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【短編小説】赤い月は見ていた 第一夜
第一夜 ラッパと挫折
「トランペットをお返しします」
まるで自身とは別人の鈍感な女を演じ、精一杯の明るい声で言う。
断ることが苦手だった。そこが弱点だと自分でもよく分かっている。
それでも明日、42回目の誕生日を迎える前にこうして肩の荷を降ろすことができた。自分の行動の後始末を自分で出来たのだから、もう上出来ではないか。
慣れないことをしたせいで酷く頭痛がしている。脳と連動しているのか疲
プレイバック part3.
生まれ育った街で生きてゆくということは、過去の自分と向き合うことでもある。
古い縁と新しい出会いが混ざり合う新しい人生が動き出した。
真っ直ぐな赤でも明るいオレンジでもない。
誰にも媚びることのない、覚悟のルージュを手に入れた。
この色で秋へとシフトチェンジ。
No.405 “Playback”
Spark joy.
伸び放題のガジュマルの枝を、まだ一度も剪れないでいる。
多くのものを持ち過ぎていた。バランスを崩し、立ち止まってみてようやく気付く。
新しいことを始める前に身辺整理が必要だと感じているけれど、何を残して何を手放すかの選択ができずにいる。そのどれもが大切に築き上げてきた自分の一部と信じているのだから、手強い作業となることは火を見るよりも明らか。得るよりも手放すことの方がずっと勇気がいる挑戦のようだ