#43.とろりとろりと歩いて帰った。

今日は定期検診があるため総合病院に来た。
受付を専用の機械で済ませたあと、広い待合室へ向かう。

大きな窓からたくさんの太陽の光が差し込んできて眩しい。
室内の温度はちょうど良く、日差しは暖かいのでぽかぽかしてなんだか眠たくなる。

総合病院はとても大きいので、たくさんの人がいるのに、驚くほど静かだ。
予約していても長く待つので鞄から本を取り出す。パラパラとページをめくり読もうとするけど、なんだか集中出来なかったのですぐに閉じる。

忙しなく行き来する看護師さん、退屈そうな子ども、身体の不調や病院の情報をやり取りするお年寄りたち。
知らない人たちの色んな様子が伺えて面白い。
体調の良し悪しに関わらず病院に来ると、ただみんな具合が悪いだけじゃないようで、他人の事情を勝手に妄想したりもする。

病院にいる人たちの観察をして時間を潰していると、ようやくアナウンスから名前を呼ばれ、診察室へと向かう。
簡単な問診と近況の報告、体調で不安なことや気になることがあればそれについてを主治医と話す。

検診が終わったあともすぐには帰れない。
支払いと、薬が出る場合はそれの受け取りに再び待たなければならないからだ。
ここも待つ、どっちかっていうとこっちの方が待つ。ので、いつも受付をした後に病院内にあるカフェに向かう。
ここの搾りたてオレンジジュースと苺みるくが絶品なのだ。
どちらも生のフルーツを使ってその場で作ってくれる。
前回来たときに苺みるくを飲んだので、今回はオレンジジュースにする。
注文すると、奥の調理場で半分に切ったオレンジを絞り機にかけて果汁を絞る。

出来立てのオレンジジュースが美味しくない訳がない。
けして安くは無いのだけれど、昔から好きな味だし、病院は疲れるのでご褒美でもある。

爽やかな甘酸っぱい香りを堪能したところで名前を呼ばれる。
ここで一服する時間を取ると、毎回ちょうど良く時間を潰せる。

ここでお茶をするというちょっとした楽しみがあるので、毎回ちゃんと通えている気がする。

次回の予約を取ってから病院を後にした。

基本的に一日かかるので、この後用事は特に無いので、近くの川原へと寄り道をする。
流れる水や転がる石ころに意味はなくとも目線を送る。
今日の夕飯何食べようか、帰りに和菓子でも買って帰ろうか。
ぼんやりしていると、時間を吸われるようだ。

穏やかにゆっくりと流れる時間に身を委ねるように、とろりとろりと歩いて帰った。