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次の蕾がひらく頃には幕が下りるけど

ーーその人とのいちばん心地いい距離感を探っていくと、既存の関係の名前が窮屈になっていくんですよね。


人生は物語。
どうも横山黎です。

大学生作家として本を書いたり、本を届けたり、本を届けるためにイベントを開催したりしています。

今回は「次の蕾が開く頃には幕が下りるけど」というテーマで話していこうと思います。


📚サラの誕生日

今日は僕の友達のサラの誕生日です。

同じ大学の同じ学科の人。

3,4年前、僕が好きだった人の誕生日。


大学1年生の頃、コロナが真っ盛りで、思い描いていたキャンパスライフとは程遠い大学生活を強いられたわけですが、それでも希望を捨てずにそれなりに満たされた心でいれたのは、少なからず彼女の存在のおかげだったんだと思います。

コロナを機にZoom飲み会やオンライン会議が流行ったわけですが、僕ら大学生も一時期はそれに徹していました。それこそサラと仲良くなったのはオンライン交流会だし、毎日のように電話やビデオ通話をしていたっけ。僕らは7月に初めて対面で会ったんですが、その日5時間くらいカフェでしゃべって、その後家に帰ってから電話で夜通しおしゃべり。もはやオンラインでの関わりが主になるほど、あの頃のコミュニケーションの仕方は特異でしたね。

9月に付き合うことになって、11月で距離を置くことになって、翌年の6月に別れることになりました。

「君の絶対になりたかった」

あまりにあっけなく終わったひとときの恋に、そんな未練を引き連れて、しばらく悶々と過ごしていたなぁ。


📚ありふれた名前なんかで…

別れたとはいえ、喧嘩したわけでもないので、僕らは仲良く関係を続けていました。たまに会ってしゃべるくらいはしていた気がします。未練がましい僕はしばらく引きずっていたけれど、彼女はそんなことなくて次の人を見つけていたし、かくいう僕もバイト先の後輩に胸をときめかせることになりました。

「何その話。私、聞いてないんだけど!」

バイト先の子といろいろあったんだよねってことを話すと、サラはそんな風に口を尖らせた記憶があります。あれは大学3年生の初夏のことだから、2年前の6月頃かな。根掘り葉掘り訊かれることになったんです、彼女の家で。

この日に限らず、以前にも何回かサラの家に行くことがありました。付き合っていたときには1度も行っていなかったのにも関わらず。

もうここまで来たら、関係ってよく分からなくなってきますよね。「友達だから」とか「恋人だから」とか「別れたから」とか、そういう理由付けが意味を成さなくなってくる。その人とのいちばん心地いい距離感を探っていくと、既存の関係の名前が窮屈になっていくんですよね。

僕とサラにとって、付き合っているときの関係は少し窮屈だったんだと思います。付き合う前の関係や、別れた後の関係が居心地がよかったわけだから。他の友達とも違う、でも、恋人でもない、特別な関係。極論、この世にひとつとして同じ名前の関係はないんだから、無理にありふれた名前なんかで名付ける必要もないよねという話です。


📚次の蕾がひらく頃には

僕もサラも大学4年生なわけで、次の蕾がひらく頃には離ればなれになります。お互いに別々の未来への道を歩み出すんです。

この前、用事のあった駅までサラに車で送ってもらったことがありました。
#元カノの車に乗るな

そのときにちらりと聞いた話では、少し離れた街で働くことになるそうです。今までは、大学に行けば、あるいは近くの飲み屋さんで待ち合わせればすぐに会えたわけですが、これからは簡単には会えなくなります。月に1度会うこともなければ、年に1度も会わなくなることでしょう。

サラはサラでそんなに過去に執着する人ではないから、物語や伏線や懐かしむことが好きな僕みたいに、ふとした瞬間に思い出すことも、誕生日だからといって相手にメッセージを贈ることもなくなるんだろうけど、僕は別にそれでいい。

きっとまたいつか会えるから。

会って、昔話に花を咲かせて、そんなこともあったねなんて言って笑って、そんなこともあったねなんて言ってちょっぴり泣くんだから。

次の蕾がひらく頃には、僕の青春に幕が下りるけど、出逢いのおかげで見つけた本当の自分の姿をいつまでも変えないように、水のような関係でいれたらいい。数年後、またあの公園で会えばいい。缶のアルコール片手に、夜道でも歩けばいい。


ーー誕生日おめでとう~!!またのもーね

ーー飲みましょう絶対!!


20240121 横山黎


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