- 運営しているクリエイター
#小説
#3.天国ってきっと、こんな場所だ。
日記を始めてから、外への意識がだいぶ増えたように思う。
なんとなく歩いていたいつもの道端に、知らない花が咲いていることとか、ふと見上げた時の空の豊かな表情だとか、お隣さんの夕飯の献立とか、今まで気づかなかったこと、見てもすぐに忘れていたことを、
面白い!ようく覚えておこう!
そんな風に思えるようになった。
変わり映えのしない退屈な日常に、こんなにも小さな感動や出会い、発見が隠れていたなんて、嬉しい
#13.今日という日に幕が落ちる。
ここ最近、家に籠もっている時間が長かったので、今日は気分転換に外に出ることにした。
あさ、目が覚めてすぐに近所の公園へ向かう。太陽光を浴びてぽかぽかしながらのんびり歩く。気になる景色があればインスタントカメラのシャッターを押して、耳に残る音に気づけばレコーダーのスイッチをオンにする。
のんびりしつつも、アンテナはしっかり張り巡らせて歩いていく。
途中、思いついたワードを喋って録音したりして、
#14.すうっと染みて消えてった。
昨日、遅くまで本を読んでいたせいで、あさは少し寝坊してしまった。
急いで着替えて家を出て、電車を乗り継ぎ都心へと向かう。
予定の時間にはなんとか間に合いそうだ。
今日は、映画を観る予定なのだ。
映画館で観るのは久しぶりだ。
近頃はもっぱら配信サービスを使うことの方が多い。
これから観に行くのは単館上映のインディーズ映画だ。
知り合いが監督をした作品で、今日が封切りなのだそうだ。せっかくなので初
#15.たくさんの知らない景色
手紙が届いた。
遠い海の向こう、外国で暮らしいてる叔父からの手紙だ。
なんて事はない、季節の挨拶と向こうの近況、こっちの様子はどうかなどが書いてあって、あとは写真が数枚。
叔父さんは外国を渡り歩き、世界中を旅して回っている。そして、その時撮った写真の中でもとびきりのを数枚送ってくれるのだ。
雲でできた高原や、海坊主とのツーショット、虹色の氷山、たくさんの知らない景色を教えてくれる。
小さい
#16.めくるめく文字の海
家から歩いて10分ほどした所に、図書館がある。
入場も貸し出しも無料なので、頻繁に利用している。
読みたい小説や漫画は大体電子書籍で買っているが、図鑑や絵本など、大きく見たいものやもっていると嵩張るものは図書館で借りることが多い。
赤茶っぽいレンガ造りの建物の中を通ると、図書館独特の本の香りが漂ってくる。
紙に染み付いた様々なニオイや、刷り立ての新書のインクのニオイが、創作意欲をかきたててくる
#17.明日はどんな一日をすごそうか
日記を書いていると、自分には好きなものがたくさんあることに気づく。
夜更かししてしまった明け方の、濃紺と透き通る青、柔らかいクリーム色と鮮やかなオレンジのグラデーション。
起き抜けに嗅ぐ、挽きたてのコーヒー豆の芳ばしい香り。
裸足で芝生の上に立ったときの足裏の感触。
ひんやりしてらしっとりしてて、チクチクしてくすぐったい。
路地裏にあるボロい店の大学芋。
本のページをめくったときに紙が擦
#18.プラナタリネスの空は広い。
宇宙列車に乗って、アンドロメダ銀河に行こう。
永いながい旅路の途中、
迷ってしまわぬように、切符を無くさぬように。
窓にうつる景色を追って、ガラスの草原を走り抜けよう。
雲の海に潜って、虹の橋を渡り、星の川を通る。
オーロラのトンネルを抜けたらそこは、銀河だった。
.
.
.
宇宙列車アンドロメダ銀河行き特急、通称はこぶねは、レトロな装いの寝台特急である。
一等級なんて高級室には泊まれない庶民