった。

茹で上がったうどんは冷水でぬめりを取りつつ引き締める。

開始から4時間。
ついにようやく、うどんが完成した。

そして、食らう。

つゆを作る体力も気力も残っていなかったため、市販の麺つゆを使って
シンプルにザルうどんでいただくことにした。

はやる気持ちを抑えつつ、口に運ぶ。

う〜ん。

うまいかも。
なんだかコシがあって、ツルツルしてて食べ応えある。
美味しい〜!!

もちろん丸亀製麺の方が美味しいけど、自分の手で、足で、作り出して初めて生まれる感情・気づきがあった。

うどんを打つことを通じて、己の内面に向き合えた。
日頃のストレスやイライラな気持ちまで全部食べ尽くせた気がした。
身体を使って作ったからだろうか。
うどん作りは、心技体の錬成につながるのではないか。

かくして、私のうどん職人デビューは大きな収穫と共に幕を閉じた。

皆様に伝えたかったこと

ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございます。
うどん作りについて熱く語ってきましたが、今回私が書きたかったのは、

”身近な小さなイライラなんて、こねて踏んで加熱して、食っちまおうぜ”

ということです。
小さなイライラが積み重なり、やがて大きなストレスとなり、私たちの心身の健康に害を与え始めます。

だから、別にうどんじゃなくてもいいんですよね。
そばでも、パンでも、
ラーメンでも、お菓子でも、食べ物じゃなくてもいい。

日頃の小さなイライラを取って食ってくれるようなパワーのある活動であればなんだっていいんです。

これから寒くなって、心も体も縮こまってくる季節となりますが、
日々の小さなイライラをうまく消し去って、食べて、寝て、程よく穏やかな毎日を過ごせるよう、営んでいきましょう。



なんて考える、とある日曜日の夜。


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