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感情のエッセイ

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#介護

どうしようもない夜

どうしようもない夜

ケアマネ試験合格発表の日。酔いつぶれて朝を迎え、肝臓の苦しそうな声を遠くに聞きながら夜となった。祝勝会を求め、夫婦でちょっといい居酒屋にいった。

いつもなら最初の一杯はビールなのだけど、なんだか気分じゃなくてのっけから日本酒を頼んだ。日高見という、宮城のお酒だった。
お通しはポテトサラダ。水分多めのしっとりとした仕上がりのなかに、熱の通しすぎない玉ねぎの程よい食感。わけあって肝臓以上に悲鳴をあげ

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嫌いなままでいさせてくれよ

嫌いなままでいさせてくれよ

介護士は別に優しくない。端から見ればその職についているだけでという感じだけど、当事者に言わせればむしろ冷たくないとできない仕事だと思う。僕のような施設勤務の人は、特に。

なにせ老人というのは弱っていく。
まるで花が枯れるような速度で、昨日のあの人が過去になっていく。
歩けていた人が歩けなくなり、覚えていたことを忘れ、我慢できていたことが我慢できなくなる。

それを目の当たりにしながら、他人事だと

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あなたとわたしであるように。

あなたとわたしであるように。

何事にも初心というものがある。介護職についてもう9年近くなるけど、あの頃と今では想いの色や形は変わってしまっている。

入職前に通る資格講習の中で、介護士の卵たちは暖かく理想的な理念を叩き込まれるもので、僕も例に漏れなかった。

「どれだけ認知症がすすもうが、感情は残る」「何も言わず、表情が変わらなくても、その老人は感じている」

「どんな姿になろうが、彼らは人間だ」

この教育のもと、卵は現

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嫌いじゃないよ

嫌いじゃないよ

介護業界は離職者が多い。
単純なことじゃなくて、色々な要素が組み合わさって、人材の水漏れを止められずにいる。

僕が働く会社も同じく、漏れてしまっていた。時折穴が広がってドバっと溢れることもあったけど、管理者達が一生懸命修理して、気づけば「水が漏れることもあったねぇ」と思い出話をできるほどになっている。

しかし、ここにきてまた大きな穴が開いた。

もはや水道管ごと折れたんじゃないかと思える

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介護職の何が辛いのか。

介護職の何が辛いのか。

20歳の頃から、もう8年ほど介護の仕事を続けている。気が長いということが武器になる世界。僕が向いている数少ない仕事だと自覚している。

辛くて仕方ない時期もあったけど、なんだかんだ楽しくやれていると思う。

この仕事をしていると、「大変な仕事をされていて偉い」そんな評価を受けることが多い。でも、定時にしっかり終わるし、週休2日は確保されてるし、人並みの生活ができる程度には給料もあたる。世間様が思う

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