橘美花
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祖母のいた年末は賑やかで忙しい 炬燵にストーブ 餅つきの準備 毎日誰かがやって来る この頃になると 決まって飾られていた白い花 控え目な姿からは想像もつかない 強い香りは祖母の存在そのもの 思えば、 もうずっとあの香りを嗅いでいない 彼女は水仙が好きだったのかな 私はどうだったのだろうか 水仙と、祖母を好きだったかどうかも ぼんやり霞んだ遠い記憶 今年は水仙を飾ってみようか 懐かしい香りは一瞬にして 私をあの頃へと連れ戻す 喜びも涙もしまいこんだ宝箱 その鍵でひらい
川沿いに並ぶ華やかな桜に夢中で みんな上ばかりみている 足もとのアスファルトと石畳の ほんのちょっとの隙間に 誰にも気付かれなくても良いと 小さな花が咲くのを見つけて ようやく春が来たと喜ぶ そんな私に気付いてくれる人と 一緒に歩きたいと思う
口を開けば刺のある言葉が零れてしまう 悲しき家族の病 じゃがいもとバターと牛乳だけ 栄養素なんか無視した ただ優しさだけのおかずをつくるのは 言えないごめんねの代わりだったりする そんな不器用な表現に どれだけの人が気付いているのか
金澤詩人倶楽部様主催の2023年度金澤詩人賞に入選した2篇を掲載いたします。 どちらも一年前の今頃に自然と生まれた思い入れのあるものです。 どのような形で表に出すべきか悩みましたが、 良い機会なのでnoteで公開することにしました。 この度は数多くの作品の中から選んでいただきありがとうございます。 本当のことを話そう 春は別れの季節 だから本当は、 訪れのよろこびよりも 寂しさのほうが大きい 新しい場所への期待よりも 不安のほうを強く感じる 日差しのあたたかさより
金澤詩人倶楽部様主催の2023年度金澤詩人賞に入選した2篇を掲載いたします。 どちらも一年前の今頃に自然と生まれた思い入れのあるものです。 どのような形で表に出すべきか悩みましたが、 良い機会なのでnoteで公開することにしました。 なお、こちらはローマ字ver.もあわせてお楽しみいただけたらと思います。 この度は数多くの作品の中から選んでいただきありがとうございます。 椿の涙 桜が咲くと 椿が落ちる そろそろ自分の番は終わりと気付くのか 山の階段を彩る絨毯となって
第二夜 丈くらべ トラウザーの丈は、誰の身体を基準にして考えられているのだろう。 試着室用に置いてあるハイヒールはどう見てもまともに歩けるようなものではなかったけれど、せっかくだから足を入れてみる。すると鏡の向こう側に、理想的なラインの女性が現れた。その美しい形は想像以上で、自分に嘘をついているような後ろめたい気持ちになって思わず目を逸らした。裾を上げれば当然、失ってしまうものがある。身体に服を合わせるのか、服に合わせて靴を選ぶか。ヒールの高さとカットする生地、その我慢の
第一夜 ラッパと挫折 「トランペットをお返しします」 まるで自身とは別人の鈍感な女を演じ、精一杯の明るい声で言う。 断ることが苦手だった。そこが弱点だと自分でもよく分かっている。 それでも明日、42回目の誕生日を迎える前にこうして肩の荷を降ろすことができた。自分の行動の後始末を自分で出来たのだから、もう上出来ではないか。 慣れないことをしたせいで酷く頭痛がしている。脳と連動しているのか疲れが眼にもきていた。終わってしまえば身体も心も楽になると踏んでいたからこれは想定
無印で竹のストローを買おうとしたら、炭酸には使わないで、と書かれていた。 その後立ち寄ったカフェでオーダーした、すだちソーダのストローは麦。 プラスチックは日本ではほとんどリサイクルされていないという記事を読んで、やっぱり、と溜め息。事実を知らなければ消費のその先を想像することもできない。 初めて書いた短編小説の世界からまだ抜け出せず…実質5日ぐらいで書き上げた荒削りな仕上がり。でも、きっとこれが最初で最後。いろんな意味でやってみてよかったと思う。 ・ 。 ゜ 木地師の彼
生まれ育った街で生きてゆくということは、過去の自分と向き合うことでもある。 古い縁と新しい出会いが混ざり合う新しい人生が動き出した。 真っ直ぐな赤でも明るいオレンジでもない。 誰にも媚びることのない、覚悟のルージュを手に入れた。 この色で秋へとシフトチェンジ。 No.405 “Playback”
珊瑚に続き、パールが長い眠りから目を覚ます。 粒が大きくて持て余していた冠婚葬祭用のネックレスも、白シャツの内側から覗かせてみると目立ち過ぎることもなく淡い光を放って肌にフィルターをかけてくれる。海のパワーを借りて、女性はもう一度美しく輝くことができるようです。 去年着ていたTシャツが、今年は似合わないように感じてしまう。そんな変化も、前向きに楽しんでいきたい。
伸び放題のガジュマルの枝を、まだ一度も剪れないでいる。 多くのものを持ち過ぎていた。バランスを崩し、立ち止まってみてようやく気付く。 新しいことを始める前に身辺整理が必要だと感じているけれど、何を残して何を手放すかの選択ができずにいる。そのどれもが大切に築き上げてきた自分の一部と信じているのだから、手強い作業となることは火を見るよりも明らか。得るよりも手放すことの方がずっと勇気がいる挑戦のようだ。 そんなことを考えていると、ふと思い出した整理収納アドバイザーの言葉。いつでも
saigo made 最後まで、をローマ字にするとこうなる 気付いてしまってひとりはしゃいでる ・ 思い立ったが吉日 いそいそとPCをひらいて 以前書いた椿の詩を早速ローマ字にしてみた スペースを細かく挟まないと かえって意味が伝わりにくいような気が なんかこういうこと、高校の国語でやったような… あれは一体何の勉強だったっけ 日本語の音の難しさ、 言い換えると奥深さを感じられたので やってみて良かった でも小学校でローマ字教えるのは懐疑的です
プロローグ きっと誰にでも、心から愛した人との大切な記憶がある。例えその結末が、幼い頃に読んでもらったお伽噺や、あるいは期待を裏切らないドラマのようなかたちをしていなかったとしても。 ゆっくりと記憶のなかの川を遡る。出会った瞬間の感情を、今も鮮明に思い出すことができた。 始まりは今から5年前、2018年の9月。当時勤めていた会社が運営する情報サイトで、全国各地のものづくりに関する記事を担当することになった。その最後の取材先として初めて訪れた福井県鯖江市。こ
朝、コーヒーを淹れる。 職場へ向かう。 まずはコーヒーを淹れる。 昼休みが終わる。 とりあえずコーヒーを淹れる。 あと少しで今日の仕事が終わる。 ほっとしてコーヒーを淹れる。 ・ まだ二十代の頃、夜の食事処 後から入ってきた異国の親子は 禁煙じゃないとわかりすぐに出ていった 欧米は進んでいるなと感じたのを憶えている それが今はもう目にすることもなくなった 煙草で一服する人の姿 うちの子たちは煙草の煙が どんな匂いなのかをきっと知らない 代わってコーヒー消費者相当増えた
なかなか花を買うことができないので もう諦めて見て楽しむことにする 結局どんなに着飾ってみても 花の麗しさには敵うはずもなく それでも綺麗になりたいと思うのは 君は薔薇より美しい、と言ってほしいから 疲れたしケーキ買って帰ろうかな 思考が花から甘いものへ移ったのは 帰り際にばら印の砂糖を見てしまったせい 薔薇でお腹いっぱいって言ってたはずなのに… 安心してください ケーキ屋さん定休日でした
増永眼鏡✕SHOW-GO YouTubeにあがってきた動画の衝撃… SHOW-GO大好きなのに全然知らなかった 自称めがね大使として恥ずかしいです 我慢できずに雰囲気真似してみたけど ビートボックスはさすがに無理でした 欲を言えば、 私も撮影に参加したかった~