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119.【鐘の音:命がけのかくれんぼ】


ただただ状況を説明しているような書き方になってしまっています。
そしてちょっとグロテスクな部分もあるので、そういうのが苦手な方はお気をつけて。


ある日の夢は……

始まりは洋館の一室のような場所にいた。
アッチノ世界にあるカラクリ屋敷とも違う雰囲気。
窓は見当たらなくて薄暗い。
豆電球のようなオレンジ色の小さな光が部屋の中を照らしていた。

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縦長の部屋の中にはたくさんの家具があって、何かが通るのか通路を作るように家具が置かれている。
他にも人がいるのか、気配はするのに姿が見えない。
カサカサと物音が聴こえてくるだけ。

アタシは部屋の壁際に立っていた。
背後に扉が一つあって、部屋の反対側にも右端と左端に扉があるのが見える。
その真ん中に大きな振り子時計があった。

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時計の前や近くには不自然に家具が並べられていて、部屋にある三つの扉を繋げるような形でY字に通路が伸びていた。

振り子が揺れる音が部屋に響いている。
アタシはなんだかアミューズメント施設の中にいるような気分になった。
もっと部屋の中を見ようとした時、振り子時計の鐘が4回ぐらい鳴った。
少し経つと奥の右側の扉が勢いよく開いて、外からの光がスポットライトみたいに部屋の中に差し込んだ。
同時に光の奥から巨大な何かがゆっくりと入ってきた。

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夢だからか、薄暗いのによく見える。
部屋に入ってきたのは全身が木のような素材でできた人形だった。
昔の西洋の女性みたいな姿。
でも、全部木のような素材でできているから、肌も巻き毛も膨らんだスカートのドレスも全部茶色。

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カラクリ人形みたいに左右に首を振りながら、ゆっくり移動している。
それをボーッと見ていたら……

「早く隠れて! 早く!」

そう小声で叫んでいる声が聞こえた。

「そこで突っ立ってないで早く隠れてくれ!」

そう聞こえてアタシのことだと思った。
慌てたアタシは隠れられる場所を冷静に探せなくて、すぐ横にあった扉のないクローゼットみたいな場所に隠れた。

キコキコカタタタと人形が動く音と、オルゴールのような音も聴こえる。
音が近づいてきているのか、遠のいているのか、全然わからない。
どのくらい時間が経ったのか。
そんなことが気になり始めた頃、バタンと扉が閉まるような音がした。
同時にアタシの背後にあった扉がゆっくりと開いた。
その扉の奥も凄く明るい。

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「あー終わった」
「今回は焦ったなぁ」

そんなような声が聞こえてきたと思ったら、人形が消えていった方からぞろぞろと人が出てきた。
みんな開いた扉の中へ入っていく。
扉を閉められたら怖いので、アタシも急いで後についていった。
扉の奥はまた違う部屋に繋がっていた。
さっきの部屋と違って明るい。
部屋の広さはテニスコートぐらいありそうだった。
もう少し広いかもしれない。

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ここで生活しているのか、部屋の中央には大人数で使える大きなテーブル席とたくさんのベッドがあった。
キッチンや寛げそうなソファースペースもあって、ソファーにおじいさんと子供が座っている。

部屋の中には老若男女の人達が14~15人ぐらいいるようだった。
前に見た82.【実験と不気味なパレード】の夢を思い出す。
あの時も色んな年代の人達がいた。

誰もアタシに話しかけてこない。
この場所や人形みたいなやつのことを知りたくて、キッチンの前に集まっていた人達に近づいてみた。

「あの……」

アタシが声をかけると、みんな一斉にこちらを見た。

「あっ……あなた、さっきなかなか隠れなかった人だよね」

カウンターに寄りかかっていた女の人が最初に話しかけてくれた。

「隠れるってわからなくて。すみません」

「うんうん。みんな最初はそうだったから」

「みんな?」

「そうだよ。みんないつの間にかここにいて、一日の大半をこの部屋で過ごして、一日のどこかで時計の鐘が鳴るの」

「時計の鐘?」

「そう。さっきも鳴ってたでしょ? 始まる時は4回鳴る。鐘が鳴ったらあの部屋に隠れなきゃいけない。一日1回で終わる時もあれば数回の時もあるんだけど……」

周りの人達も頷きながら無言で女の人の話を聞いている。

「あの部屋に入ってきた人形みたいなのは何なんですか?」

「私達も人形って呼んでいるんだけど……みんなあれが何なのかわからないまま、隠れんぼみたいなことをずっとやらされているの。時々ね、隠れている最中にもう一度鐘の音が鳴る時があるから、人形が出入りする扉が閉まるまで油断しないでね。その鐘が鳴ると、終わらずに他の人形が現れるから」

淡々と話す女の人。

「……気をつけます。もし人形に見つかったらどうなるんですか?」

そう聞いた途端、周りにいた人達がザワッとなった。

「人形に見つかるとゾンビになる」

女の人が真顔で答えてくれた。
他の人は無言のまま。

「えっ、ゾンビ?」

「そう。何かに感染したみたいにおかしくなるの。それもスパイみたいに誰がゾンビになったのか、すぐにはわからない。突然おかしくなる」

「……おかしくなるとどうなるんですか?」

「私達に襲いかかってくる。だから、みんな武器になりそうな物を常に持っているんだよ」

そう言いながら女の人は自分の左側を指さした。
刃がむき出しのナイフがカウンターの上に置いてあった。

「あなたも何か持たないとね。あそこの箱に……」

女の人が部屋の右端に積まれている大きな箱を指さした時だった。
アタシと女の人を囲むように立っていたうちの一人が突然、女の人に向かって勢いよく腕を振り下ろした。
同時に床に赤い物が飛び散った。
顔を上げると、メガネをかけた小太りな男の人が白目を向いて震えていた。
手には女の人と同じナイフを痛そうなほど強く握りしめていた。

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「ゾンビだ!」

そう誰かが叫んだ瞬間、女の人が白目を向いた男の人のお腹を殴った……と思ったら、よく見ると男の人のお腹にナイフが刺さっている。
女の人は一歩下がると、お腹から突き出たナイフの柄の先を相撲の突っ張りみたいに手で力一杯押し込んだ。
あっという間の出来事。
まるでアクション映画を見ているような動きだった。

お腹を一突きされた男の人は口から血を吐いて、膝から崩れるように倒れた。
それを待っていたかのように、周りにいた人達が一斉に布とロープのような物で男の人を頭からぐるぐる巻きにしていく。
慣れているのかみんな手際がいい。

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それをボーッと見ていたら、視界の端に女の人が見えた。
痛そうな顔で手を押さえている。
よく見ると手の甲がぱっくり切れて血がたくさん出ていた。

「さっきやられたんですか? 血が……」

アタシが女の人に近付こうとした時だった。

「ダメッ!」

周りにいた全員がアタシに向かって叫んだ。

「ひっ……えっ?」

アタシは大袈裟に体をビクつかせて驚いていたと思う。
女の人は痛そうに顔を歪ませながら、アタシから少し離れた。

「他の参加者のケガを治療したらペナルティーがあるの。だから、私に触れちゃだめ」

周りの人もみんな頷く。
すると突然、時計の鐘が部屋に鳴り響いた。
4回。4回目が鳴り終わると、さっき隠れた部屋の扉が勢いよく開いた。
その瞬間、部屋にいた人達が一斉に最初の部屋に走って入っていく。

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「また始まった。私は大丈夫だから早くあの部屋に隠れて。人形が来ちゃう」

「でも……」

気になって動けずにいるアタシの服を誰かが引っ張った。
振り向くと、すぐ後ろに小さい男の子とおじいさんが立っていた。

「お姉ちゃん、早く行かなきゃ」

男の子はアタシの服をつまむように引っ張る。

「ここにいたらあの扉は閉まらない。みんなが危なくなるだけだ」

そう言いながら、おじいさんはさっき開いた扉の方を見た。
あの扉が閉まらなかったら、人形が入ってきて隠れんぼが終わらない?
みんなあの男の人みたいにゾンビになる?
そう思ったら怖くなって、アタシは女の人が気になりつつもおじいさん達と一緒に最初の部屋に向かった。

他の人達はもう隠れたのか姿は見えなかった。
ゾンビになった人を目の当たりにして、アタシは早く隠れなきゃと焦っていた。
最初に隠れた場所を見ると誰もいない。
ここでいいやと思って隠れようとした時だった。

「お姉ちゃんダメだよ。さっきもここに隠れたでしょ。2回はダメなんだよ」

男の子が早口で言った。

「え、そうなの? 」

「同じ場所に連続で隠れたら、またペナルティーなんだよ」

そう話すおじいさんの顔はとても不安そうだった。

「そうなんですか……。そうしたらどこに隠れよう」

あたりを見渡していると

「ここに星のマークがあるだろ? 隠れられる場所にはこれがあるんだ」

おじいさんは扉のないクローゼットの下を指差した。
見てみると、クローゼットの壁の下の方に黄色い星マークが3個あった。

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暗くすると光るシールみたいに薄っすら発光していた。
隠れられる目印なのか、床には両足揃えた足跡のマークまである。
クローゼットの中は二人分の足跡があった。

「場所によってこの星の数が違うんだよ。星が多い場所ほど人形に見つかりにくいようだ」

そうおじいさんが教えてくれた。

それを聞いて、さっきみんなが走っていたのは星の数が多い場所を確保するためだったんだ……と納得した。
ふと見たおじいさんの顔は相変わらず不安そうだった。

男の子はおじいさんが話し終わると、クローゼットの足跡の上に立ってこちらを見つめていた。

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隠れられないクローゼットをおじいさんに譲って、部屋の奥も見てみようかと思った時だった。
部屋にある振り子時計の鐘が鳴った。

アタシは慌ててあたりを見渡した。
よく見るとテーブルやベッドの下、キャビネットっぽい何かの扉の中、スタンドライトの内側に人が隠れているのが見える。

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でも、どれも脚が長すぎたり扉が閉まっていなかったり……
ちょっと普通じゃなくて、みんな体の一部が見えてしまっている。
スタンドライトの人なんて、ライトの傘の下にただ立っているだけ。
クローゼットも扉がないし、わざとそういう仕様なのかもしれない。

そんなことを考えていたら、部屋の奥の扉が勢いよく開いた。
クローゼットのすぐ横にある通路が扉からの光で明るく照らされた。
その通路を挟んだ反対側に星のマークがついたパーテーションのような物が見える。
星の数は1個。
急いで裏側を見てみると、床に足跡があった。
パーテーションの高さはアタシの腰ぐらいしかなくて、かなり低い。

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透かし彫りのような装飾がしてあって、パーテーションの意味を成していないほど大部分が彫られてしまっている。
とりあえず足跡の上でしゃがんでみても、アタシの顔半分が丸見え。
人形が入ってきたのか、オルゴールの音が聴こえてきた。

星は1個だし、顔も丸見えだし、絶対見つかるじゃんか……。

そんなことを思いながらパーテーション越しからクローゼットの方を見ると、おじいさんと男の子が拝むように両手を合わせてこちらを見ていた。

見つかったら何をされるんだろ。
あの二人もいつかは見つかっちゃうのかな……。

そう思ったら少し悲しいような不安のような、複雑な気持ちになった瞬間に目が覚めた。


そんな夢でした。

別サイト初回掲載日:2019年 02月08日
(夢を見たのは2018年12月)


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