【書評】ゾラ『居酒屋』はしんどかった
ロッシーです。
ゾラの『居酒屋』に挑戦するも、2度目の撤退となりました。
先日のゾラの短編の書評で「今度こそ読みます!」宣言したのですが、やっぱり駄目でした(笑)。
やっぱりしんどい
『居酒屋』は文庫1冊なので、分量的には強敵ではありません。プルーストの『失われた時を求めて』のようなモンスター小説に比べたらほぼザコキャラです。
ということで再度挑戦したのですが、やはり前回と同様に読み進めるのがしんどい・・・。ページに文字びっしりで空白が全然ないのも滅入る・・・なんなんだこのダンジョンは・・・。
しかし、なんとか読み進め、やっとこさ前回の撤退ポイントを超えることができました!
「お、今回はいけるかも!」
と思ったのですが甘かったです。そこから数十ページすすんだところでこれ以上は無理!と撤退を決断しました。
ふ~しんどかった。
描写がしんどい
具体的に何がしんどかったのかというと、まず描写ですね。
建物、服装、町の様子とか、そういうものの描写が結構丁寧なんですよね。ゾラさんには失礼ながら、私は
「そんな描写どうでもいいわ。うっせえうっせえうっせえわ。」
と思ってしまうんですよ。
確かに、小説ですから映画とは違います。映画なら映像で一発で説明可能ですが、文章で表現するとなると、細かい描写が必要になるのは分かります。
でも、まあそこらへんはチャッチャと済ませてほしいんですよね。別に部屋にどんな家具があるかとか、どういう配置になっているかとか、建物の外観の様子とか、それほどこちとら興味はないわけですよ、はい。
そういう描写が沢山出てくると、「これ読む意味あるのか?」と思ってしまうんですよね。
「この仕事ってやる意味あるんですか?」と上司に質問する新入社員と同じ心境です(笑)。
「まずは(ゴチャゴチャ言う前に)やってみようか(やれ)」と仮面の笑顔で優しく答える上司がいればいいのですが、読書は孤独な行為なのでそんな疑問には誰からもコメントナッシングなのです。
ストーリーがしんどい
次にしんどかったのは、「ストーリーにインパクトがない」という点ですね。
『居酒屋』はざっくり言うと、主人公の女性が貧困にあえぎ堕ちていくストーリーです。よくあるパターンです。常套句です。
でも、それはあくまでも現代っ子の私からの視点であって、当時この小説が発表された際は、かなりのインパクトがあったのでしょうね。
「ええ!一般庶民ってこんな悲惨な状況なの!なんて可哀そうなのかしら。ひどいわぁ~。(よかった、私がこんな暮らしじゃなくて)」
と読者である上流階級の有閑マダムが下層階級の一般庶民の不幸という蜜を味わっていたのかもしれません。
しかし、もはや現代に生きる私達はそういうストーリーに慣れっこになってしまっているわけです。
「ああ、これって要するに『ナニワ金融道』とか『闇金ウシジマくん』系の物語ね。」
というように。
しかも、それら現代作品の描き方のほうが『居酒屋』のそれよりも強烈です。借金回収のためであれば、債務者に違法営業させたり、マグロ船に乗せたり、「風呂に沈めたり」(隠語)、内臓売らせたり、保険金殺害させたりなんて普通ですからね。
当時にタイムスリップして、これらの現代作品を発表したら、おそらく何らかの罪に問われて下手したら極刑でしょうね(そもそも発表されないでしょうけど)。
そういう意味で、インパクト面では『居酒屋』は現代の類似作品に勝てません。それを読むのもしんどかったですね。
現代人の時間的余裕のなさ
そもそも、時間に余裕がない現代人の場合、古典をじっくり読むというのはそれだけでもハードルが高い行為です。
音楽の世界をみればそれが良く分かります。
1時間近いクラシック交響曲をレコードプレーヤーでゆったりと自宅で聴く人なんてほぼ皆無でしょう。もはやそれは成功者の象徴です。
庶民の住む狭いアパートでそんなことをしたら、お隣さんから苦情が来ること間違いありません。
現代においては、そんな贅沢は許されないのです。ほとんどの人は通勤などの最中に「ながら聴き」するのが当たり前です。しかもMP3というデジタル的に劣化処理した音源をイヤホンでひっそりと聞くのが主流です。なんてせせこましい時代なのでしょう(笑)。
そして、現代のポップ・ミュージックでは、1曲の時間はほとんどが5分以内です。楽曲時間が短縮化される傾向はどんどんと強まり、いきなりサビに入ったり、間奏を省略することはもはや当たり前になっています。もうギターソロなんて誰も聴かないんでしょうね。ロックンロールイズデッド。悲しいことです。
音楽がそういう状況なのであれば、当然文学も同様です。
ダラダラとした長い描写は好まれません。昔の文学作品では、そういったものが導入部分で形式的に必要とされたのかもしれませんが、現代に生きる私達にとっては正直しんどいものがあります。
まあ、全ての古典がしんどいわけではありませんけどね。バルザックの『ゴリオ爺さん』における冒頭の風景描写は正直冗長だと思いますが、それ以降の話が非常に面白いので乗り越えられるわけです。
しかし、『居酒屋』の場合にはストーリー自体に面白さを見出すことができなかったので乗り越えられませんでした。
結局のところ、「相性がすべて」ということに尽きるのかもしれませんね。たまたま私には合わなかっただけです。
もうこれで2回チャレンジしましたから、もう次にチャレンジすることはないでしょう。『居酒屋』よ、いざさらば。
ゾラを読むなら個人的には短編がいいですね。サマセット・モームの短編と共通した面白さがありますので、まだ読んでいない方は、ぜひ読んでみてください!
最後までお読みいただきありがとうございます。
Thank you for reading!
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