佐々木十四

佐々木十四

最近の記事

ZOO

ざらついた鳥肌に触れ削られゆく精神の躁 過食症のバク だってだってだってだってとだけ残し脱兎の如く走った上司 どこにでもいるし、どこにでも来てあげるパンダの目元はアイドルだってこと 過干渉なオシドリ夫婦餌を取る隙も無くなる下流下流へ 倫理とは悟るアナグマ柿喰う客 行為と行為のその間で 薬飲む、低気圧が運ぶ呪いあのモルモットの温かい匂い 僕の夢、空を飛び駆けるペンギン、草を食べ生き永らえる虎 葦の先、ハクビシンの目、雪のように視界を覆う綿毛の空よ 君がいう馬鹿に

    • 音楽隊と子供たち

      歌います、鶏の爪が刺さっても川をながれる石になっても DEAD OR ALIVE希望、花を胸に、27までなんてダサいね 師はいつも過去を後悔しています。時々僕が吹く笛に嗚咽 禁煙が是とされていて喫煙が非とされていて、声を枯らす(今日も) 合唱は嫌なくせにカラオケで歌うあいつとポテト食う犬 放課後君を思っているを殺したい誰かがいるよみたいに歌う 鉄塊を打つ、光る車、こんなにも世界が暗く見えていること 金管の間でパンク好きな彼が顎を上げながらソプラノないて 沸騰を

      • 祈りみたいなもの。

        イントロが長い曲が好きだった。長ければ長いほど彼らに夢中になれるからあのイントロというものはそれはもう祈りみたいなものに近いんだと思う。 君が好きな歌は流行りのラヴソングだね。 人が嫌いなのに人が好きだという矛盾を抱えたまま歩いている。ただ、僕の求める好きは綺麗さはなくて支配欲が皮を被っているみたいなものだろう。なんなら見えているかもしれない。自分の予想の範疇を超えてほしくない。僕の中で収まるキミであってほしい。恋よりも憎しみが僕の好きだ。 コンタクトが眼球に貼り付いて

        • 自慰(だったもの)

          群青が溢れ出すなら良いじゃない?付けられたら舐め合おうね、傷 無機質な君の名前に触れるマウス1ピクセルが放った火花 生ボーイ・ミーツ・死ガール 水風船の様な回想 ビニールの中の金魚は火傷した ルールブックは君を守らない 死ぬことを目標にして生きてるって言ったら君は笑うのかい? 王様に信者がいればよかったのに涙拭く裾もない裸で 助手席の窓からばらの花を振る泣いたっていいぜ弱いんだから 寝る時はあのこを思い出す 検索 クリーム色の海のいきかた 空気砲やる時だけの白

          定時後アナーキー・クラブ

          三権の間で歌うNewWave 弾丸の様な言葉でトリップ 白壁と臍にピアスを刺した女子 対抗しうるはボロ光線銃 ケチャップも生クリームもなんだって付けてあげるよ、ここでキスして 「命短し恋せよ乙女」分かんない 水銀を飲んだ様な顔して 機関銃を女子高生は携えた いつもナイフを振ってるくせに 皆には言えない趣味が増えてきて 「音楽鑑賞とかっすかねー」 1Kの6畳で言う死にたいはお前らが好きなくだらない暗喩 タオルケット、眼鏡の女の一言の不意の火花の癖に、ざらつき ユ

          定時後アナーキー・クラブ

          自薦10首

          芸術は爆発だなんて君の口から聞きたくなかったなって メルヘンに生きてしまったせいからか預金通帳で天使になる ホッカイロ、後付のハードディスク炭素があなたみたいに光る 聞こえてる?未知の惑星の君へと送るシンパシーmp3 大人ってソフトクリーム食べないんだ食べない割には冷たいけれど 世界から隔離するため体丸め タオルケットFake依り代 犬みたい、博愛主義じゃないけれど八方美人の愛されまち にわか雨、君に伝えてごめんね少しクサイねペトリコール 空っぽの国道7号、L

          雪が降っていると思う

          新幹線に乗って青森に帰るとき、雪が降ってるんじゃないかって思う。雪がまだ降らない夏や秋でもそう感じた。これはきっと初めて乗った新幹線が、高校2年生の12月だったからだと思う。修学旅行で大阪から青森に帰ってくると行くときよりも沢山の雪が降っていて、行きたくなかった修学旅行の筈なのに夢から覚めたような清々しさがあった。 それから高校を卒業してすぐに社会人になった僕は横浜で暮らす兄に会いに行った。コロナ禍で中々会えなかったが、久しぶりに会った兄は都会にかぶれていて標準語で僕を見下し

          雪が降っていると思う

          味がしないアイスクリーム

           センセイは笑って私の手を握った。私、本当は朗らかな夜の街灯にもよく似たセンセイの顔に触れたかった。香水の匂いがしない、香料ゼロの柔軟剤で洗われた無益な匂いがした白衣。その匂いが好き。白衣にはちゃんとアイロンがされているのに、白衣の下のシャツには細かい皺が目を凝らすと見える。センセイのこういうところがとても好き。  幸せは輝くものじゃないと、私が思っていることをセンセイは知っている。それでも、私には幸せが必要なんだと諭している。センセイは必死ではないけど、毎回丁寧に、私の目

          味がしないアイスクリーム

          愛してくれよ六畳一間

          アイスクリームは溶けるし僕の声は掠れる。 塩塚モエカになりたかった。男とか女とかそういうのは一旦なしにしてあの声に僕はなりたかった。草野マサムネとか藤原基央とか昔なりたかった人は沢山。結局は過去になるのだろう。狭い部屋の中、ベットを置けばそれで完結するような小さくて僕だけの部屋。叫べば壁を叩く音がする。何かになりたくて、何もしなかった夏はもう戻ってきてはくれない。秋の冷たさに勝てるものは一個もない。散らかったったティッシュペーパーと昔買った半分以上も残った化粧水。あの子がい

          愛してくれよ六畳一間

          【ショートショート】スカートセンチメンタル

           新田のスカートが風で大きく揺れた。スカートが丁寧に短く折られたせいか、膝裏が影になってチカチカと僕の目に映った。校舎と対角にあるこの木陰からは、砂埃舞うグラウンドを挟んで授業が始まっている教室が見えた。  転校するの、と言ったきり新田は何も言わなかった。もしかしたら何も言えなかったのかもしれない。葉っぱ通しが擦れて、音を立て僕らの沈黙を埋めた。 「なんか言ってよ」 「今考えてたところだよ」  拗ねた顔が、横顔でも分かった。何を言うべきか迷っていたけれど、結局のところ

          【ショートショート】スカートセンチメンタル

          【短編小説】オレンジチョコレートハウスまで

          「あの人達、最近私が指輪を付けてないって噂してるの」そう少し年上の後輩が僕に言った。  耳に入った声に、使い捨てタオルで机を拭く手を止めた。不安というよりかは、少し嘲笑うようなそんな声色に、僕が不安になった。    青森の田舎で高卒で仕事をしようとすると、選択肢が貧乏人のラックにかかったTシャツくらい少なくなる。結局、何かを選ばなきゃいけなかった僕は、金払いの良さそうな少し大きな工場で働いていた。  この5年僕は何一つ得てない。この空間で必要な技術はどうにか得たつもりだが、こ

          【短編小説】オレンジチョコレートハウスまで

          【短編小説】シャングリラ眠る

           懐かしくもあるような、それでいて久司の奥底にある名も無い衝動に触れる女を見ると、久司はその女とセックスをする夢を見るのだ。泡のような、あられもない姿をした女と体を交り、溶けるような夢に溺れる。昨日も、夢を見てしまうような女に出会ったのだ。他愛もない飲みの席で出会った、その女は桜子という名前だった。自己紹介の後、もうとっくに桜は散ってしまっているのにと久司は勝手に残念がったが、彼女の一呼吸、瞬きの一瞬、目が合う一秒だけで久司は夢の中へと落ちた。水面に浮かぶ散ってしまった桃色の

          【短編小説】シャングリラ眠る

          【ショートショート】「錆、ぽろぽろ」

           身から出る錆。確かにそうだった。煙草をふかす半田はそんな事を考えていた。  迎えにある空っぽな椅子と対面して、机にある灰皿には何本もの吸い殻と灰が溜まっている。あれが居なくなってから、この部屋には甘い匂いはしなくなっていた。クイニアマンやタルトタタン、それに柔軟剤や香水の匂いも全部、今では煙の匂いに置き換わっていた。  あれはとても従順だった。半田はそれを良いことに、自分の思いだけを優先させ、あれの言うことは何ひとつだって聞かなかった。  それなのに、この部屋はいつだ

          【ショートショート】「錆、ぽろぽろ」

          【ショートショート】夕凪から

          「ラ・カンパネラだ」  俯いた顔には似合わない、日に焼けた肌をした君がそう言った。クラッシックなんて知らなかった筈の君が、今では有名な曲だと分かるようになっていた。  伏し目がちな君の手には、いつも私の知らない本が握られている。私はそれに少し嫉妬しながら、何も言わずにピアノを引き続けた。  日に焼けた肌、髪。曲がった背中。分厚いレンズの眼鏡。 「暗い曲だ」と君が言うものだから、私は手を止め君の方を見た。 「暗い曲だね、確かに」 「うん、でも好き」 「知ってる」

          【ショートショート】夕凪から

          【ショートショート】羊離れないで

           駅からの道には雪踏む小気味良い音が、僕の足元とほんの少し前を歩く洋の足元からした。クリーム色のボアブルゾンに包まれた洋の真っ白な頬は、ほんのりと赤みを纏っていた。  ついさっき来た通知に僕は勢い良く体を起こして今ここにいる。  高校指定のジャージの上にダッフルコートを羽織っていかにも田舎の高校生みたいな格好。  洋が呼んでいる。僕を呼んでいる。溢れる嬉しさと気まずさを織り交ぜ、急ぐ足に鞭を打った。  マスクから白い息を溢れ出しながら、彼女の元に着くと彼女はマスク越し

          【ショートショート】羊離れないで