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第2話【相棒もの×報恩譚×ビルドゥングス・ロマン】
ある街に、貧しい孤児の少年がいました。
少年は居心地のよくない孤児院から脱走し、ひとりぼっち、あちらこちらでちいさな盗みを働いて毎日を生きていました。とはいえ子どものやることですから何度もピンチを経験しました。それでもいつも悪運を味方につけてなんとか切り抜けていました。
ところがある日、とうとう少年は捕まって、怒った街の人々に取り囲まれてしまいます。少年は棒切れで激しく叩かれ、硬いクツで蹴
第1話【二つの視点×異類婚姻譚×ピカレスク・ロマン】
オレはあの長い戦争をなぜか生き延びて帰還した。
結局のところ勝ったのか負けたのかよくわからない戦争だった。まったく手柄もなく気のきいた土産話もないオレは、かつて暮らしていた街へ帰り着き、奇跡的に焼け残っていた、ひとりぼっちの安アパートへ戻った。
そこでオレを待っていたのは失業と貧困の現実だった。帰還してすでに季節は一周したが、ほかのほとんどの戦場帰りたちと同様にオレはいまだ定職を得られず、
映画:『ザ・フォーリナー/復讐者』
2019日本公開/マーティン・キャンベル監督
「現在は家族とともに静かに暮らす元・伝説的特殊部隊員が国際的犯罪組織の謀略に巻き込まれ愛娘か愛妻かもしくはその両方を殺害されて命を捨てた復讐に立ち上がる」
↑これそのままGoogle検索欄に投げ込んだら何本アメリカ製アクション映画にヒットするだろうと思ったのだけど、意外に引っかからなかった。
いや、冷やかしで観たのではなく、そういう様式美としての
映画:『1917 命をかけた伝令』
2020年日本公開/サム・メンデス監督
公開前から気になっていた作品のひとつ。本邦での公開時期が当時関わっていた作品の仕上げと重なったため、気づいたら劇場公開が終わっていた。
年末にネット配信で観ることになったけれど、結果的にいろんな部分を検証しながら何度も見返すことになったので、まあ劇場鑑賞にこだわらなくてもよかったかな、といまは感じている。
本作は(擬似的なものではあるが)全篇1カットで
書籍:『マイ・ロスト・シティー』 スコット・フィッツジェラルド/村上春樹 訳
今年読んだ本のことをすこし考えてみる時期になった。年の初めから数巻にわたる大長編ばかり読んできた気がするが、合間に読む中・短編集のほうがむしろ記憶に鮮やかなのが腹立たしいところ。
そのなかでも、とくにココロに残ったのがこの掌編集である。
フィッツジェラルドは、アメリカにおける “ロスト・ジェネレーション” の代表的作家とされているが、そもそも1920年代のアメリカを体感していないワタシにとって