🦋

🕊🌌: 世界について

🦋

🕊🌌: 世界について

記事一覧

BIG LOVE

体が触れた瞬間、強い反発が返ってきた。いつから身構えていたのだろうか。そして何から? おっさんを、駅のホームに向かうエスカレーターで突き飛ばした。 私の住む東京…

🦋
6か月前
2

アル中女の肖像

 冒頭、あまりに直裁的なテーマー ・社会問題 ・統計学(と、そこにまとわりつく胡散臭さ) ・フェミニズム を与えられるので、表出されている問題が何を語ろうとしているの…

🦋
9か月前
1

断片

サルトルの「アフリカで子どもが飢えて死んでいるのを前に文学は何ができるか」(『文学は何ができるか』)という発言に対する、岡真理先生の考察- "アフリカで飢えて死ん…

🦋
10か月前

地中海のかぼす

Cabosser、キャボゼと頭の中でカタカナに直して呟きながら辞書を引くと、「でこぼこにする・へこませる」という意味らしい。すぐにベコベコになったかぼすのイメージがよぎ…

🦋
10か月前
1

チョコレートが溶けるまで

 この間、いつもより長めに散歩をした。時世柄窓越しに見ることが多かった空は久しぶりに肉眼でみると記憶よりも遥かに広くて、色味が強かった。鮮やかなブルーを隈無く照…

🦋
4年前
6

みんなが海をもてたなら

 この前お台場の近くを散歩している時、久しぶりに海を見た。 空いっぱいに晴れていたから、陽射しが水面の至るところに降り注いでいて、光の粒が海の上を滑っては柔らか…

🦋
4年前
5

silhouette

 ある晩、人と話している時に、会話の流れでふと、「"後ろ姿"って英語で表すとしたら、何という語彙を当てはめる?」と問いかけた事がある。彼は英語がとても堪能だったか…

🦋
4年前
2

伸びきったきしめん的考察

昨夜、映画「7月22日」を観た。2011年にノルウェーの首都オスロとウトヤ島で実際に起きたテロ事件を題材したものである。犯人のアンネシュ・ブレイビクは非常に急進的なキ…

🦋
4年前
7

J’irai étudier à l’université de Lausanne

今年も、あと一ヶ月弱で終わる。2019年は、私にとっては大学三年目の年で、それは一年目とも二年目とも全く違う年だった。前年二年のあいだに出会い、大切だと信じて側に置…

🦋
4年前
5

夕暮れの図書室で、世界をこっそり旅することについて

    高校生の頃、一時期Twitterの自己紹介欄に「世界史は楽しいよ。この教科書さえあれば、世界じゅうを旅行できるんだから。」というようなことを書いていたことがある…

🦋
4年前
4

私はコミュニケーションの際にあまりにも激しくお手付きをしてしまうばかりか、さらに悪いことに、その激しさを受けて立ち昇った風で見事に相手まで吹き飛ばしてしまうことがある 私がどこにもいけない理由

🦋
4年前
1

憧れのあの人

大学生は、出会いの連続だ。毎日毎日色んな人が自分の人生のなかに登場しては消えている。最近LINEのトーク履歴上位5位を占めているメンバーは、3ヶ月後にはすっかり別の5…

🦋
4年前
7

Comment partager les sentiments avec d’autres(Ⅱ)

日仏会館のスピーチに向けて書いたもの。今、率直に社会に対して思うこと。 <私は今年で21歳になりました。日本人女性の平均寿命は87歳なので、私はちょうどその4分の1…

🦋
4年前
4

Comment partager les sentiments avec d’autres(Ⅰ)

ある目標に向けて原稿を書いている。毎日机に向かい、自分の頭で言葉を捻り出すという体験は初めてだから、刺激的な分とても労力を要する作業である。 何がそんなに大変な…

🦋
5年前
3
BIG LOVE

BIG LOVE

体が触れた瞬間、強い反発が返ってきた。いつから身構えていたのだろうか。そして何から?

おっさんを、駅のホームに向かうエスカレーターで突き飛ばした。

私の住む東京では、エスカレーターの右側は静止する人用、左側は歩いて昇る人のために空けておくのがルールである。買い物を終え、私は駅まで猛ダッシュした。発車の時刻が迫っていた。やっとの思いで辿り着き、ホームに昇ろうとエスカレーターに差し掛かった瞬間に、

もっとみる
アル中女の肖像

アル中女の肖像

 冒頭、あまりに直裁的なテーマー
・社会問題
・統計学(と、そこにまとわりつく胡散臭さ)
・フェミニズム
を与えられるので、表出されている問題が何を語ろうとしているのかという一点に前のめりになるあまり、それらが本来語りかけるものを見逃しそうになる。(そういう姿勢も大事)

 アル中女を演じる主演女優(タベア・ブルーメンシャイン
)自身によって選ばれた衣装はどれも、シーンに込められた意味とそれ以上を

もっとみる

断片

サルトルの「アフリカで子どもが飢えて死んでいるのを前に文学は何ができるか」(『文学は何ができるか』)という発言に対する、岡真理先生の考察-

"アフリカで飢えて死んでいく者たち、彼岸の飢えている二〇億の人間たちこそが、ほかの誰にも増して切実に文学を必要としていると言えるのではないか。(…)飢えて今にも死にそうな子どもは本など読めないにちがいない。だが、その子が実際問題として文学を読めないという事実

もっとみる
地中海のかぼす

地中海のかぼす

Cabosser、キャボゼと頭の中でカタカナに直して呟きながら辞書を引くと、「でこぼこにする・へこませる」という意味らしい。すぐにベコベコになったかぼすのイメージがよぎる。ところどころに茶色の汚れがあり、へこんだ部分が色素沈着している。うすい外皮は頼りないなめらかさ。切るとすぐに果肉が露出する。うらぶれた見た目に反し、太陽に透かしたように清潔な色をしている。ここまで来たら、想像を早く現実のものにし

もっとみる
チョコレートが溶けるまで

チョコレートが溶けるまで

 この間、いつもより長めに散歩をした。時世柄窓越しに見ることが多かった空は久しぶりに肉眼でみると記憶よりも遥かに広くて、色味が強かった。鮮やかなブルーを隈無く照らすおおきな陽光に、夏の気配を感じた。季節の狭間に立ってその変化を見届けるのは本来とても好きな事であるはずなのに、どこか他人事だった。理由は明白だった。わかりやすく居場所がわかるものよりも、さっきまで手元にあったはずなのにいつの間にか随分と

もっとみる
みんなが海をもてたなら

みんなが海をもてたなら

 この前お台場の近くを散歩している時、久しぶりに海を見た。
空いっぱいに晴れていたから、陽射しが水面の至るところに降り注いでいて、光の粒が海の上を滑っては柔らかい波に包まれて揺られて、を繰り返して、そうして徐々に溶けていった。美しかった。

 私の身の回りは最近動きが少なくて、ゆるーく停滞してる感じだった。外に出れば春が広がっていて、もうあの刺すような2月の冷たさなんて、本当に遠いことみたいに思え

もっとみる
silhouette

silhouette

 ある晩、人と話している時に、会話の流れでふと、「"後ろ姿"って英語で表すとしたら、何という語彙を当てはめる?」と問いかけた事がある。彼は英語がとても堪能だったから。
すると少し間を置いて、シルエットかな、と返ってきた。

silhouette。これは元々フランス語だ。ちゃんと仏和辞書にも載っている。

 あいみょんの"GOOD NIGHTベイベー"という曲に、「後ろ姿の君を見るだけでもいいのさ」

もっとみる
伸びきったきしめん的考察

伸びきったきしめん的考察

昨夜、映画「7月22日」を観た。2011年にノルウェーの首都オスロとウトヤ島で実際に起きたテロ事件を題材したものである。犯人のアンネシュ・ブレイビクは非常に急進的なキリスト教原理主義者であり、共犯者を持たずたった1人で、それもほんの1日の間に77人を殺害し、100人以上の負傷者を出した。犯行動機は近年のヨーロッパにおける多文化主義への反発、とりわけイスラム教に対する抵抗であった。

奇異でもなけ

もっとみる
J’irai étudier à l’université de Lausanne

J’irai étudier à l’université de Lausanne

今年も、あと一ヶ月弱で終わる。2019年は、私にとっては大学三年目の年で、それは一年目とも二年目とも全く違う年だった。前年二年のあいだに出会い、大切だと信じて側に置いていたいくつかのものが、私の元から離れていった。泡立つ白い波がふわりと押し寄せてきて、私は嬉々としてそのなかに入っていったけど、気が付いたら私を覆っていたはずの水はもうどこにもなくて、むき出しの、濡れて黒く湿った地面に一人で立ち尽くし

もっとみる
夕暮れの図書室で、世界をこっそり旅することについて

夕暮れの図書室で、世界をこっそり旅することについて

   
高校生の頃、一時期Twitterの自己紹介欄に「世界史は楽しいよ。この教科書さえあれば、世界じゅうを旅行できるんだから。」というようなことを書いていたことがある。

高校三年生の春、クラスにいる30人くらいの女の子のうち20人近くが日本史を選択するなか、私は迷わず世界史のクラスに飛び込んだ。

決め手は、教科書の色だった。私の高校では世界史、日本史ともにおなじみの山川出版社から出ているもの

もっとみる

私はコミュニケーションの際にあまりにも激しくお手付きをしてしまうばかりか、さらに悪いことに、その激しさを受けて立ち昇った風で見事に相手まで吹き飛ばしてしまうことがある 私がどこにもいけない理由

憧れのあの人

憧れのあの人

大学生は、出会いの連続だ。毎日毎日色んな人が自分の人生のなかに登場しては消えている。最近LINEのトーク履歴上位5位を占めているメンバーは、3ヶ月後にはすっかり別の5人に取って代わられてるなんてことは日常茶飯事だ。期待するだけ無駄。みんな何もわかってないふりして、とりあえず曲がかかってる間はすごく楽しいみたいに踊り続ける。不安、将来、辛さ。難しいことなんて考えて、ペースを乱すわけにはいかないのだ。

もっとみる
Comment partager les sentiments avec d’autres(Ⅱ)

Comment partager les sentiments avec d’autres(Ⅱ)

日仏会館のスピーチに向けて書いたもの。今、率直に社会に対して思うこと。

<私は今年で21歳になりました。日本人女性の平均寿命は87歳なので、私はちょうどその4分の1を生きてきたことになります。ですから人生まだこれからですが、これまで積み上げてきたささやかな軌跡においては、思い出深い人も何人か存在しました。彼らのことを思い出すと気がつくのが、彼らと話す時、私たちは違いよりは「心の共有」によって語

もっとみる
Comment partager les sentiments avec d’autres(Ⅰ)

Comment partager les sentiments avec d’autres(Ⅰ)

ある目標に向けて原稿を書いている。毎日机に向かい、自分の頭で言葉を捻り出すという体験は初めてだから、刺激的な分とても労力を要する作業である。
何がそんなに大変なのか。それは、私たちは自分が感じたことを体系的に頭のなかでまとめ、その中からいくつかのポイントを抽出し、それを人に発信できる状態に洗練しなければならない点にある。特にこの過程は重要だ。ここで感情移入をし過ぎると話の要点が埋もれるし、だからと

もっとみる