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2023年11月の記事一覧

織物のような文章

織物のような文章

【※この記事には川端康成作『雪国』の結末についての記述があります。いわゆるネタバレになりますので、ご注意ください。】

縮む時間の流れる文章

 川端康成作『雪国』の終章の前半である、縮(ちぢみ)について書かれた部分には――「縮」だから「縮む」というわけではありませんが――縮む時間が流れています。

 この小説では、縮織は縮(ちぢみ)と書かれていますが、縮は産物であり製品です。

 たとえば、ある

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影の薄い小説(小説の鑑賞・03)

影の薄い小説(小説の鑑賞・03)


小説は影である
 小説は複製で読んでなんぼ、複製で読むのが当たり前、複製以外の形態で読むのはまず不可能である。

 小説はコンパクト。自分のものにできる。
 どう読んだか、あるいは、そもそも読んだか読んでいないかを、他人にいちいち報告する必要がない。
 小説を読むのは孤独な作業。

     *

 前回は上のようなことについて書きました。

     *

 小説は影である――。今回は、そんな

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であって、ではない(反復とずれ・03)

であって、ではない(反復とずれ・03)

 この記事では、蓮實重彥による四種類の断片的な文章を読んでみます。文章を引用し、その「余白」に私の感想と思いを綴る形式になっています。長い記事ですが、太文字の部分だけに目をとおしても読めるように書いていますので、お忙しい方はお試しください。

第1部:であって、ではない◆表記について

 蓮實重彥であって、蓮實重彦ではない。
 まして蓮実重彦ではない。

 とはいえ、いま挙げた三種類の表記が出まわ

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まばらにまだらに『杳子』を読む(08)

まばらにまだらに『杳子』を読む(08)


見て見て
『杳子』の「一」を読んでいると、目につくことがあります。くり返されているし、反復されているのです。

 たとえば「見」「目」「感」という文字が頻出します。驚くほど多いのです。まるで「見て見て」と言っているように感じられるほどです。

 そう感じたら、ちゃんと見てやらなければなりません。言葉は健気だし、いとおしいものです。

     *

「見」「目」「感」を見ていて気がつくことがあり

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