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#連載小説

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第1話

あらすじ

戊辰鳥 後を濁さず
―つちのえたつとり あとをにごさず―
第一部「釜場」

三月十五日(金)

 農家であり地主であるトキ家の跡取り娘として生まれた私は、二十歳の時、祖父の養子となり、祖父からボロアパートを一棟譲り受けた。
 表向きはトキ家の血を絶やさないためとなっているが、実際は広大な土地を持つ祖父から相続を受けるためである。

 医師が祖父に宣告したおおよそ三年後までに私は相続税と

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針を置いたらあの海へ 第1話

針を置いたらあの海へ 第1話

しょうしつ‐てん〔セウシツ‐〕【消失点】
遠近法や透視図法における、平行な直線群が集まる点。バニシングポイント。

「たっちゃんさん」は、突如俺の前に現れた。それは、高校中退記念に美容室に行った日のことだった。
 高校サボり開幕記念に髪を伸ばし始めて半年、長めのショートヘアは肩を通り越し、ウルフヘアになっていた。
「長髪似合いますね、UKロックバンドのボーカリスト、みたいな」
 美容師さんにそう話

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天才と凡才【第一話】

天才と凡才【第一話】

【あらすじ】

【第二~四話のリンク先】
第二話はこちら
第三話はこちら
第四話はこちら

↓本編はこちらから

【小説】天才と凡才第一話プロローグ

 第6回日本よだか文学賞には、23歳の木村唄子さんの作品「ローマに恋をして」に、決定しました。

 選考委員会は9月4日、作家の青葉圭、亀嶋ゆかり、岸田菜摘、濱崎ユカ、間宮はるみ、吉川満次郎(五十音順)の六委員が出席し、厳密な審査が行われました。

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私を 想って 第一話

私を 想って 第一話

 思春期特有の悩みなら数年我慢すれば解決するけれど、
 私の悩みは一生続くと思う。

「鞠毛さん、そろそろ晩ご飯にしましょう」
 私は台所から呼ぶ涼花さんに「はい」と返事をして、通知表を手にとった。
 気が滅入る。その原因は、通知表の中身ではない。表紙に書かれた自分の名前だ。
 鮎沢鞠毛。
 やっと馴染んできた名前であると同時に、ずっと私を悩ませてきた名前。そしてこれからも悩ませ続けていくのだろう

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【連載小説】「執事はバッドエンドを導かない 」第一話(創作大賞2024・ファンタジー小説部門応募作品)

【連載小説】「執事はバッドエンドを導かない 」第一話(創作大賞2024・ファンタジー小説部門応募作品)

※この小説は、創作大賞2024「ファンタジー小説部門」応募作品です。

プロローグ

 遠い昔、村に魔女がやって来ました。

 村の少女が「病気の母を助けてほしい」と懇願すると、魔女はこう言います。

「かわいいお前のためだ。その願いをきいてやろう。けれど、お前も相応のものを払わねばいけないよ。私が持っているいくつかの呪いのうち、一つをお前が代わりに引き受けてくれるかい」
 
 少女は何だかとても

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