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雪が降っていると思う
新幹線に乗って青森に帰るとき、雪が降ってるんじゃないかって思う。雪がまだ降らない夏や秋でもそう感じた。これはきっと初めて乗った新幹線が、高校2年生の12月だったからだと思う。修学旅行で大阪から青森に帰ってくると行くときよりも沢山の雪が降っていて、行きたくなかった修学旅行の筈なのに夢から覚めたような清々しさがあった。
それから高校を卒業してすぐに社会人になった僕は横浜で暮らす兄に会いに行った。コロナ
愛してくれよ六畳一間
アイスクリームは溶けるし僕の声は掠れる。
塩塚モエカになりたかった。男とか女とかそういうのは一旦なしにしてあの声に僕はなりたかった。草野マサムネとか藤原基央とか昔なりたかった人は沢山。結局は過去になるのだろう。狭い部屋の中、ベットを置けばそれで完結するような小さくて僕だけの部屋。叫べば壁を叩く音がする。何かになりたくて、何もしなかった夏はもう戻ってきてはくれない。秋の冷たさに勝てるものは一個もな
【短編小説】オレンジチョコレートハウスまで
「あの人達、最近私が指輪を付けてないって噂してるの」そう少し年上の後輩が僕に言った。
耳に入った声に、使い捨てタオルで机を拭く手を止めた。不安というよりかは、少し嘲笑うようなそんな声色に、僕が不安になった。
青森の田舎で高卒で仕事をしようとすると、選択肢が貧乏人のラックにかかったTシャツくらい少なくなる。結局、何かを選ばなきゃいけなかった僕は、金払いの良さそうな少し大きな工場で働いていた。