金言は金の価値をもつか:豊永浩平「月ぬ走いや、馬ぬ走い」に寄せて
0.はじめに沖縄文学に新しい書き手が現れた。私は那覇の生まれで、ふるさとの大学に通っている作家が群像新人賞を受賞したらしいと聞き、喜び勇んで受賞作掲載号を買い求めた。講談社の『群像』2024年6月号である。小説の舞台は沖縄。たぶん作者の母語は沖縄大和口(ウチナーヤマトグチ)だろう。私もこのピジンを母語とする人間だ。先祖伝来の琉球語でもなく、日本語でもない。哀れな醜い愛すべき我が母語よ。などと某山犬の台詞を雑に引用してもはじまらぬ。私はこの小説が気に入っていて、より多くの人に読