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115.【異世界:深い穴と見知らぬ場所の『な行』な人達】

ある日の夢は……

両親と庭にいて、なぜか地面を掘ることになった。
シャベルで掘ろうとした瞬間、真下に大きな穴が空いて下へ落ちる映像が見えた。

ここを掘ったら穴が空く?

そう思って、少し離れた場所に移動。
今度は何にも気にせずシャベルを地面に突き刺してみた。

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シャベルが深く入ったと思ったら、さっき見えた映像と同じように地面に大きな穴が空いた。
そのままアタシは穴の中に落下。
穴は深いのか、どんどん下へ落ちていく。

あの映画でもこんなシーンあったなぁ……。
夢でも下へ落ちたら痛いかな。死んじゃう?

そんなことを考えられるくらい長い時間落ちていた。
でも、どうにか一番下まで落下。
柔らかい土の上に落ちたのか、あまり痛くはなかった。
土の冷たく湿った感じが手から伝わってくる。

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上を見上げると、さっき空いた大きな穴らしき場所が小さく光っていた。

座ったまま周りを見渡してみると、土の中ではなく建物の中に見える。
立ち上がって手や服についた土を払ってから、もう一度周りをよく見てみると、小さなキッチンと和室のような部屋があった。

こんな深い場所に家?

でも、廃墟なのか物は散乱しているし、窓は板やトタンのような物で塞がれていた。
隙間から入る青白い光が部屋の中を照らしている。

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その青白さを見た瞬間、アッチノ世界にある青い廃墟ビルの夢が浮かんだ。

このままここにいたら悪夢になりそう……。
早くここから出なきゃ。

出口はないかと部屋の中を探してみたけれど、どの窓も塞がれている。

どうしよ……どうしよ……

焦って頭を抱えていたら、転がっていた靴に目が留まった。
その先には玄関らしき扉。

「玄関!」

転びそうになりながら、アタシは急いで扉の方へ駆け寄った。
ドアノブを掴もうと思ったら、ドアノブが見当たらない。
ドアノブがありそうな場所は真っ平らになっていて、10センチぐらい間を空けてティッシュ箱みたいな四角い金属の箱が右側の壁に張り付いていた。

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カードキーとか?
この四角い箱に何かしないと扉が開かない?

よく見てみようと扉に軽く手をついた瞬間、ギィッという音を響かせながら、すんなりと扉が開いてしまった。
状況が飲み込めず、アタシは扉を開けたまま暫く突っ立っていた。

「開くんじゃん……」

我に返って外に出ると、左上に階段が見えた。

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数段駆け上がって ふと後ろを振り返ってみると、ちょうどアタシが出てきたであろう扉が閉まるところだった。
団地にありそうな金属製の青い扉。
右側にも同じ扉がもう一つあった。
扉の上には表札みたいな白いプレートが張り付いていた。
消えているのか、汚いだけなのか、ミミズのような字で何か書いてあるけど読めない。
近付いて見てみると、右側の扉は『佑』のような文字、左側の扉は『出口』のような文字に見える。

その時は「デグチさんって人が住んでいたのかな……」なんて思ったけど、単純に入り口・出口の出口だったのかもしれない……。

階段を上りきると、目の前には団地のような建物がたくさん建っていた。
自分が出てきた建物も同じに見える。

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アッチノ世界にある巨大団地とは全然違う。
現実でも家の近くに団地はあるけど、今いる場所は全く見覚えのない場所だった。
アタシは空を見上げてみた。
いつも目印にしていた夕焼けみたいなオレンジ色の空も見当たらない。

どこへ行こうか迷っていたら、少し先に通路のような道が何本か見える。
たくさんある団地の建物へ行き来する為の道だと思うけど、やたらと複雑に繋がっているようだった。

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あみだくじをするみたいに道と建物を見ていたら、いつの間にか一番近い通路の真ん中に人が立っていた。
近付いてみると、年配のおば様だった。

「すみませーん! あの、家に帰りたいんですけど、ここがどこだかわからなくて……教えてもらえませんか?」

小走りで近づきながら、こんな感じのことを聞いてみた。
いきなり声をかけたからか、おば様は驚いたような顔でアタシを見る。
少し首をかしげると……

「なぬぬぬ? ぬなな?」

そんなような言葉を発した。
最初、アタシの聞き間違いか方言かと思って、もう一度聞いてみた。
でも、やっぱり『な行』のような言葉で返される。
おば様が何を言っているのか全然わからない。
外国語とも違う気がする。
アタシもおば様も「ん?」とお互いに顔を見合わせて首をかしげてしまった。

「んーと……じゃあ、◯◯駅(自宅の最寄駅)はここから近いですか?」

質問を変えてみたけど、おば様は無言で小さく首を横に振った。
それは近くはないという意味なのか、アタシが何を言っているのか理解できないという意味なのか、それすらもわからなかった。

アタシはおば様にお礼を言って、奥に見える階段を下りてみることにした。

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階段を下りて道なりに歩いていると、だだっ広い場所に出た。

広場?

辺りをキョロキョロ見ながら歩いていたら、急に物凄く喉が乾いてきた。

何か飲み物……。
でも、お金持ってるかな。

いつも使っている小銭入れが頭に浮かんだ。
でも、なぜか探す気になれなかった。
そのまま歩いていたら、後ろの方で学校の鐘のような音が鳴り響いた。
振り返ると、どこからともなくたくさんの人がぞろぞろと歩いてきた。
みんな同じ制服を着ている。

高校生かな?
っていうか、ここは学校の校庭なの?

学生じゃないのに歩いていて大丈夫なのかドキドキしていたら、大人しそうな女の子が歩いてきた。
さっきのおば様の時と同じように声をかけたら無視されてしまった。
他の女の子にも声をかけてみたけど、また無視……。
というか、声をかけているのにアタシの顔も見ないし止まりもしない。

もしかして……見えないとか? まさかね。

そんなことを考えながら後ろを見ると、派手目な茶髪の太った男の子が歩いてきた。
時々、夢の中だと何かが外れたように何でも物怖じせずにやりたくなってしまう時がある。
アタシは男の子に近づくと、肩を掴むように抱きついてみた。

「すみませーん! 家に帰りたいんですけど、ここがどこだかわからなくてー。教えてくれませんかー? 何か飲み物を恵んでくれませんかー?」

うざったいテンションで聞いてみた。
ついでに余計なことも。
でも、やっぱり男の子も無反応だった。
手に持ったスマートフォンを見つめたまま、アタシを引きずるように止まることなく歩いていってしまう。
アタシは手を離して、去っていく男の子の後ろ姿を見つめた。
掴んだ肩のお肉の感触も制服の手触りも凄くリアル。
本当に夢なのか?と少し怖くなった。

みんなが歩いて行く先を見ると、大きな門が二つあった。
その手前に自動販売機のような物が見える。

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相変わらず喉が渇いていたので小走りで行くと、そこに置いてあったのは中が見えるタイプの自動販売機だった。
何を飲もうかと見てみたら、知らない飲み物ばかり。
パッケージを見ても、またミミズのような文字で書いてあって、何の飲み物なのかもわからない。
その中に緑茶のような色をしているボトルがあった。

あれだったら飲めそうかなぁ……。

悩んでいたら、いきなり男の子が割り込んできた。
カップルなのか隣には女の子もいた。
見えないからか、アタシのことは気にもせず会話をしている。
二人の会話もやっぱりさっきのおば様と同じ『な行』だった。
女の子が何かを言うと、男の子がポケットから財布を出して自動販売機にお金を入れた。
『220』と表示が出た。

一本、220円もするの?
220円だったら小銭入れにあるかな……。

なんて思っていたら、男の子が更にお金を入れて『720』に変わった。

えーっ、高すぎる……。

男の子が財布をしまうと、女の子が緑茶みたいなボトルのボタンを押した。
一本落ちたと思ったら、更にもう一本落ちた。

あー。二本分の値段なのね。
それでも一本、360円って高くない?

そんなことをアタシは一人で呟いていた。
カップルがいなくなって自動販売機を見てみたら、緑茶みたいなボトルが無くなっていた。

売り切れたかー。
でも、飲み物があんなに高いのなら、電車賃とかも高いかもしれないから我慢しよう。

そう思いながらアタシは門の外に出てみた。
門を出てすぐ目の前は、大きな道路が複数並んでいる大通りになっていた。
バスが通っているのか、バス停らしき場所に高校生たちが並んでいる。
門と道路の間には、やたらと幅の広い歩道がずっと先まで続いていた。

あのバスがどこへ行くのかもわからない。
駅を見つけた方がアッチノ世界の我が家に帰れるかもしれない……。

周りを見渡してみると、眩しい光が目に飛び込んできた。
道路の奥にあるパチンコ屋のような電気屋のようなお店がギラギラと光っていた。
辺りはもう暗くなり始めている。
いつもアッチノ世界の夢を見る時、暗い場所=悪夢になる……というパターンが多い。
そのせいか暗い場所にいると焦ってしまう。

それと、アタシはあまり電車に乗り慣れていない。
昔、手持ちのお金もなく、知り合いもいない知らない場所で終電に乗り遅れそうになったことがある。
携帯の充電も無くなりそうで、「このままだと野宿か?」とビビリなアタシは不安で冷静になれず、パニックになりかけた。
その時はどうにか終電に間に合って帰ることができたけど。
それ以来『終電』というものが恐怖になってしまった。

自分がどこにいるのかもわからない。
言葉も通じない。
相手に姿も見えない。
お金もない。
辺りは暗くなり始めている。
悪夢になる。
終電に間に合わないかもしれない。
早くしないと……
喉が渇く。

現実と夢の不安が溢れ出てきて、夢の中のアタシはパニックになりかけていた。

とにかく歩かなきゃ。
駅が見つかるかもしれない。

そう思って歩こうとしたら、足が痛くて歩きにくい。
足元を見てみると、なぜかパンプス用の靴下を二枚重ねて履いていた。
さっきまで普通に歩けていたのに。

また夢に邪魔されている?
このままじゃ歩けない。脱ごう……。

辺りを見渡すと、歩道に屋台が出ていた。
蛍光ピンクの派手な屋台。
その横にはベンチが置いてあって、人が一人座っていた。

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うーん。
人がいるけど誰にも見えてないならいいか。

急いでベンチに座って靴下を脱いでいたら……

「大丈夫ですか?」

突然、横から声がした。
通じる言葉で声をかけられたせいか、ビクッとアタシは大げさなぐらい驚いてしまった。
横を見ると、隣りに座っていた人がアタシの顔を見つめていた。
若い男の子。
よく見ると制服を着ている。

「何か困ってるんですか? 凄い不安そうだったので」

「えっと……家に帰りたいんですけど、ここがどこだかわからなくて」

「家はどこですか?」

「◯◯です」

もっと色々聞けばよかったのに、言葉が出なかった。
男の子はスマートフォンを取り出すと文字を入力してアタシに見せてくれた。

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路線図のように見えるけど、どうやって見たらいいのかわからなかった。

「ここはこの辺です。◯◯はここですね」

男の子が画面を指差しながら説明してくれた。
ちゃんと読める文字で書いてあったのに、焦っていたせいか自分の現在地の地名を全く見ていなかった。
ここが市内なのか、県内なのか、それとも全然遠い場所なのかわからない。

今いる場所は左上の方!
とにかく早く駅に行かなきゃ。

男の子に聞けばいいのに、それしか頭になかった。

「あの、もしよかったら何か食べませんか? そこの屋台、僕の父の店なんですよ」

男の子は屋台を軽く指差した。

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屋台を見ると、タイ人っぽいおじさんが満面の笑顔でこちらを見ていた。
おじさんと男の子の顔を見比べてみたら、確かに似ている。

「あー。 今、お金も時間もないのですみません……ありがとうございます」

そう言いながら立った瞬間、目が覚めた。


言葉が通じない夢は初めてで、夢だとわかっていても不安になる夢だった。
起きた後も喉が渇いていたから、喉の渇きは現実が影響していたらしい。
年配の女の人とは言葉が通じず、若い子には見えない。
それなのに、なぜあの男の子とは普通に会話ができたのか……
気になることがいっぱい。


そんな夢でした。


別サイト初回掲載日:2017年 04月14日

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