髙良真実

髙良の髙ははしごだか。早稲田短歌会出身。同人誌『滸』、竹柏会所属。第40回現代短歌評論…

髙良真実

髙良の髙ははしごだか。早稲田短歌会出身。同人誌『滸』、竹柏会所属。第40回現代短歌評論賞、第4回BR賞。

マガジン

  • くじらの寝袋(既発表作品集)

    過去誌面に掲載した作品の集積所

  • 谷のねむりの日曜日(教会エッセイ)

    呼びかける声がある。 主のために、荒れ野に道を備え わたしたちの神のために、荒れ地に広い道を通せ。 谷はすべて身を起こし、山と丘は身を低くせよ。 険しい道は平らに、狭い道は広い谷となれ。 主の栄光がこうして現れるのを 肉なる者は共に見る。‭‭ ----イザヤ書‬40‬:‭3‬-‭5‬

  • ひさごの陰だより(書評集)

    この書評は “Tanka makes your life better” Takara Mamiiの提供でお送りします。

  • 短歌史

    書いた記事のうち、短歌史に関連するものを集めました。

記事一覧

固定された記事

ポートフォリオ(書いたものと賞歴)

2023/08/10更新 髙良真実です。賞歴が増えたのでまとめることにしました。合わせてこれまでの紙媒体における執筆情報・活動情報も記載します。 【2017年】 作品 5首連作…

髙良真実
10か月前
12

連作:慰靈祭(メモリアル・セレモニー)

初出:『滸』第五号→歌を一部削除 こうして、光があった。ほんとうに? どうせなら孔雀があってほしい 祈りばかり口にするから口紅は祈りとともに削れてしまう 災いが…

髙良真実
4日前
7

礼拝堂にピーヤと響く

 教会の朝は早い……のだが、私の朝はそんなに早くない。教会の方は主に小中学生が集まる第一礼拝が朝9時から開催されるので、司会や奏楽や礼拝堂の準備を担っている教会…

髙良真実
3週間前
11

ペンテコステ、ペンネ・アラビアータ

 今年の5月19日(日)はペンテコステ礼拝の日だった。ペンテコステの知名度は低い。かなしいほどに低い。短歌の後輩に「ペンテコステって知ってますか?」ときいたら「パ…

髙良真実
1か月前
12

語り手たちのアンチテーゼについて:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて(2)

※小説読んでから読んでほしい内容です。読んでない人は回れ右。 第一印象は、私と、私たちのための文学が書かれていると思った。作中で言及される娯楽が私たち世代のもの…

髙良真実
1か月前
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金言は金の価値をもつか:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて

0.はじめに沖縄文学に新しい書き手が現れた。私は那覇の生まれで、ふるさとの大学に通っている作家が群像新人賞を受賞したらしいと聞き、喜び勇んで受賞作掲載号を買い求…

髙良真実
1か月前
31

北海学園大学短歌会機関誌『花と硝烟』創刊号掲載評論の感想

しばらく前に田中綾先生から『花と硝烟』創刊号(2024)を送っていただきました。月のコラムを仕上げてちょっと気持ちに余裕ができたのでこの機会にわーっと書いてしまいま…

髙良真実
1か月前
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プロレタリア短歌に関する勉強会資料

某所で勉強会やりましたので資料をアップロードしておきます。ヘッダー画像は資料内の図です。 資料内に簡易的な時期区分を設けていますが便宜上のものです。 口頭説明に…

髙良真実
2か月前
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イカの短歌

おはようございます。休みの日だというのに、どういうわけか早起きしてイカの歌を探していた。発端は角川『短歌』1973年7月号掲載の座談会「女歌その後」の参加者が70年代…

髙良真実
3か月前
22

けものの短歌

『ねむらない樹』vol.11誌上で発表された第6回笹井宏之賞の結果を読みました。傾向変わりましたね。気になったのはこの歌です。 韻律がやや難しくて、私は「自我は持つ/…

髙良真実
3か月前
29

定型モダニズムの動きと前川佐美雄に関する図

ずっと前川佐美雄の『白鳳』(1941)について何か書きたいと思っているのですが、締切りを守るとまた次の締切りが危なくなるという状況で、なかなか時間がとれません。思い…

髙良真実
4か月前
3

資料あつめのリンク集(短歌史のためのtips)

 昔の短歌雑誌をめくるのが好きで、日がな文学館とかに篭ってよく読んでいます。同じ趣味の人は多いと思いますが、いかんせん趣味にするまでに少し時間がかかるのが難点で…

髙良真実
5か月前
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2023年12月17日 現代短歌社三賞授賞式 髙良のスピーチ内容

於:京都市内 2023年12/17(日)17:30- 2023年に第4回BR賞をいただきました。BR賞とは書評に対して与えられる賞です。3200字、原稿用紙8枚の分量で、昨年刊行された歌集を…

髙良真実
6か月前
32

2023年9月22日 短歌研究四賞授賞式スピーチ内容

時:2023年9月22日 17:00開催 於:講談社26階ホール 補足 短歌研究社は主催している賞について例年合同の授賞式を開催しています。本年はコロナ禍による集会制限のため開…

髙良真実
9か月前
37

固有時制御;齋藤茂吉

2023年8月18日にTwitterでつらつら書いたことをまとめておきます。  この歌はぱっと見地味ですが、時間操作系の魔術なんですよ。来た、居た、去ったが一文に圧縮されてい…

髙良真実
10か月前
9

預言は腹に苦い:前田宏による『歌壇』2023年9月号時評「反セクハラに思う」について

 預言は腹に苦いと言う(cf.黙示録10:10)。かのプロジェクトも然り。私に然り。彼に然り。私たちのうしろにあって、私たちを押し出す聖霊の働きは、時に驚きと痛みをもた…

髙良真実
10か月前
30
ポートフォリオ(書いたものと賞歴)

ポートフォリオ(書いたものと賞歴)

2023/08/10更新
髙良真実です。賞歴が増えたのでまとめることにしました。合わせてこれまでの紙媒体における執筆情報・活動情報も記載します。

【2017年】

作品

5首連作「鉄筋コンクリートの本棚」今月の新人欄『短歌往来』2017年1月号

7首連作「(primitive) primary school life」『現代短歌』2017年2月号

【2018年】

作品

30首連作「境ふ

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連作:慰靈祭(メモリアル・セレモニー)

連作:慰靈祭(メモリアル・セレモニー)

初出:『滸』第五号→歌を一部削除

こうして、光があった。ほんとうに? どうせなら孔雀があってほしい

祈りばかり口にするから口紅は祈りとともに削れてしまう

災いが尻から出るようなことはなくたばこをすってつつしんでおり

ワインに酔って少しもどして信仰が口から出るようなものでないならば

まみ、という名前をもらい、親はうそつき。嘘から出たまみと憶えて。

いいえ。とても憶えられない公式をヴェルギ

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礼拝堂にピーヤと響く

礼拝堂にピーヤと響く

 教会の朝は早い……のだが、私の朝はそんなに早くない。教会の方は主に小中学生が集まる第一礼拝が朝9時から開催されるので、司会や奏楽や礼拝堂の準備を担っている教会員は8時半ごろには集まっているらしい。かたや私は10時半くらいにもぞもぞ起きて、11時からの第二礼拝に向かう。こちらは高校生以上の大人が参加するものだ。学問上の師匠もそこそこ不真面目なクリスチャンであるが、弟子の私もそれに似たのである。とい

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ペンテコステ、ペンネ・アラビアータ

ペンテコステ、ペンネ・アラビアータ

 今年の5月19日(日)はペンテコステ礼拝の日だった。ペンテコステの知名度は低い。かなしいほどに低い。短歌の後輩に「ペンテコステって知ってますか?」ときいたら「パスタの名前ですか?」とかえってきた。パスタはフィットチーネですね。いや、ペンネ・アラビアータかもしれない。私はペンテコステの話をしたいのに、トマトソースのパスタが頭から離れなくなってしまった。デザートにパンナコッタも食べたくなってきた。い

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語り手たちのアンチテーゼについて:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて(2)

語り手たちのアンチテーゼについて:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて(2)

※小説読んでから読んでほしい内容です。読んでない人は回れ右。

第一印象は、私と、私たちのための文学が書かれていると思った。作中で言及される娯楽が私たち世代のものだからだ。私は1997年生まれで、沖縄の出身で、いわゆるZ世代と呼ばれる2020年代の「若者」である。別に呪術廻戦は読んでいないが、友人たちがそれを楽しんでいることは知っている。作中では高校生たちが楽しんでいる音楽として沖縄を拠点にするラ

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金言は金の価値をもつか:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて

金言は金の価値をもつか:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて

0.はじめに沖縄文学に新しい書き手が現れた。私は那覇の生まれで、ふるさとの大学に通っている作家が群像新人賞を受賞したらしいと聞き、喜び勇んで受賞作掲載号を買い求めた。講談社の『群像』2024年6月号である。小説の舞台は沖縄。たぶん作者の母語は沖縄大和口(ウチナーヤマトグチ)だろう。私もこのピジンを母語とする人間だ。先祖伝来の琉球語でもなく、日本語でもない。哀れな醜い愛すべき我が母語よ。などと某山犬

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北海学園大学短歌会機関誌『花と硝烟』創刊号掲載評論の感想

北海学園大学短歌会機関誌『花と硝烟』創刊号掲載評論の感想

しばらく前に田中綾先生から『花と硝烟』創刊号(2024)を送っていただきました。月のコラムを仕上げてちょっと気持ちに余裕ができたのでこの機会にわーっと書いてしまいます。なので荒いところがあるかもしれません。

・山田航「清水信ノート」について
 新興短歌のうちモダニズム派は定型に拠ったグループが代表的収穫とされ、自由律モダニズムは前田夕暮や土岐善麿の作品がわずかに触れられるのみといった状況が久しく

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プロレタリア短歌に関する勉強会資料

プロレタリア短歌に関する勉強会資料

某所で勉強会やりましたので資料をアップロードしておきます。ヘッダー画像は資料内の図です。

資料内に簡易的な時期区分を設けていますが便宜上のものです。
口頭説明における理解を優先しているため記述の正確性を犠牲にしている部分があることをご理解ください。レポート・評論等への引用に耐えうるものではないことを注記しておきます。

資料内の図は渡邊順三『定本近代短歌史』上下巻(春秋社)に基づきつつ、適宜一次

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イカの短歌

イカの短歌

おはようございます。休みの日だというのに、どういうわけか早起きしてイカの歌を探していた。発端は角川『短歌』1973年7月号掲載の座談会「女歌その後」の参加者が70年代にどんな歌を作っていたのか全歌集とかをパラパラめくっていたことだった。
私は河野愛子(こうのあいこ)の歌が好きで、手元の短歌ノートには以下の歌を控えている。

好きな歌なんだけど平成生まれにはあんまり意味の通りがよくないと思う。だいた

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けものの短歌

けものの短歌

『ねむらない樹』vol.11誌上で発表された第6回笹井宏之賞の結果を読みました。傾向変わりましたね。気になったのはこの歌です。

韻律がやや難しくて、私は「自我は持つ/よりも飼うだな、/と言ってた」と句切りました。あるいは3句目4音にする切り方もあります。韻律と意味内容を過度に近づける読みは警戒されますけれども、人外っぽいイメージを連れてくる歌の韻律がガタガタだと、少しうれしい気持ちがあるのを自覚

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定型モダニズムの動きと前川佐美雄に関する図

定型モダニズムの動きと前川佐美雄に関する図

ずっと前川佐美雄の『白鳳』(1941)について何か書きたいと思っているのですが、締切りを守るとまた次の締切りが危なくなるという状況で、なかなか時間がとれません。思い入れのある歌集だけにじっくり取り組みたいという気持ちが仇になりました。

ところで今日(2024年1月31日)ぽっぷこーんじぇるさんがnoteで「〈舞台〉に立つ、〈舞台〉を降りる――前川佐美雄『白鳳』私論」という『白鳳』評を書いていて、

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資料あつめのリンク集(短歌史のためのtips)

資料あつめのリンク集(短歌史のためのtips)

 昔の短歌雑誌をめくるのが好きで、日がな文学館とかに篭ってよく読んでいます。同じ趣味の人は多いと思いますが、いかんせん趣味にするまでに少し時間がかかるのが難点です。特に読みたい資料が見つからないのが困る。
 そういうわけで、ブクマしているリンクをまとめることにしました。誰でも入れるところの蔵書検索システムです。

早稲田大学古典籍総合データベース

 名前の通り前近代メインのデータベースですが、例

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2023年12月17日 現代短歌社三賞授賞式 髙良のスピーチ内容

2023年12月17日 現代短歌社三賞授賞式 髙良のスピーチ内容

於:京都市内 2023年12/17(日)17:30-

2023年に第4回BR賞をいただきました。BR賞とは書評に対して与えられる賞です。3200字、原稿用紙8枚の分量で、昨年刊行された歌集を対象とする書評を書き、応募します。私は伊舎堂仁の第二歌集『感電しかけた話』(書肆侃侃房, 2022)の書評を書きました。
選考過程と受賞の書評は『現代短歌』2023年11月号に掲載されています。ちなみに第2回

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2023年9月22日 短歌研究四賞授賞式スピーチ内容

2023年9月22日 短歌研究四賞授賞式スピーチ内容

時:2023年9月22日 17:00開催
於:講談社26階ホール

補足
短歌研究社は主催している賞について例年合同の授賞式を開催しています。本年はコロナ禍による集会制限のため開催されていなかった2020年度から本年23年度までの受賞者が集められ、2時間半にわたって選考委員による講評と受賞者スピーチがありました。
私は昨年2022年度の第40回現代短歌評論賞受賞者です。
なお昨年度まで評論賞の選考

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固有時制御;齋藤茂吉

2023年8月18日にTwitterでつらつら書いたことをまとめておきます。

 この歌はぱっと見地味ですが、時間操作系の魔術なんですよ。来た、居た、去ったが一文に圧縮されていて、一首の時間が加速するんです。そして「~にけるかも」で、トップギアの詠嘆が駆け抜けます。ね。詠嘆には、感情を強調するだけでなく、瞬間を強調する機能もあります。

 Fate/ Zeroに衛宮切嗣って登場人物がいますよね。茂

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預言は腹に苦い:前田宏による『歌壇』2023年9月号時評「反セクハラに思う」について

 預言は腹に苦いと言う(cf.黙示録10:10)。かのプロジェクトも然り。私に然り。彼に然り。私たちのうしろにあって、私たちを押し出す聖霊の働きは、時に驚きと痛みをもたらす。かのプロジェクトも然り。私に然り。彼に然り。

 『歌壇』2023年9月号の時評子は、昨今の反ハラスメントに関する流れにつまづいた。時評に使われた紙とインクを憐れみたまえ。

 時評子は性犯罪の犯罪性を認識していながら、「現在

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