120.【鐘の音:終わらない鬼ごっこ】
ある日の夢は……
アタシは寝ていたのか仰向けになっていた。
視界がボヤケていたのでボーッと見ていたら、ボロボロの天井が見えてきた。
同時に話し声が聞こえる。
首だけ動かして見てみると、すぐ側に男の人達が5~6人座っていた。
みんなサバイバル系のゲームや映画に出てきそうな物々しい格好と装備をしている。
怖い……。
そう思った瞬間、一番近くにいた人が突然こちらを振り向いた。
濃い顔の男の人。
ガッツリ目が合ってしまった。
「おっ、目が覚めたか」
そう言いながら近づいてくる。
アタシは慌てて体を起こした。
「ここは……」
「ここは教会だよ」
そう言われて改めて周りを見てみると、割れたステンドグラスや教会にありそうな長椅子が隅に寄せられて置いてあるのが見える。
空いた場所には、大きな箱がたくさん置いてあった。
その中に武器などの装備が入っているのか、男の人達が銃を選ぶように眺めていたり弾を込めているようだった。
「俺達がいるのは海に囲まれた小さな島なんだ」
「島?」
「そう。簡単に説明すると……この島では一日に数回、島中にあるスピーカーから鐘の音が流れる」
「鐘の音?」
男の人は頷いた。
「その鐘の音が鳴ると、放たれるのか引き寄せられるのかバケモノが現れる」
「バケモノ……?」
「見れば一目でわかるよ」
「じゃあ、そのバケモノをあの銃とかで倒すんですか?」
男の人は首を横に振った。
「バケモノに武器は効かない。バケモノが現れたら、とにかく走って逃げるんだ。絶対に触れるな。絶対にだ」
「絶対にって……触れたらどうなるんですか?」
そう聞いた途端、他の男の人達もみんなこちらを見た。
濃い顔の男の人も少し怖い顔をしている。
「触れたら俺達もバケモノになる。見た目は変わらない。でも、バケモノに触れた後、何かに乗り移られたみたいに気が触れて俺達に襲いかかってくる。だから、俺達は武装しているんだ」
その話を聞いている最中。
外から鐘の音が聴こえてきた。
学校でよく聴くようなチャイムの音。
その音が鳴り終わると、ステンドグラスの下にあった扉が勢いよく開いた。
頑丈そうな鉄の扉に見える。
「あの扉がまた閉じると始まる。続きは歩きながら話すから、まずは立って」
濃い顔の男の人が手で合図した。
大きな箱の前に行くと、箱の中から銃とナイフを手に取って手際よくアタシの体に取り付けた。
重みを感じた途端に怖くなった。
「こんなの持たされても使えないですよ……」
「この島にいたら嫌でも使いたくなるよ。どういう仕組みなのかわからないけど、俺達は死んだらまた生き返る。まるでゲームをリスタートしたみたいに、この島のどこかで目覚める。体も無傷だし、襲う側も殺される側もお互い記憶が残ったまま。バケモノから逃げて、捕まれば気が触れて、殺されても生き返る。それをずっと繰り返しているんだ」
そう言うと男の人はじっとアタシの顔を見つめてきた。
アタシは何にも言葉が出なくて、思わず箱の方へ目を逸らしてしまった。
中には食料や武器がたくさん入っていた。
全然状況を飲み込めないまま、みんなと一緒に教会の外に出た。
少し歩くと小さな家があった。
外から見てもわかるぐらいボロボロな家。
割れた窓から中を覗いてみると、教会にもあった大きな箱が一つだけ見える。
「この島には他にもいくつか建物があるんだけど、島民は一人もいないのか、どの建物もこんな風に廃墟なんだ。それなのに、あの箱の中身はいつの間にか補充されている。その瞬間をまだ誰も見たことがない」
話を聞きながらボロボロの家を見ていたら、教会でも見た頑丈そうな鉄の扉が目に入った。
扉は開いている。
「建物は廃墟なのに扉は頑丈そうなんですね」
男の人は開いている扉の見えていない側に立つと、アタシに向かって手招きをした。
「ここに星マークがあるだろ?」
男の人は扉を指さした。
見てみると黄色い星のマークが一つあった。
そのまま男の人は地面を指さした。
「ここには足のマークがあるんだけど。さっきの教会は星が三つ。ここは一つ。建物によって数が違うんだ」
そう男の人が言った瞬間、鉄の扉が勝手に閉まった。
ちょうど足のマークの上に星マークがあるような位置になった。
「始まったか。急いで説明する。この星の数で建物の安全度が変わる。星が多ければ物資も多いし、扉は長時間開かない。でも、同じ建物に入れるのは一日に一度だけ」
「一度だけ……。他の人と一緒に同じ場所に入ったりはできないんですか?」
すぐズルいことを考えてしまった。
「いや。何かで識別しているのか、一度入った奴が一緒にいると扉が開かないんだ。そうなると他の奴等も建物に入れなくなるから気をつけたほうがいい」
そう言われて、自分は建物をちゃんと見つけられるのか不安になった。
小さな島と言われても、どこに何があるのか全然わからない。
そんなことを考えている時だった。
「おいっ!出たぞ、逃げろ!」
そう誰かが叫んで振り向くと、数十メートルぐらい後ろにバッファローのような巨大な赤い生き物が道に立っていた。
「走れ!」
濃い顔の男の人に肩を押された瞬間、アタシは全速力で走った。
夢だからか怖いぐらい速く走れる。
「とにかく走れ! 止まるな! 建物を探せ!」
そう叫ぶ男の人の声が遠ざかっていく気がして振り向くと、いつの間にか通り過ぎていた横道を男の人がバケモノを引き連れて曲がって行ってしまった。
こんな状況じゃなかったら惚れちゃいそうなぐらい、格好良い去り方だった。
そんなことを思いながら周りを見ると、他の男の人達もいない。
アタシは半泣きになりながら、森に囲まれた道を一人で走った。
また鐘の音が鳴った……。
同時に猿のような鳴き声が聞こえてきた。
一匹じゃない。
たくさんの鳴き声が森のあちらこちらから聞こえてくる。
必死に走って走って、森が途切れて空が見えてきたと思ったら、目の前は海だった。
たくさんのバケモノがいるのに、この先にあるのは海。
アタシがおかしくなったら、あの人達にすぐに殺されちゃう。
でも、また生き返る……。
終わらない。逃げ続けなきゃいけない。
始まったばかりなのに、その恐怖感に耐えられなかった。
殺されて生き返るのなら、自分で死んだ場合はどうなる?
想定外で終わったりするんじゃ?
そう思ったアタシは夢だからか、躊躇わずに海に飛び込んだ。
入水自殺なんて経験したこともないのに、アタシは口の中の空気を吐き出して、海の水を飲み込むように喉を開いた。
実際そうできるものなのかもわからないけど、苦しさを感じる前に視界が真っ暗になった。
あー、ダメだった……。
気がついた瞬間すぐにそう思った。
目の前に見えるのは青い空。
背中には硬いコンクリートを感じる。
アタシは飛び込む寸前の場所に仰向けで倒れていた。
髪も服も全く濡れていない。
人魚のように上半身だけ起こして前を見たら、数十メートル先に砂利が敷かれた駐車場のような場所があった。
車が数台停まっている。
その奥にはアタシがさっき走っていた森なのか、木がたくさん見える。
ぼーっと見ていたら、また鐘の音が鳴り響いた。
同時に森の中から、細長い何かが突き出てきた。
ゆっくりと立ち上がったそれは、車4台分ぐらいを積み上げたような高さだった。
横幅も車と同じぐらい。
巨大なムカデが立っているように見える。
新しいバケモノだ……。
よく見ると、そのバケモノは長いブラウスとスカートを着ていて、頭も二つ結びにしているように見える。
まるで胴体が異様に長い女の人のような姿。
それに気がついた瞬間、ゾッとした。
同時にそのバケモノは意思や知能がありそうな、他のバケモノと何かが違う気がした。
あれはやばい……。
見つかる前に早く逃げなきゃ。
そう思ってあたふたしている途中で目が覚めた。
いつものように布団に入ったまま、すぐに見た夢を繰り返し思い出す。
何度も思い出していたら、ふと「こんな夢、前にも見たような?」と思った。
夢日記を読み返してみると、前回書いた119.【鐘の音:命がけのかくれんぼ】と似ている。
どちらも説明してくれる人がいたり、イベントが起きたり、ゲームのチュートリアルみたいな夢だった。
書き残しているから似たような夢を見ただけかもしれないけど、どちらも不思議でとても怖かった。
そんな夢でした。
別サイト初回掲載日:2019年 02月08日
(夢を見たのは2018年12月)
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