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いつかのための詩集

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どこかで酒と出会うための詩集。
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2019年5月の記事一覧

一生分のたいくつさ

一生分のたいくつさ

エクアドルのバナナが
売られている店先
おじいちゃんが眠り
ちびっこが踊る

中型バイクで二人乗りする
ペアリング上々な横顔に
脱力して 
また前を向く

やけに新しい銀色のシャッター
開けた日々を思う
たくましい身体がひかり
直立不動の出で立ちで

コンビニから聞こえる
しゃーせー ちわー
しゃーせー ちわー
省略でなく それが言葉で

手元のコメントを眺めて
同一地点の満足と不満足
家に帰って

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傍観するひと光と星と

傍観するひと光と星と

赤子に触れて柔らかさを知った
こんな日だから地平線が遠くに見える
初めてワルツを踊る日にだって
きっと地平線が遠くに見える

ゆっくりと
夜が勝ちつつある国道で
弱いはずの
日差しに病める

見据えるものがあり
手もとのものがあり
とてもどうでも良いのだけれど
地平線は遠くに見える

誰もいない改札前で
切符を切るのが後ろめたくて
運行状況の掲示板を見た後
ホットレモンでふっ と息をつく

「私は

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砂埃の匂い夕日に香る

砂埃の匂い夕日に香る

つつっと滑る廊下の先
光差す西階段の前
画鋲だらけの掲示板
喋り声がこだまする

はや五時限目
はや五時限目
グラウンドの芝生も乾いた
激しい千の雨粒 どこいった

鉛筆が回る
先生が机に向かう
問われていたのは
動く点P 動く点P

隠れてスマホで問う
おすすめ カフェ 駅近
右の指ばかりが早い
グランドに赤とんぼ舞う

チャイムが鳴る五分前
そっとペンをしまう
音に合わせてけだるさが去る
数人

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日本酒についての雑感

日本酒についての雑感

今日は日本酒について思ってることを書きます。

あまり面白くないかもしれませんが、まあ酒を片手に適当に読んでください。

まず結論から言いましょう。

僕は日本酒の味や質感を表す新しい表現を模索することが日本酒の普及につながると思っています。今回の記事は全体でそれを言うための構成になっています。

しばしお付き合いください。

※※※

日本酒は日用品ではありません。だよね?

「日用品です!」っ

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街の灯りが歩む夜に

街の灯りが歩む夜に

蛙のうたが聞こえる夜に
そっと耳を傾けている
なんだか草がかすれる音まで
今日はくっきり宙に浮いてる

それにしても都会は
身体に馴染まぬ土地であった
キラキラキラキラ
輝いてはいた

当時横には後輩がおり
先輩、先輩と
言われていたっけ
瓦斯灯の下 薄霧の街

欅の木々は大きくなったか
蛙に聞いても
答えやしない
風に聞いても 機嫌が悪い

初めて飲んだハイボール
名がある名もなきハイボール

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しあわせの田園風景

しあわせの田園風景

だいたい手元にあって

しあわせ

きれいな写真だとか、名言だとか

ほとんどため息ばっかで

しあわせ

あくせくする必要もなく

それなりお金があって

しあわせ

まあ借金もあったりするが

なかなか会えない親戚がいて

しあわせ

互いの情報のふるさに笑ってしまうね

まあまあトラブルがあって

しあわせ

また車をぶつけた、自損事故だけど

そうそうセックスにこぎつけて

しあわせ

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てのひらの湖畔にて

てのひらの湖畔にて

湖面は葉が落ちるのを見ていた
時に落ちたそれを受け入れていた
抱くわけでなく
と言って無関心でもなく

水を揺らした葉を
底から魚たちが眺めており
餌でも付いていたか
月明かりに鱗を光らせた

あまりに明るい夜だったから
あまりに明るい夜だったので
翡翠の羽の鳥は羽ばたく
水はまた揺れなければならなかった

水の揺れはまた
パートナーと寄り添う
牡鹿を目覚めさせた
何しろ水が揺れるものだから

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