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嫌いじゃないよ

介護業界は離職者が多い。
単純なことじゃなくて、色々な要素が組み合わさって、人材の水漏れを止められずにいる。

僕が働く会社も同じく、漏れてしまっていた。時折穴が広がってドバっと溢れることもあったけど、管理者達が一生懸命修理して、気づけば「水が漏れることもあったねぇ」と思い出話をできるほどになっている。

しかし、ここにきてまた大きな穴が開いた。

もはや水道管ごと折れたんじゃないかと思えるほどの、人材の流出が起きた。今回のことで、社長と管理者の寿命は5年ほど縮まったんじゃないかと思うくらいだ。

事件の内容は詳しく書けないが、地味だけど色の悪い「いざこざ」が起きて、結果多数の職員が辞めることになったのだ。

始まりはその中の一人を、もう一人が嫌いになったことだった。
僕は一部始終を見つめながら「あぁ、もう嫌いになってしまって、どうしようもないんだなぁ」と感じていた。嫌われた人の悪い部分は僕も重々承知しているけど、完全に「悪者」をみる眼鏡がかかってしまっているようだった。

僕はなんだか居心地が悪くって、そして悲しかった。

身勝手な退職に苛立つ管理者達や、標的となった退職者を攻める声、一方の退職者だけを庇う職員。その全ての間に立つ僕。

悲しかった。

だって、僕は今いる人も、今回辞めちゃう人も、みんな嫌いじゃない。
嫌なとこはあるし、嫌な思いもしてきたけど、良いとこだってあるし、たくさん笑いあってもきた。
ずっと、一緒にやってきた。

影でどんな風に悪口を言ったり言われたりされてようが、助け合いながら笑って仕事をしてきたんだ。
あの人の笑顔も、あの人の笑顔も、あの人の笑顔も、僕は全部覚えてるし、思い出に残ってる。

介護の仕事をしていたら、爺ちゃん婆ちゃんに苛立つことは多い。特に夜勤なんてしていたら、消えてくれと願うことだってある。
でも、朝になってその婆ちゃんが「おはよう」と笑顔で挨拶してきたら、僕は「あぁ、嫌いじゃないなぁ」って感じる。

そう、嫌いじゃないんだ。みんな、嫌いじゃない。

決して大好きじゃないけれど、情がある。
浅いかもしれないけれど、情がある。

それなのに嫌い嫌われ、辞めていってしまう。
僕の側から、流れていってしまう。

せめて、その水を濁ったように扱わないでほしい。
濁っているとしても、そこには苦労の汗や、涙や、思い出が溶け込んでいるんだから。

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