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空想日記

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あなたの知る私ではない『誰か』から届くメッセージ。日記のようで、どうやら公開して欲しいみたいだったのでここで。ちっぽけな世界のちっぽけな私のここから、私の元に届く誰かからの日記。… もっと読む
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#毎日note

回想電車

回想電車

『3番線参ります電車は、回想電車です。当駅を通過いたしますので、黄色い線の内側に下がってお待ちください。』

日付も変わった夜の駅、ターミナルに人はまばら。
スピーカーから、アナウンスの声 響き渡る。

『本日は、当駅をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。
終点、終点でございます。お忘れ物ございませんようお気をつけてお帰りください。』

ああ、今日も電車を逃してしまった。

駅員さんが

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#38. 右手にスプーン、左手には読みかけの本。

#38. 右手にスプーン、左手には読みかけの本。

本屋でなんとなく表紙が気になって買った本が面白かった。
短編集で、特に最後の電車の話が良かった。

昔から、一度読んだ本の内容は基本的に忘れないし、忘れていても表紙見れば思い出すことが出来るから、何度も同じ本を繰り返し読むよりも、沢山の本を読むことが好きだった。

次の展開に一喜一憂して、主人公のセリフにドキドキして、ページをめくるたびに早くこの先がどうなるのか気になってたまらなかった。

続きも

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#39.ふわふわとした浮遊感

#39.ふわふわとした浮遊感

あさ、いつものように起きて身支度を整えていると、玄関のチャイムがなった。

ドアを開けるとお隣さんがいた。
挨拶の言葉を声にする前に、足元をすりぬけてロロが家の中に入ってきた。

今日は週に一度、隣の家のロロを預かる日だ。
いつもはすぐに散歩に行くのだけれど、今日はあいにくの雨。うちの中で過ごしてもらう。

先日の旅先でのお土産であるぬいぐるみは、早速ロロのおもちゃとして振り回されていた。
しばら

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#40.なんの予定もない休みの日

#40.なんの予定もない休みの日

今日は休みだ。
仕事は在宅だし勤務内容も日程を細かく決めるものではないのだけど、特に打ち合わせの予定も出かける予定もなく、ちょうど色々な作業のキリも良かったので休みにしたのだ。

なんの予定もない休みの日は、なんて最高なのだろうか。
いつもよりも早くに目が覚め、わくわくした気持ちで朝日を浴びる。
普段よりも寝覚がよかったのは気のせいだろうか。

コーヒーを淹れて好きな音楽を流しながら優雅に楽しむ。

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#41.くだらない話で夜を明かす。

#41.くだらない話で夜を明かす。

友人が研究で賞を取ったそうだ。
友人はエネルギーの研究をしていて、僅かな資源から効率的にエネルギーを抽出することに成功したんだとか。
(もっと複雑怪奇で革新的な内容だった気がするがいかんせん興味の範囲外のこととなるとざっくりとした概要しか説明できないのだけれど。)
研究論文は銀河中を騒がせるほど話題になったそうで、一躍時の人である。

友人の研究内容に関して、自分は門外漢なので、賞を取った話を聞い

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#42.ノートに言葉を書き連ねる

#42.ノートに言葉を書き連ねる

パソコンが壊れた。
長年一緒に戦ってきた相棒だったのだけれど、最近調子が悪く騙し騙し使っていたが、今日ついに寿命を迎えてしまった。
煙をあげてもうにっちもさっちも動きやしない。

幸いデータはバックアップがあるし、今抱えている仕事も急を要するわけでもないので焦ることはないけれど、シンプルにショックだ。

修理できないか贔屓の電気屋に持っていって話を聞くことにした。

長年のガタが来ていると、場合に

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#43.とろりとろりと歩いて帰った。

#43.とろりとろりと歩いて帰った。

今日は定期検診があるため総合病院に来た。
受付を専用の機械で済ませたあと、広い待合室へ向かう。

大きな窓からたくさんの太陽の光が差し込んできて眩しい。
室内の温度はちょうど良く、日差しは暖かいのでぽかぽかしてなんだか眠たくなる。

総合病院はとても大きいので、たくさんの人がいるのに、驚くほど静かだ。
予約していても長く待つので鞄から本を取り出す。パラパラとページをめくり読もうとするけど、なんだか

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#44.三枚おろし

#44.三枚おろし

先日壊れた戦友であるパソコンは、やっぱり治すより買い替えた方が良いということになった。

思い出が詰まったパソコンとすっぱりお別れして新たな相棒を迎え入れる。
昔買った時よりも収入が増えているので当たり前だがハイスペックだ。
フォーマット状態から自分が使いやすいように設定をいじる時間のなんと楽しいことか。
新しく追加されている機能や、逆に無くなった機能を確認して自分にフィットさせていく。

デバイ

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#45.チョコレート・チョコレート・チョコレート

#45.チョコレート・チョコレート・チョコレート

駅前にチョコレート屋ができた。

いつもの帰り、ふと濃厚なチョコレートの香りがして辺りを見回すと、どうやらこの前まで工事していた場所からするようだ。
近寄って様子を伺うと綺麗に並べられた色とりどりのチョコレートたちがいた。

専門店だそうだ。
世界を超えて銀河中の様々なチョコレートを楽しめるらしい。
ガラスのショウケースがキラキラと眩しい。
気になったので中に入ってみることにした。

一口サイズで

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#46.青い空に月がのぼる

#46.青い空に月がのぼる

先生は不思議な人だ。
他の人よりも流れる時間がゆっくりというか、穏やかな時間を過ごしている。

先生には好きなものが沢山ある。
淹れたてのコーヒー、ハンモックでの昼寝、近所の散歩、写真や録音、メモなどの記録、夜更かしして読む本。
他にも山ほどあるがキリがないのでやめておこう。
外の世界にも内の世界にも色んな所に興味のアンテナがたっていて、ふらふらっと導かれるように素敵なものを見つけてくる。

先生

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#47.寄り添うように浮かんでいた。

#47.寄り添うように浮かんでいた。

今日は5年ぶりに二つの月が同時に満月になる。

大きい月と小さい月は距離が違うから満ち欠けの速度が違う。
二つ揃って綺麗なまんまるが並ぶ夜空は、キラキラと眩しくて美しい。

月の浮かぶ夜空は、なんだかずっと見ていられる。その優しい光に吸い込まれるように、ただぼーっと眺めてしまう。
窓辺に寄りかかって、冷たい夜風に当たりながら、二つの満月を眺める。

小さい頃から、この二つの月が満ちる夜が好きだった

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#48.妖精がいる

#48.妖精がいる

この家には妖精が住んでいる。
シルキーか、いやブラウニーかもしれない。

とにかく、家を出ている間に、散らかった部屋が片付いたり、逆に綺麗にしていたのに散らかっていたりする。
ずっと探していたものが急に見つかったり、隠してあったお菓子が無くなったりもする。

だからまあ、妖精がいるのだ。

今日は打ち合わせで外に出る用があったのだけど、なんとなくバタバタしてしまい、部屋を散らかしたまま出ることにな

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#49.ただそこで揺れていた。

#49.ただそこで揺れていた。

くらげの花畑がある。

くらげの花は、半透明で逆さまになったお碗から、フリルが見えるような形で下に紐状の繊維が垂れさがる、ぷにぷにとした感触の綺麗な花だ。てっぺんの部分に花びらのような模様が入っていて、その模様は様々である。

昔は、海にも同じような形の生き物がいたらしく、その生き物の名前が由来なのだそうだが、海のくらげはもういない。
こんな生き物がいたらきっと、それはそれは美しいのだろう。

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#50.早起きをしたあさ

#50.早起きをしたあさ

あさ、いつもより早く起きたので、近所の公園まで散歩をしに行った。
秋と冬の間の、カラッと晴れた気持ちの良いあさだった。
考え事をする時、歩いたほうがよく脳が働くらしい。今の仕事で悩んでいることをひたすらに考える。どうすれば問題が解決するのか、どうすればより良くなるのか。
考えに考えながら歩いていたら、近所のつもやが結構なところまで歩いてきてしまった。

ふと、どこかから焼きたてのパンのいい匂いがす

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