【短編小説】赤い月は見ていた 第二夜
第二夜 丈くらべ
トラウザーの丈は、誰の身体を基準にして考えられているのだろう。
試着室用に置いてあるハイヒールはどう見てもまともに歩けるようなものではなかったけれど、せっかくだから足を入れてみる。すると鏡の向こう側に、理想的なラインの女性が現れた。その美しい形は想像以上で、自分に嘘をついているような後ろめたい気持ちになって思わず目を逸らした。裾を上げれば当然、失ってしまうものがある。身体に服を合わせるのか、服に合わせて靴を選ぶか。ヒールの高さとカットする生地、その我慢の