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ひさごの陰だより(書評集)

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この書評は “Tanka makes your life better” Takara Mamiiの提供でお送りします。
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吉田隼人『忘却のための試論』評:凡そ鳥類は客死すべけむ

底本:吉田隼人『忘却のための試論』(書肆侃侃房、二〇一五、初版) はじめの歌集が話題にな…

髙良真実
1年前
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歌集評① 前川佐美雄『植物祭』

・はじめに どのように読めばそのテクストに誠実になることができるのか。最近は短歌を読むた…

髙良真実
4年前
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語り手たちのアンチテーゼについて:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて(2)

※小説読んでから読んでほしい内容です。読んでない人は回れ右。 第一印象は、私と、私たちの…

髙良真実
4か月前
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金言は金の価値をもつか:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて

0.はじめに沖縄文学に新しい書き手が現れた。私は那覇の生まれで、ふるさとの大学に通ってい…

髙良真実
4か月前
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加藤克巳『螺旋階段』評:夢に昇天

モダニズム歌集評第8回 底本:加藤克巳『螺旋階段』(協和書院、一九三七) 加藤克巳は國學…

髙良真実
1年前
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岡松雄『精神窓』評:花へのフェティシズム

モダニズム歌集評第7回 底本:岡松雄(おかまつ たけし)『精神窓』(協和書院、一九三七) 岡…

髙良真実
1年前
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早崎夏衛『白彩』評:文明論の憂鬱

モダニズム歌集評第6回 底本:早崎夏衛『白彩』(短歌精神詩房、一九三六) 早崎夏衛は竹柏会『心の花』に所属していた歌人で、一九三〇年には心の花内部の組織である「新芸術派短歌研究会」に、前川佐美雄、児山敬一、三宅史平の三人と一緒に参加していました。その後は前川に従い『短歌作品』、『カメレオン』、『日本歌人』にも参加しますが、一九三五年には盟友の岡松雄(おかまつ・たけし)とともに同誌を離れ、加藤克巳を加えて独自に『短歌精神』を創刊、新芸術派の運動を推進しました。 『短歌精神』は

石川信雄『シネマ』評:天使とロンド・ロンド・ロンド

モダニズム歌集評第5回 底本:石川信雄『シネマ』(茜書房、一九三六) 書影は『現代短歌全集…

髙良真実
1年前
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松本良三『飛行毛氈』評:街の怪異

モダニズム歌集評第4回 底本:松本良三『飛行毛氈』(石川信雄発行、一九三五) 松本良三は…

髙良真実
1年前
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齋藤史『魚歌』評:コラージュ

モダニズム歌集評第3回 底本:齋藤史『魚歌』(ぐろりあ・そさえて、一九四〇) 齋藤史(さ…

髙良真実
1年前
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津軽てる『秋・現実』評:ロボットの乳房

モダニズム歌集評第2回 底本:津軽てる『秋・現実』(表現社、一九三二) 津軽てる(または…

髙良真実
1年前
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小玉朝子『黄薔薇』評:童心

モダニズム歌集評第1回 底本:小玉朝子『黄薔薇』(平野書房、一九三二) 『黄薔薇』を収蔵…

髙良真実
1年前
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暮田真名『ふりょの星』評:ふりょとの遭遇

底本:暮田真名『ふりょの星』(左右社、二〇二二) ふと夜空を見上げると、そこに『ふりょの…

髙良真実
1年前
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北山あさひ『崖にて』:侍、そして杉元佐一。

沖縄にはHacksaw Ridge(弓のこ尾根)という崖がある。またの名を浦添・前田高地、太平洋戦争末期の沖縄戦における激戦地のひとつとして知られている。メル・ギブソン監督の映画『ハクソー・リッジ』の舞台としても有名だ。私は崖といえば戦場か、そうでなければバンザイ・クリフか、あるいは自殺の名所しか知らない。だから、この歌集のタイトルである『崖にて』の「崖」とは、どのような場所なのだろうかと率直に思う。 『崖にて』に「崖」の歌(「断崖」含む)は見つけた限り六首ある。そのうちか