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おとこらむ oto-column

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「音楽と鳥しんぶん」に連載されていたレコード研究家の音楽的日常のコラムが、noteマガジンでも登場!家人の夢の中で「あなたはレコードのマハラジャよ!」と美輪明宏さんに称賛された夏…
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もっと良い音!SPレコードのカートリッジ再生② フォノEQで3ランクアップ!

もっと良い音!SPレコードのカートリッジ再生② フォノEQで3ランクアップ!


EQカーブとは?ざっくり説明すると、EQカーブとは録音時に低音をカットし高音を持ち上げて再生時にその逆のEQカーブを通す手法です。

ほとんどのLPレコードでは「RIAA」というEQカーブが採用されています。これは1950年代末に世界的に統一された規格で、PHONO端子の付いている一般的なオーディオアンプにはRIAAカーブのフォノプリアンプが内蔵されています。レコードプレーヤーの出力をアンプの外

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日本製シティポップの真髄とショパン

日本製シティポップの真髄とショパン

先日、本屋に日本のシティポップ本が置いてあったので、どんなもんかと手に取ってパラパラと流してみたが、載っていない。

誰が?

濵田金吾が、載っていないのである。

これは僕の専門分野の歴史的ピアニストに置き換えるなら、パデレフスキやホフマンやゴドフスキやラフマニノフが載っていないのと同じことなのです。ショパンは引かないけどスクリャービンはかっこいいみたいな。
話は逸れますが、芸大のピアノ科の試験

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後日譚 : ショパン「告別のワルツ」と世界初録音

後日譚 : ショパン「告別のワルツ」と世界初録音


幸せの絶頂で作られたワルツのはずが

ショパンが婚約者マリア・ヴォジンスカとの蜜月に作った変イ長調のワルツは、後の婚約破綻によって「告別のワルツ」と呼ばれるようになるのは有名な話です。
しかし不思議なことに、このワルツはもともとそういう運命であったかのように清純で痛々しく憂いのある旋律がショパン作品の中でも特に
この作品はショパン存命中には発表されなかったので作品69-1(遺作)と表記します。「

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時代の空気振動とピアニストの不在

時代の空気振動とピアニストの不在



ピアノロールに対する恨み言のようなもの

ピアノロール(自動ピアノ)さえなければ…と何度怨みに思ったことか。
そう、ピアノロールさえ存在しなければ、もっとたくさんの19世紀生まれの名ピアニストたちが78rpmレコード(SPレコード)録音を残していたはずだからなのです。
そもそもピアノロールは録音環境と再生環境が大きく違ってしまうので、頑張ってみたところで再現性の点でレコード録音には遠く及ば

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夏が来ると浴びたくなる映画のお話

夏が来ると浴びたくなる映画のお話

もともと大の怖いもの好きだが、夏になると必ず観たくなる怪談映画がある。山田太一原 作・大林宣彦監督「異人たちとの夏」がソレだ。 家庭崩壊寸前の40代のくたびれた放送作家の元に、子供の頃に事故で亡くしたはずの両親 が戻って来る。父親は気紛れで頑固な寿司職人、母親はオイチョカブ好きできっぷのいい別嬪さん。そんな粋な二人の子供にしては野暮天な主人公。夢だ、幻だ、と思いつつ

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開放感が魅力のショパン24の前奏曲集

開放感が魅力のショパン24の前奏曲集

SPレコード録音時代

天才的な閃きを24の調性で描いた前奏曲集は、ショパン作品の中でも高く評価されている傑作です。
短い作品が多いので、片面約4分半のSPレコード時代には、小犬のワルツやエチュードなどとの組み合わせたり、数曲を抜粋して収録される事が多くありました。
全曲録音を行った先駆的なピアニストは、コルトー、ロルタ、コチャルスキ、クロイツァーなどが筆頭に挙げられます。これらは1925年から1

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radiohead「nude」~ハイリゲンシュタットの遺書 Remix

radiohead「nude」~ハイリゲンシュタットの遺書 Remix

クラシック音楽をモチーフにしたユニット fav.Classiqua(ファブクラシカ)という活動をしています。

これは昔、ベートヴェン「月光ソナタ」をヒントにradiohead「nude」という曲のリミックスコンテストに応募した動画です。結構、いいところまで行ったけど賞は取れず!
しかしその後、TikTokでこれをパクった人がちょっとだけバズったそうです(笑)

前半のアダージョは、ピアニストの一

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君はハードボイルドになれたか

君はハードボイルドになれたか

武蔵野市緑町商店街の横にある小学校前で「西部警察」のロケが行われたことがある。そりゃ急いで駆けつけるさ。
そこで先ず目に飛び込んできたのが、ベージュのコート🧥をヒラリとさせたティアドロップの漢、寺尾聰だった。
「シャドー・シティ」「ルビーの指輪」「出航(さすらい)」がチャートインして、空前のヒット曲を飛ばしている最中だった。

その時、僕の脳裏には高層ビルの大きな窓からワインを片手に都会の砂漠を

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常盤貴子とジョアン・ジルベルトとアーシング

常盤貴子とジョアン・ジルベルトとアーシング

年に何度か海岸で裸足になってアーシングするんだけど、毎回ビーサン忘れてしまう。仕方ないから濡れた足を砂でまぶして乾かす。近くではトンビやカラスがレジャーシートに置き去りの荷物を漁ってソフトクリーム🍦のプラカップを開けようと大騒ぎ。まあまあ綺麗な由比ヶ浜でもこんな感じ。

昔、山口県の西長門に誰も入ってこないような美しい砂浜があった。
九州へのツアー中、夜走り明けのハイエーススーパーロングで目を覚

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ショパンジーの絶滅についての簡潔な報告

ショパンジーの絶滅についての簡潔な報告

昔、“ショパンジー”というそれはそれは美しいショパンの楽の音をピアノで奏でる蛮族ならぬ生物が棲息して居た。今では残念ながら絶滅してしまって見る影も形もないが、それでも確かに、昔、間違いなく、このかけがえのない世界に、確実に彼らは棲息していたのだった。

実は“ショパンジー”とは、ウラディーミル・ド・パハマンというピアニストの些かエキセントリックな言動や演奏してる姿が何処かチンパンジーを彷彿とさせる

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GREAT CHOPINZEES~ショパン演奏の秘かな愉しみ(トレイラー)

前回のレコードコンサート「レシェティツキの弟子たち」から約5年。昨日4/8(土)富士レコード社さんのお招きで開催させていただきました「GREAT CHOPINZEES~ショパン演奏の秘かな愉しみ」が盛況のうちに終了いたしました。
約二時間半、2回の休憩を挟みながらの長丁場でしたが、皆様リラックスして楽しんでいただけたようで、当日の朝までムービーを作りながらレコード選定に迷った甲斐がありました。ご来
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ピアニスト/ピアノ研究家の松原聡さんがベヒシュタインを弾きに来てくださいました

ピアニスト/ピアノ研究家の松原聡さんがベヒシュタインを弾きに来てくださいました

ピアニストであり、ピアノ研究家としても活動されている松原聡さんが、白金ピアノスタジオにベヒシュタインを弾きに来てくださいました。

松原聡さんはピアノ研究家として、様々なメディアで執筆活動をされている方なのでピアノについて大変お詳しく、逆にベヒシュタインのピアノの歴史についてたくさん教えていただきとても勉強になりました。

そして、実際に演奏もしていただいたのですが、松原さんの優しいタッチに、スタ

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意外と簡単❣️SPレコードの再生方法②

意外と簡単❣️SPレコードの再生方法②

SP再生用のカートリッジを選ぼう!入門編

78回転モード付きのターンテーブルをお持ちなら、あとはカートリッジだけでとりあえずのSPレコードの再生は可能になります。

オーディオテクニカは、SPレコード用のカートリッジをずっと発売し続けてくれている良心的なメーカーです。手軽な価格ですが、扱いやすく、針交換も安定供給が期待できるので入門編として安心してお勧めできます。付け加えますと、良い音を求めるな

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