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みえないひかりがみてみたくて

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探してもいなかった。でも真夜中に突然の光が見えたかのように現れた女の子。その心が欲しくて、男は寿命を失う。でも本当は遠い昔から決まっていた。二人が出会い恋に落ちることは。二人に残…
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2018年10月の記事一覧

ファーストラブとキャンディータフト#12

それから一ヶ月としないうちに
彼女はもうある程度好きなように
ギターが鳴らせるようになっていた。
いつもの珈琲屋に僕らはいた。
「あのね、なんかメロディーが降ってくる時があるんだけど忘れちゃったり、たいしていいメロディーでもないなあとか思ったり。難しいね曲作りって。ちひろどうやって作ってる?」

「僕は歌詞と同時に歌詞にメロディーもついてるからそれにギター当ててく感じ。」
「そっか、自然に降りてく

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7thコードのリフレイン#13

休みの日に僕の携帯が鳴った。
僕はどうしてもすぐに出て欲しい時は
7コール鳴らすようにしている。
鳴らして折り返しを待つ時は3コール。
7コール鳴ったので出てみた。
彼女は少し興奮している感じで
「できた!できたよ!一曲できたの!」
「ほんと?よかったね!」
と返すと
「聴きたくないの?」ときた。
そりゃ聴きたいに決まってる。
「それは愚問だろう。」と、返すと
「はっきり言ってよー!遠回しなの嫌だ

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哀しい調べが向かう先には#14

それから
音楽について、オリジナル曲について
話し込みすぎて結局ひかるの家に
泊まることになってしまった。
見覚えのない天井と部屋を包む甘い香りで
そういえば泊まったんだっけと目を覚まして気づく。
ローソファーで眠ったが
有意義な話がたくさんできたおかげか
寝覚めはよかった。
それともひかるが近くにいるから?
すごく気持ちのいい朝だった。
どこからともなく鳥のさえずりが
聞こえてくる。
携帯に目

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贈ることのできないプレゼント#15

気がつけば
秋休みも終わり、冬休みに入っていた。
僕らはどちらからともなく
よく会っていた。
電車に乗って集まる先は大学から
最寄りの珈琲屋がある駅が専らだった。
寒さか、低気圧か、二人ともよく
頭痛にも悩まされた。
何かプレゼントを渡すそんな風習が
なぜか根付いたこの国では
その季節がたしかに近づいていた。
僕は誰かが決めたその日に見知らぬ誰かの
誕生日に会うかどうかなんて話はしていなかったが、

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Last Song.Last Name...#16

深々と雪が積もる。
電車の窓から見える景色は
段々とその白が薄れていく。
融解したのか、降らなかったのか。
わからないけど、確かに彼女が待つその場所へと近づいている。
いつものモニュメントで彼女は先に待っていた。僕はその姿を見つけて慌てて駆け出す。
「ごめん。寒かったよね。」と声をかけた。
「寒かった。けど、心はあったかかったよ。」
と彼女らしいセリフが鼓膜をかすめる。
優しく確かにそう聞こえたセ

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ずっとあなたを照らすから#17

彼が亡くなった。
大学を卒業する数ヶ月前。
全校生徒が集められた。
そして理事長が彼の死を告げた。
そして彼が生前に遺した文があると言った。
私はその言葉を信じることが出来なかった。
そして私の名を呼んだ。
この手紙を読むにふさわしいと理事長が
言った。
「凪波光君、前へ。」
気がつけば
私は全身の力が抜けて、床へ
身を任せていた。
それからどれくらい時間が経ったかも
わからずに、やっと友達の力

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