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非社会的

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#子供

鳥のいない鳥かご

ジュール・ルナールの『博物誌』のなかに、「鳥のいない鳥かご」という小文があったのを思い出した。小話みたいなものなのでそのまま引用したほうが楽なのだけど、本が手元にないので、ごく大雑把にまとめてみると、鳥のいない鳥かごを窓にかけているフェリックスという男が「ここに僕はほんらい鳥を入れてもいいのだけどあえて空にしておくんだ。そうすることでほんらい空を飛び回るはずの鳥が少なくとも一羽は自由でいられるのだ

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生存恐怖、なまなましい捨てられ恐怖、埴谷雄高のこと

生存恐怖、なまなましい捨てられ恐怖、埴谷雄高のこと

「頭の狂った人間を病院に運ぶための黄色い救急車がある」という古い都市伝説があるが、私にはこれがひどくなまなましいのだ。内容の無根拠さとはうらはらにやけにイメージしやすいのも恐い。なんでだろう。黄色というのが妙に不気味の印象を煽る。子供の頃なら恐いのも分かるけど、今も恐い。というよりむしろ今の方が恐い。精神分析学上、これは興味深い問題だ。

フーコー的な「生権力」が支配的となった時代の人間には、多か

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「子供」も「老人」も嫌われてしまう世の中

「子供」も「老人」も嫌われてしまう世の中

ああ上階のガキの足音がうるさい。階段は静かに下りろよ。廊下くらい歩けよ。床の上でそうやってジャンプするなよ。脳が反射的に「嫌がらせ」と解釈してしまうじゃないか。そこは大地ではないのだ。それなりに穏やかだった海にとつぜん荒波を立てるようなことはやめろ。もう本当に止めてくれ。あらためて私は問いたい。ガキというのはなぜどうしてこうも「無神経」なのだろうか。あるいはガキの傍にいつもいる「保護者」はなぜどう

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「読書のすすめ」は馬鹿野郎のすること

「読書のすすめ」は馬鹿野郎のすること

読むことは禁断の快楽なのだから、お節介な大人どもは「子供たち」に余計な推奨的働きかけなどしなくてもいいのだ。文学や哲学や社会科学への「嗜癖」は、麻薬や酒へのそれよりも一層強く「人生」に作用する。本を読むことは素朴なる「動物的生」からの卒業であり、身の回りの当たり前の「言説」からの離脱なのだ。「既成の世界」など最早どこにも存在しない。

書物は人を革命家にもすればテロリストにもするし孤独な厭世的思索

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「母の日」が気持ち悪い

「母の日」が気持ち悪い

いわゆる「母の日」とか「父の日」に何かしらのプレゼントを買って手渡すことをかなり多く人がやっていることに、私はいつも皮肉抜きにびっくりしています。この手の感謝イベントはモノを売るサイドからすれば商業イベント以外の何ものでもなく、こういう露骨な消費者扇動作戦を大抵の人は心底から軽蔑しているに相違ないと想定していたのだけど、実はけっこう多くの人がそのイベントに合わせ購買行動を起こしているらしい(nif

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