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実家の愛犬

実家の愛犬

LINEに送られてきた君の動画
まんまるな目に映る光をキラキラさせてこっちを見ている

私以外に誰もいない一人暮らしのこの部屋
スマホ越しに届く君の声は、部屋と私の身体をふるわせる

最後に会ったのはいつだったかな
思い出せば、つい2週間前

そんなに最近のことだったかな
とても前のことに感じるよ

君の動画が届いた朝
体も心もとたんに飛び起きて、元気になるのが分かるんだ
いきたくなかった仕事も、

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はぐるま

はぐるま

歯車は力を伝える道具だ。
一点にかけられた力を分割したり、方向を変えたりする。
受けた力を繊細に次へ次へと伝えていく。

歯車はいろんな個性を持つモノが集まって働く。
大きいモノも、小さいモノも。歯の形だって様々だ。
それぞれが、かみあって力は伝わる。
同じ形の歯車ばかりでは、仕事は進まない。

歯車は繊細だ。
繊細に力を伝えていくけれど、歯車自身だって繊細だ。
自分が仕事を完了するのに必要不可欠

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[詩]ハートをください。

[詩]ハートをください。

『私のハートをあげるから、君のハートを私にちょうだい』

君にそう言われたけれど、こんなハート本当にいるの?

見るからにボロボロで、砕け散りそうなこのハート。
丸い形はしてるけど、鮮やかな色では決してないの。

同じトコロで戦って、同じトコロで飯くった、
君にだけは見せたくない。

『私のハートをあげるから、君のハートを私にちょうだい』

君にそう言えるほど、私のハートは形を変えた。

見るから

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金曜日の足音

金曜日の足音

金曜日。

午後19時20分。

会社の扉を閉め足音をコツコツならす。

コツ、コツ、コツ、コツ。

疲れた。今日も頑張ったな。私。
なぐさめと反省が混じる。

会社が見えなくなる頃、私はたった今生み出されたかのような開放感に襲われる。

コツコツコツコツ。

だんだん気持にもクレシェンドが生まれだす。
あぁ、今週は終わったのだと。

コッコッコッ、コッコッコッ。

足がならす音はだんだん早くなっ

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幸せだと彼女は思う

幸せだと彼女は思う

彼女は幸せだった。

自分がお腹いっぱいで、呼吸の圧迫でさえ苦しいと感じる現実に。
美味しい肉と魚を頂けた過去に。

パンパンになった腹をさすり、なにかが戻ってきそうな喉を固く閉じ、ちょうどよい固さのベッドに横たわる。

彼女は幸せだった。

満腹から来る心地よい眠けに抗わなくても良い今に。
ヒーリングミュージックに頼らなくても良い今日に。

枕元におかれた携帯電話を弄る日課。友人からのささいなメ

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馴染み道

馴染み道

同じ道を行き、同じ道を帰す。
出来上がるのは、私の馴染み道。

毎日歩く道、
景色はいつも一緒で目新しさはないけれど、
心地よさは日に日に増す。

集団で登下校した小学校への道。
自転車で駆け抜けた中学校への道。

今はもう毎日通る道ではなくなったけれど、
たまに通る私の馴染み道。
不思議かな、懐かしさが気持ちいい。

今は今の道を毎日歩く。
初めはドキドキしながら歩いたけれど、
もう、ドキドキな

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