マガジンのカバー画像

また読み直すnote

18
また読み直したいnoteを貯めていきます。
運営しているクリエイター

#エッセイ

弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった

弟が万引きを疑われ、そして母は赤べこになった

高校から帰ったら、母が大騒ぎしていた。
なんだなんだ、一体どうした。

「良太が万引きしたかも」

良太とは、私の3歳下の弟だ。

生まれつき、ダウン症という病気で、知的障害がある。
大人になった今も、良太の知能レベルは2歳児と同じだ。

ヒトの細胞の染色体が一本多いと、ダウン症になるらしい。
一本得してるはずなのに、不思議ね。

「良太が万引き?あるわけないやろ」

ヒヤリハットを、そういう帽子

もっとみる
【私は私を幸せにする】

【私は私を幸せにする】

旦那と入籍をして、今年で13年目を迎える。5年ほど付き合って結婚したので、トータル18年も一緒にいる。私が実家で過ごした年数を越すくらい一緒にいたんだなぁ、と感慨深くもある。

当たり前だが、好きで結婚した。愛し合ったうえで一緒になった。おそらく旦那の側も、そのときの気持ちに偽りはなかっただろうと思う。

どこですれ違ったのか、思い返せば行き当たるのは、やはり妊娠がきっかけだった。入院するほど酷い

もっとみる
最愛の母に「死んでもいいよ」と言った日

最愛の母に「死んでもいいよ」と言った日

「ママ、死にたいなら死んでもいいよ」

大好きな母に、私が放った言葉です。
高校2年生の時でした。

ひどい娘だと思いますよね。
私もそう思います。
でも、母を救う唯一の言葉でした。
それしか見つからなかった。

話は少しさかのぼりまして。

私が中学2年生の時、父が突然死しました。
働きすぎによる、心筋梗塞でした。

父は建築系ベンチャー企業の経営者で、めちゃくちゃカッコいい存在でした。めちゃく

もっとみる
お葬式のあと、母は一度も泣かなかった #あの日のLINE

お葬式のあと、母は一度も泣かなかった #あの日のLINE

昔から、細かい数字を覚えるのが苦手だ。

自分の身長、50m走のタイム、友人の誕生日、恋人の記念日、宿題の提出期限。
すべて覚えていた試しがない。

そんな私が唯一、細かく覚えている数字がある。

2005年6月9日18時42分。
父が亡くなった時間だ。

「娘さんが中学校から到着するまで、頑張って待っていらしたんですよ」

時間を読み上げたあと、病院の先生が言った。
むしろ私の記憶は、そこからお

もっとみる
思い込みの呪いと、4000字の魔法

思い込みの呪いと、4000字の魔法

「奈美と結婚しても、ダウン症の弟くんの面倒を見る自信がない」

高校生の時、付き合っていた彼氏が言った。

ショックだったのは。
明るかった彼の、思いつめたような表情でも。
とつぜん切り出された、将来の話でも。
障害のある弟を、否定されたことでもなかった。

っていうか結婚とか急になにを言い出してんねん、どうしてん。

なにより「弟は私に面倒をかける存在で、私がその面倒を見なければならない」と思わ

もっとみる