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無題

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随想あれこれ。その時感じたこと、考えたことの集まり。 物思いに耽るとき、何を片手にしていますか?私はだいたい白湯かそば茶です。
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#眠れない夜に

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ベビィパウダーに木綿のTシャツを抱いて、べたついた朝の身体は呼吸をした。陽は柔く、湿った空気をまとったベッドシーツの温さが、嫌な気持ちを呼び起こす。蔓の伸びた知らない葉っぱが、頬に手を伸ばしては撫で、時に傷口とへ入っていく。
いくら優しい涙だからといって、それが美しく見えたところで、湿った傷口にあたればつんざくような痛みを生じさせ、陽の光に当たってはその痕を色濃く残すことになるのだった。
自分の肩

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すべてのものが大きく見える夜、床はとても近く、天井は気が遠くなるほど上の方にあった。羽虫が指先を這っている。その羽を毟って、自分の指に取り付けてやってもまだ指は重く、そこで停滞しては、嫌な気持ちになるようなことをぶつぶつと呟くほかには、碌に何もしようとしないのであった。
3つの体に、それぞれ何度か接吻をした時、それらはプラスチック製の容れ物として海を漂い、塩辛い水を厭というほど飲んで、その苦しさに

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海の中で、逃げる光を掴もうとする。切り開いたような目の縁に、金魚鉢で共食いする金魚、横笛、青い葉っぱ。美しいもの、美しくないもの。それらはその肩甲骨を上げ下げして、舐めたことのない白い唇に、同じような石ころを詰め込んで、その水溜りの底深く突き落とすようなこと。
あるいは、挨拶をしない大きな鮫のようなもの。その鱗のかがやき。聖書の文字が透けて見えるパイ生地で、りんごだかざくろだか、金魚だか、さくらん

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世のため、人のため、自分のため。
洗いざらしのデニム、新しいピアス、お下がりのミリタリージャケット。
天気は晴れ!朝の愛撫に粟立つ肌、ツンとなる鼻、隣の人のマフラーが擦れたり、すれ違うトイ・プードルと目が合ったり。そんな風に素直でいなきゃいけない。
自分の直感、したいこと、好きなもの、居心地の良いところ、信じるもの、美味しいもの、会いたい人。
ピンクのチューリップ、1ダースのドーナツ、固めのカヌレ

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すごく煌めき深い思い出があった場所、いけないと思いながらもつい立ち寄って眺めたら、とんでもない悲しさでいっぱいになった。
思い出は大抵、思い出すという動作と一緒にあるのに、どのように思い出すか/どういったものを思い出すのかは、自分の意思ではコントロールできないのが悲しい。

白いコンバース、ブランドロゴのガラス窓、土砂降り、不愉快な湿気、愉快なネオン、何でも出来そうな気持ち、濡れたアスファルト、街

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確実に秋はそこまで来ている。
日が落ちると風が冷たいのが居心地が良いので、ずっとこの感じが続けばいいなと思う。肌寒いくらいのときにするお喋りは自然とポエミィになりがちではあるものの、古い自転車のブレーキ音とかスケボー少年たちのガタガタいう音とかがそうはさせまいとしてくるのが都会の強さかも知れない。
都会的なところより、中途半端な自然の中のほうが私としては絶妙に落ち着いているが、世の中から隠れている

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庭にカナヘビと蜻蛉が2匹。塀の上と周りで走り回っているのを見ているといつの間にやら蜂がやって来て、チョウチョが飛んでいる。アイビーの葉脈が日光に透けたのを眺めながら、ゆっくりお白湯を飲む。

背骨を丸めて膝を抱えながら、ぎゅっと抱き締めると落ち着くし、自分がしっかりと自分のことを守っている感じがするけど、膝を見つめていると、そのときが大抵苦しいときだということを思い出させる。
忘れる作業はいつも思

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閉じ込めておきたいようなものを閉じ込めておいて、苦しくなることはよくあるけれど、そういうときに一番困るのは前にもそんなようなことがあったはずなのに、その時どうしていたかちょっとも思い出せないことだ。

今とても困っている。できることとしたいことの間に私がいて、世の中でやっていけそうなことと、上手くできない部分の向こう側にあなたがいて、その間を大きい鯉とかナマズみたいな魚が飛び跳ねながら泳いでいる。

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目が覚めて気分が良いというのは素晴らしいことで、例えこの上なくお腹が空いていたり、気持ちの中にどこか寂しさみたいな靄を抱えていたとしても、目覚めが良ければ大体のことはなんとかなるのだ。
それには意味のない夜更かしをしないとか、あまり食べすぎないとか、暗いニュースから離れるとか、暖かくして眠るとか、充実した夜更かしをするとか、細々としたことがとても重要になってくる。なかなかこうしようと思って上手くい

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閉じ込めておきたい気持ちと、見せびらかしたい気持ちがある。前者は誰かを好きになったり、いろいろな世の中の物事に不安になったり、そういうこと。後者はエキセントリックな部分とか、生き生きしているとか、どちらかというと自分がそうでありたいなと思うことから滲んでいる。

今はあんまり頭の中に雑多なものはなくて、意外にすっきりしているんだけど、今日も長いこと湯船に浸かったし、少しお酒も入ったのでまたもやおセ

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今日は雨が降っている夜で、とっても気分がいいです。

母が眼鏡を外しながら私の顔を見て、ふふふと笑う。

そういうとき、私は今日見た景色と、これから見たい景色を思い浮かべている。空いている電車、ブティックのディスプレイ、同級生の顔、知らない湖、蝉の抜け殻、白い足、艶のある頬っぺた。

今はハイヒールに疲れた足と少し余計な肉のついたお尻をタオルケットに包み、ざらざらした音で眠りにつくところ。

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半端でツヤツヤしたお月様が出ていたので写真に撮ろうとしたら、案の定遠くの白い星か、できたばかりの胎児のようなぼんやりした光にしかならない。

それで湯船に浸かりながら頬杖をついて、あれこれ考えたり悩んだりふふふと笑ったり歌ったりしていた。入浴剤入れればよかったな。マンドポップを流しながら楽しい出来事を思い浮かべたらちょっと寂しくなった。頭の中でカレンダーを広げて、一つずつ赤いペンでチェックを入れる

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パソコンが発する微熱、ベビーパウダーの甘ったるい香り。
非常に居心地の良い居心地の悪さみたいなものがずっと頭の中にあって、こびりつく、というよりはもやがかかったようなそんな感じがしている。後ろ向きみたいな前向きで、そんなに高くない温度の揺めきがこのへんをうろうろしては時々思い出したみたいにちょっかいをかけてくるのだ。
でもそれ以外はなんてことない。カプースチンを弾く肘がいつもより揺れるだけ。ペダル

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毎日雨の音の中で眠りにつくか、あるいは目覚めていたのが急になくなって淋しい。だからちょっと(いつもよりも)おセンチな感じで眠りにつこうとしている。

部屋で聞く弱い雨だれでとても落ち着くし、物言わぬ友人が近くにいるようなそんな気がしていた。
明日からはエネルギーに溢れた日差しが窓から入ってくる。私には眩しい。今はまだ、小さくて薄暗い、安全な自分の部屋の中でちょっとした幸せに頬を緩める日が続けばいい

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