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ショートステイ

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クリエイター・リンク集「バスを待つ間に触れられるものを探しています」
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2020年12月の記事一覧

悲しい時
辛い時
苦しい時
マナティーに会いに行く

マナティーはこちらに
顔を見せてくれる
愛くるしい姿は
心の闇を吸い取ってくれる

彼女は夢の本編

夢の中のあの人はいつも怒っている。

それは私があの人の夢を見ることに負い目を感じているからなのか、あの人を好きでいることに罪悪感を抱いているからなのか、それとも本当に怒っているからなのか、よくわからないけれど、とにかく夢の中のあの人はいつも怒っていて、私は目が覚めるたびに誰もいないさびれた浜辺に打ち上げられたような気分になる。不思議な時空の空白に放り出される。

夢の中で私はあの人とゆるやかな長

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高架橋の向こうを目指して

高架橋の向こうを目指して

 高架橋のすぐ下の遊歩道を、わたしはずっと歩き続けている。
 橋桁と橋桁の間はコンクリートでふさがれ、反対側へ渡れないようになっていた。
 わたしは、どうにかして向こう側へ行きたかった。どんな町並みが広がっているのだろう。どういった人たちが暮らしているのだろう。その全てを知りたいと願った。

 高架橋に貼り付くようにして、赤い屋根の保育園が建っている。どうも見覚えがあると思ったら、子供の頃に通って

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仲間を探す

仲間を探す

 仲間が欲しくなったので問屋へ行ってみた。
 それは昭和の頃に作られた古い橋の下にひっそりと建っていた。レンガ造りの小さな建物で、ピザを焼く竈と言われても納得できそうだ。
 全体が蔦やなんかでめちゃくちゃに覆われ、近くには幅の広い川が流れている。流れも速い。ネットの情報によると、大河ドラマなんかでたまに使われるらしい。

 赤いドアは薄汚れている。誰もここを掃除しようだなんて思ったりしないのだ。ガ

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午後ティーを愛しているから。

午後ティーを愛しているから。

僕は午後の紅茶ミルクティー、通称『午後ティー』を愛飲している。
小学生の頃、たまたま母親が買ってきていたのを飲み、運命の出会いを果たした。
後に母親にその事を言ったのだが、そうだっけ、の一言で、どうでもいい出来事と化してしまった。
母親よ、息子の運命を忘れるでない。

30代になった今も、午後ティーへの愛を忘れず、もうそれしか飲まない、人から見れば罰ゲームなのか、と訝られる生活を送っている。
朝起

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透明なまま
電車に乗り込む
空いている車内なら
誰かにバレることなく
網棚に寝そべっていられる
長い長い
通勤だからそれがいい
そのうち
満員列車になって
人々の蒸気が立ち込める
もやもやが
透ける体と心を侵してくる
そろそろ降りて
色付き人間に戻らなくては
みなさん
おはようございます