#48.妖精がいる

この家には妖精が住んでいる。
シルキーか、いやブラウニーかもしれない。

とにかく、家を出ている間に、散らかった部屋が片付いたり、逆に綺麗にしていたのに散らかっていたりする。
ずっと探していたものが急に見つかったり、隠してあったお菓子が無くなったりもする。

だからまあ、妖精がいるのだ。

今日は打ち合わせで外に出る用があったのだけど、なんとなくバタバタしてしまい、部屋を散らかしたまま出ることになってしまった。
帰ったら片付けないとなあ、なんて思いながら、ちょっと憂鬱を感じつつ打ち合わせから帰宅すると、散らかしていたはずの部屋が綺麗になっていた。

キッチンに置いてある、お菓子を入れたバケットの、上に被せた布をとると、中に入れていたはずのクッキーが減っていた。
あからさまにお礼として出してあると出ていかれるらしいので、これくらいがちょうどいいのだろう。

綺麗にしてくれるならいいけど、時々散らかされていたり、気に食わないとおどかされたりするらしい。気配の感じない妖精に心の中でだけ感謝をして（聞かれると出ていかれるかもしれないから）バケットのクッキーを補充する。

シルクのドレスを着た亡霊でも、茶色い髪の小鬼でも、いつか会えたらいいのにと少しだけ残念に思った。