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トウキョウ百景

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東京生まれ東京育ちの30代。 太と環は、それぞれの東京で生まれ育ち、二十歳の時に東京で出会いました。 2人が見てきた東京の景色、東京での物語を、紹介していきます。 ぼくらが育…
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2023年9月の記事一覧

夏の中村橋が悪夢にならなかったのは理科のおかげ

夏の中村橋が悪夢にならなかったのは理科のおかげ

勉強ができたのである。特に理科。中学3年の2学期の中間、期末、そして3学期の期末の計3回ですべて100点だった。

「坂本〜!テスト取りに来て〜」
「あ、はい!」
「お前すげーじゃん!でもおっかしいな〜そんな簡単かなぁ」
理科の女教師・坂東は、胸まで伸びた縮毛矯正の髪を触りながら私に目を向ける。そのまま「ん〜」と首を傾げ黒板の方を向き、頭をかく。再度こちらへ振り返るとニヤニヤ顔だ。変な教師だった。

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「羽田空港行き」を見て思い出すこと

「羽田空港行き」を見て思い出すこと

実家から羽田空港へのアクセスが良かったこともあって、小さい頃は空港に遊びに行くことがあった。
乗り物全般が好きだったので、空港の屋上のような場所に、離着陸する飛行機を眺めに行った。
ポケモンジェットが話題になった時にも、観に行った記憶がある。
羽田空港に遊びに行こうか?と言われると、心が弾んだ。
ただ、色濃く残っている記憶が二つあって、それらは飛行機のことではなかったりする。 

一つは、ラーメン

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鶯谷で予想していないことが起こるのは愛に溢れているから、かも

鶯谷で予想していないことが起こるのは愛に溢れているから、かも

鶯谷では予想していないことが起こる。
そんな確信が芽生えつつある。

鶯谷に初めて行ったのは高校生2年の頃だ。試合会場の高校の最寄駅が鶯谷だった。電車から降りて改札を出た印象は、飲食店がところ狭しと並んでいるというもの。そして少し歩みを進めると、すぐにラブホテルが林立していて、「夜の街」と感じた。

自分たちの高校を含めジャージ姿の集団が、ラブホテル街にうじゃうじゃと歩いている。同級生と目配せをし

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新宿は、朝とともに僕を迎え入れてくれた

新宿は、朝とともに僕を迎え入れてくれた

この世にはたくさんの「東京」という曲がある。「東京」がタイトルの一部になっている、歌詞の内容が「東京」のことを歌っている、みたいなやつまで入れると数え切れないほどある。
大御所からインディーズまで「東京」を歌い、今もなお「東京」は量産されている。

人によってお気に入りの「東京」があるのではないかと思うけれど、僕が1番好きな「東京」は、2014年にきのこ帝国がリリースした楽曲だ。
2014年は、僕

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朝に花火やってみたくね?荒川の土手行こ

朝に花火やってみたくね?荒川の土手行こ

夏の醍醐味は朝だと思っている。騒がしい街もまだ静かで、蝉の声も少ない。誰もが開放的になっていて騒がしいのが夏なのに、静けさが漂っているのがとてもいいのだ。

中学生の私はそんな思いをまだ言語化できていなかったが、同じように「朝気持ちいいよね」などと話せる相手がいた。親友のミキだ。スクールカーストにおいて上位であるミキは、スクールカーストの上位から転落した私を、継続して気にかけてくれた。そして、ミキ

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