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おとこらむ oto-column

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「音楽と鳥しんぶん」に連載されていたレコード研究家の音楽的日常のコラムが、noteマガジンでも登場!家人の夢の中で「あなたはレコードのマハラジャよ!」と美輪明宏さんに称賛された夏…
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#ショパン

ショパンジーの絶滅についての簡潔な報告

ショパンジーの絶滅についての簡潔な報告

昔、“ショパンジー”というそれはそれは美しいショパンの楽の音をピアノで奏でる蛮族ならぬ生物が棲息して居た。今では残念ながら絶滅してしまって見る影も形もないが、それでも確かに、昔、間違いなく、このかけがえのない世界に、確実に彼らは棲息していたのだった。

実は“ショパンジー”とは、ウラディーミル・ド・パハマンというピアニストの些かエキセントリックな言動や演奏してる姿が何処かチンパンジーを彷彿とさせる

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GREAT CHOPINZEES~ショパン演奏の秘かな愉しみ(トレイラー)

前回のレコードコンサート「レシェティツキの弟子たち」から約5年。昨日4/8(土)富士レコード社さんのお招きで開催させていただきました「GREAT CHOPINZEES~ショパン演奏の秘かな愉しみ」が盛況のうちに終了いたしました。
約二時間半、2回の休憩を挟みながらの長丁場でしたが、皆様リラックスして楽しんでいただけたようで、当日の朝までムービーを作りながらレコード選定に迷った甲斐がありました。ご来
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アヴァンギャルドな元ベルギー王女   マリー・アントワネット・オーセナック・ド・ブロイの奏でる嫋嫋たるショパンの一部始終

アヴァンギャルドな元ベルギー王女   マリー・アントワネット・オーセナック・ド・ブロイの奏でる嫋嫋たるショパンの一部始終

マリー・アントワネット・オーセナック・ド・ブロイ王女(Princess Marie-Antoinette Aussenac de Broglie, 20 July 1883 - 31 October 1971)という、ポルトガルの貴族出身のピアニストがいた。ジャック・ド・ブロイ王子と結婚したことによって、1933年に離婚するまでのおよそ7年の結婚の間、王女となった。

オーセナック・ド・ブロイは、

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日本とワルシャワのショパンの1949年

日本とワルシャワのショパンの1949年

「眞木先生の音は可愛く激しく、独特な世界が聞こえる。まさに現代にピッタリ!」(綾戸智恵/ジャズシンガー)

ショパン没後100周年である1949年。戦後4年、世界は戦争の惨禍からの復興の最中にありました。ナチスの侵略によって壊滅させられたショパンの故郷ポーランドのワルシャワでは、このショパンの記念的な年に、戦後初「第4回ショパン国際ピアノコンクール」を開催し新しい時代の幕開けを行いました。(このコ

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ニコライ・オルロフ〜ロシアピアニズムの継承者

ニコライ・オルロフ〜ロシアピアニズムの継承者

帝政ロシアに生まれたニコライ・オルロフ(1882-1964)は、モスクワ音楽院でピアノをコンスタンチン・イグムノフに、作曲と対位法をセルゲイ・タネーエフに学んだ。ピアニストとしてデビューを果たした1912年には、作曲者自身の指揮でグラズーノフ「ピアノ協奏曲」の初演も務め成功を収めている。ロシアの同世代ピアニストであるネイガウス、ゴリデンヴェイゼル等は祖国に残りソビエト・ピアニストたちを育てたが、オ

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ショパンの孫弟子による伝説のノクターン

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤⑤

ラウル・フォン・コチャルスキ(1885-1948, ポーランド )
ショパン「夜想曲第2番変ホ長調 作品9-2 (ヴァリアント付)」(1938年録音)

● ショパンの高弟カロル・ミクリにショパン伝統の継承者として育てられたサラブレットであるコチャルスキによる伝説的なSPレコード。聴き慣れないヴァリアント(装飾音)は、ミクリがショパン自身の演奏を聴い
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コリン・ウィルソンが愛したスクリャービン〜19世紀ピアニズム「ユリウス・イッサーリス : スクリャービン/24の前奏曲集+2」

コリン・ウィルソンが愛したスクリャービン〜19世紀ピアニズム「ユリウス・イッサーリス : スクリャービン/24の前奏曲集+2」

~ Fragments of History ~
ピアニストの黄金時代を担ったピアニストたち(6)

スクリャービンの初期作品はショパンの作品形式を精神的にも受け継ぎ、練習曲、夜想曲、ワルツ、マズルカ、ポロネーズ、前奏曲、と同スタイルの名曲を多く残した。中でもショパンをも凌駕する白眉の出来は「24の前奏曲集 作品11」である。

ロシアの神秘主義作曲家としられるアレキサンドル・スクリャービンは、サ

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