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詞たち、あるいは詩

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心から出でたる確固とは表すことに難あると存ずれば、斯くのたまいたりているのも一興かと思ひて書きつくるものなり。けっして中二病にはあらじ。
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記事一覧

理不尽なのは

ピーマンの肉詰めに対し
ピーマン無しを希望したら
拳骨を喰らった

茄子無し豆腐トッピングを
麻婆茄子にリクエストしたら
アイアンクロー

ご飯に出される予定のおかず
あんまり食べたくないもの
やや嫌いに属するそれを
回避しようとしただけなのに

ご飯に出される予定のおかず
積極的に食べたくないもの
残してしまいかねないそれを
回避しようとしただけなのに

あなたの幸せを願いたい

よそ行き仕立ての顔をしてあなたと会った日は哀しみに包まれた

自分の選択を悔やんでも遅く
涙でふやけた心が重く重く意地悪なまでに自らを苛んだ

私ではあなたを笑顔に出来ぬと思ってしまった時から分かっていたことだった

自らの想いを縛り付けて奥底へと奥底へとしまいこんだのは私だというのに

よそ行き仕立ての顔をして
自らを偽っていたのは私自身だというのに

後悔することを覚悟してすらいたのにあっさり

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やさしいうた

やさしい声をかけて
やさしい顔を浮かべ
やさしい手で触れて
やさしい目で見つめ

それだけのことが私には眩しく
それだけのことが私には悲しく
それだけのことを私にする価値
それだけのことを私にする必要

理解出来ず
理解せず
理解しようともせず
理解させず

回りまわって
遠回りして
近道して
とどまって

回りまわって
遠回りして
近道して
とどまって

交換

私が与えられるものは
滴る甘い蜜
かぐわしい吐息
纏わりつく肌
けぶるような声
蠱惑さを秘めた笑み

私が欲するものは
ほど良い大きさの棒
ぬめりつくような舌
優しく触れてくる唇
仄かに温かい掌

セピアティック

セピアティック

寂れたこの街に 手を延ばし
歩んでいこう 二人きり
いついつまでも 二人きり

くすんだ街灯が照らし出す
建物は淀んだ笑顔を浮かべ
ひしめく喧騒は過去となり
まばらな人影は寂寥を際立たせる
理想と現実のせめぎ合いを
長い時が空虚なものへと移し変え
灰色じみた風景画の様な
景色を押し付けて佇む

重ねた掌にだけ 熱を感じ
進んで行くだろう 私と君
ゆるゆるりと 私と君

想い

想い

息苦しい中でもがきながら
重苦しい中であがきながら
溺れそうになって必死で
掻き分けて進んで

それでも足りないと云うのか
それでも足りないと云うのか

全て吾のせい
全て吾のせい

そんな世情を
そんな社会を

未来に引き継ごうと云うのか?
理想的な世と後世へ謳うのか?

うつしよ

うつしよ

震え続ける心を奮い起たせ
怯え続ける心を押さえ付け
私は歩いた

走る気力も体力もなく
立ち止まる勇気も根気もなく
私は歩いた

のしかかる重みにふらふらと
立ち塞がる厚によろめきながら
私は歩いた

私は歩いた

影のやまい

影のやまい

姿見に映る己の虚像に
溜め息を吐いては俯き
恐る恐る顔に触れ
怖々と鏡に触れるが
どちらも固く冷たく
温かみの無い感触をもたらす

膝を付いて虚空をぼんやりと見つめて
崩れ落ちるように床に横たわり
ただ呼吸だけをした

思考は邪魔で感情は不要で
ただただ呼吸だけをした

苦しみを押し付けるもの

苦しみを押し付けるもの

諦めて諦めて諦めて
これまで何回諦めてきたことだろう

諦めて諦めて諦めて
これから何回諦めることになるのだろう

空気を読みなさい
努力が足りません
運が無かったね
もっと主張しないと
まだまだ若いんだから
年上なんだから

諦めて諦めされて
それが当然のことの様にされる
諦めされて諦めて
それが当然のことの様にされる

私は苦しみ叫んでいると言うのに
私が項垂れ力尽きていると言うのに

歩んできたもの

歩んできたもの

何をしても止まらない
何をしても届かない
私の腕は伸ばされたまま
私の腕は伸びたまま

努力をしても叶えられぬものだらけで
頑張っても何者にもなれぬままで
私は見上げることを止めた
私は俯いたまま進んだ

日の光は鮮烈過ぎて
月の光は優し過ぎて
薄闇は心地好く
薄光は心地悪く
私を戸惑わせる
私を炙り出す

笑顔などどう浮かべれば良いのか忘れた私は
当然、あいそ笑いなど出来ず
疲れたような無表情だ

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風見鶏

風見鶏

風見鶏は回る
風に唆され
風に惑わされ
風に踊らされ

風見鶏は回る
誰にも知られず
誰にも期待されず
誰にも憶えられず

ただいるだけ
ただ回るだけ

風見鶏が回り
風見鶏が揺れ
風見鶏が止まる

朽ち果てるまで
壊されるまで

くるくると回り続ける
くるくると回り続ける

当て所もなく
風見鶏は回る

昼明け

昼明け

 不意に窓を見ると茜色に染まった雲が浮かんでいた。
 戸惑った顔で空を見ているだけなのに哀しくなる。
 茜日は崩れ落ちるように身を横たえて濃紺の幕が覆い包んでいく。
 包まれる安心感を羨ましく思ってそっとため息を吐いた。
 画鋲の様に星は夜幕を空に差し止め始めその数を増やしていく。
 集い離れを繰り返しては心を消耗させるばかりの日々。
 茜日を探し求める様に月は幕の上をゆっくりと独り通り過ぎる。

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実状

実状

ハラハラと落ちていく落ちていく
ハラハラと落ちていく落ちていく
伸ばした手は
何もつかめず誰もつかまず
伸ばした手は
何も触れず誰も触らず
ただただゆっくりと
ただただしっかりと
無慈悲に為す術なく
省みられることなどなく
ハラハラと落ちていく落ちていく
ハラハラと落ちていく落ちていく

誓い

誓い

私は行こう
私のペースで行こう
騙されても
脅されても

私は行く
私のペースで行く
唾棄されても
踊らされても

それしか出来ないから
それに縋るしかないから
それだけしか持たないから

希望など叶わず努力など報われぬと世界がささやいている
絶望し何も為さぬまま生を終えろと世間は声をあげている

足取りは重く
ただ進むだけしか出来ない
傷付いた心を抱えて
ただ進むだけしか出来ない

何処へ向かっ

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