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北極冒険家が考える「人はなぜ冒険するのか?」

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#私の仕事

判断の下し方。希望的観測について

判断の下し方。希望的観測について

近年、自然災害が発生した時などに「正常性バイアス」という言葉をよく聞く。

これは客観的な情報を見ずに、事態を過小評価したり都合の悪い情報を無視して「自分だけは大丈夫だろう」という無根拠な偏見を拠り所にしてしまう心理作用のことだ。

これと似た言葉として「希望的観測」がある。自分にとって都合の良い、期待感を込めた結果を想定して、その結果になるのではないかという無根拠を妄信して判断を下してしまう行動

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日本人の本質は「個」か「集団」か

日本人の本質は「個」か「集団」か

最近考えていることを、まだ深い考察をする前に思いついたままに書いているので、まとまっていないことはご勘弁を。noteは考えを整理するために書いているので、という言い訳を添えておく。

日本人の個人性日本人の本質は「個」であるか「集団」であるか。

日本人は集団意識が高いし、同調圧力も強いし、個の意識は欧米に比べて低いでしょ、と思われがちだが、果たしてそうだろうか。近年の、表面的に顕在化する現象だけ

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非常時と身体性の回復

非常時と身体性の回復

震災の記憶9年前の今日、私はカナダの北極圏にいた。友人と二人で、1600kmにわたる北極の徒歩冒険行を控え、現地の村でトレーニングをしている最中だった。

数日の海氷上での訓練を終え、村に戻った我々はネット経由で一つのニュースを見た。それは「宮城県沖で地震」という速報だった。

宮城県沖の地震なんてしょっちゅう起きるものなので、最初はあまり意識をしていなかった。しかし、直後から飛び込んでくる続報の

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冒険中に毎日同じものを食べ続ける理由

冒険中に毎日同じものを食べ続ける理由

冒険中の食事事情私は北極を歩く間、毎日同じものを食べ続ける。

朝、日中の行動食、夜、と基本的に3食である。正確には2食プラス行動食で、日中は12時間ほどソリを引いて歩く間、休憩のたびにこまめに栄養補給をしている。

その3食の内容は異なるが、朝、行動食、夜にそれぞれ食べるものは、毎日同じであり味もほとんど変えない。それを2ヶ月ほど続ける。

行動食で私が食べる「北極特製チョコレート」はこんな感じ

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「いま何時?」の答えと解説

一昨日の「いま何時?」の解答です。

正解は ③午後3時 でした。

写真で見るべきポイントは、影の向きです。

北極点に向かって(つまり真北に向かって)まっすぐ歩き、振り返っているので写真では南を向いていることになります。

影が、北東方向に伸びているので、太陽が南西にあることが分かります。

ローカル時刻の正午に太陽は南に来ます。南中です。これは地球上どこでもお昼に真南に来るわけではなく、誤差

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「寒いから凍傷になる」の間違い

「寒いから凍傷になる」の間違い

マイナス50℃以下の世界私は北極でマイナス56℃まで活動経験がある。

揺れ動く北極海の海氷上で、真っ暗闇の中、一人きりで、テントと寝袋でいるのは恐怖そのものだ。

マイナス40℃くらいまでは表現として「寒い」の向こうにある「痛い」の世界であるが、マイナス50℃を下回ると「痛い」の向こう側の世界が待っている。

それは「締めつけられる」とでも言うか、自分自身が雑巾になった気分で、マイナス50℃の冷

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冒険で生活って、どうやって成り立つんですか?

時々「私も冒険をしたいんですが、話を聞かせてください」という連絡をもらうことがある。

そんな時は、できる限り会うようにしている。

そういう相談に来るのは、概して若い人が多いのだが、どうにも話をしていて今まで「ハマる」感じの人が少ない気がする。

私も若い頃は、いろんな人のところに話を聞きに行った。なので、話を聞きに行く気持ちは分かる。若い頃に自分が何を聞きに行ったかと言うと、北極や冒険の具体的

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