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13.警部さん、こちら! 屁の鳴るほうへ!
それはすばらしい朝だった。お空はカラリと晴れあがり、お日様はキラキラ輝いていた。こんな日はおうちに閉じこもっているのはもったいない。みんなでおんもに飛びだそう!
けれど、校庭にたくさんの児童が群がっていたのは、なにも天気が良かったからではなかい。先生方も混じっていたが、朝礼があるわけでもない。クラスごとに整列してはいなかったし、かと言って完全な無秩序というわけでもなかった。興奮して意味不明のこ
12. 行ッテ永久少年ニナロウト言イ
製氷所の重い扉を開けて中に入った途端に、ハジメくんは左右から屈強な腕で取り押さえられた。ロープでぐるぐる巻きにされて、コンクリートの床に投げ出された。天井に整列した白色光の下、床の上は空っぽだった。銀色に光る壁際にはなんらかの機械や計器が固まっていたが、氷の類は皆無だった。製氷所としてはもう使われていないのだ。屈強な男たちが去ると、電気も消えた。
足首までギチギチに縛られたせいで、まったく身動
11.十二番目の弟子
キンイチくんとジロウくんが訪ねたとき、永久の少年少女たちが忙しくしていたのは、夜の活動に備えていたからだ。闇に紛れて町に繰り出すのだ。非永久の児童のために食べ物や日用品を確保する必要もあったが、それよりもまだ十分に遊び終えていない遊びをするためだ。
自宅に戻って、作りかけのプラモデルを再開したり、楽しみにしていたアニメの続きを観たり、飼い犬の様子をうかがったりしたが、家人に見つかりでもしたら面
9.どこへでも逃げろ!
ハジメくんをはじめとする十人ばかりの児童は勇んで町に繰り出したが、そこはもう昨日と同じ町じゃなかった。ハジメくんが永久少年になって以来、学校が学校でなくなったのと同様に、町も変わってしまったのだ。そこは永久の少年少女のための遊び場にほかならなかった。禁じられた遊びはない。永久の子供たちは防災ポスターをビリビリ破り、交通標識を逆向きにした。飼い犬を首輪から解放し、駐車中のバイクを蹴倒した。マンホー
もっとみる8.青空の下がぼくらの家だ
校内は騒がしく、かつ閑散としていた。永久の児童がそれぞれ好き勝手なことをする一方で、永久でない児童は学校から逃げだしたからだ。水道は元栓が止められたのか水の噴出は止まっていたが、あちらこちらでガシャン! ガシャン! とガラスの割れる音は続いていて、笑い声や歓声に混じって悲鳴や怒号も聞こえてきた。そんな中、「ハジメくん」と話しかけられた。黒縁の眼鏡をかけた、いたって真面目そうな男子児童だった。「視
もっとみる7.痛いだろ? 苦しいだろ?
脱洗脳班は着々と成果をあげていった。
最初はおとなしい児童から始めた。永久になったからといって、だれもが強烈に自己主張したり、迷惑行動を起こしているとはかぎらなかったのだ。
たとえば、二年生のマコさん。同級生が席を離れて勝手に歩きまわっているところを、一人席にすわってお絵描きをしていたので、担任のアカン先生は声をかけた。「マコちゃん、ちょっと来てくれるかな。先生、大事な話があるんだけど」
視
5.腐ったミカンの混ざったミカン箱
先生方は大弱りだった。児童が永久になった際の対処方法など指導要領のどこにも書いていなかったからだ。授業は事実上不可能になった。永久の児童が一人いただけで、クラスは腐ったミカンの混ざったミカン箱のように腐敗が蔓延してしまうのだ。まともに相手にするだけ無駄だった。永久の児童には先生の権威も大人の威厳も通じないのだから。かと言って無視すれば際限なくつけあがるだけ。いたずらに気力と体力を奪われて、クラス
もっとみる4.きみはもう永久少年さ
ハジメくんは猛烈に勧誘をはじめた。本当は焦る必要なんかないのだ。永久少年には永久の時間があるからだ。けれど、永久少年でない人はそうじゃない。生まれっぱなしの生き方しか知らないほとんどの人は、脇道にそれることも後戻りもできない、一方通行の窮屈な人生を強いられている。ゴールは死だ。それは高いビルから落ちるようなものだ。屋上から飛び降りようとする人が目の前にいれば、だれだって止めようとするだろう。だか
もっとみる2.ソウイウモノニボクハナッタ
ばあん! 教室の前の扉を力いっぱい開け放つと、すべての視線が集まってきた。
「遅刻か、ケンジ」担当のヒノモト先生が苛立たしげにつぶやいた。「あれほど気をつけるよう言ってんのに、なんでおまえはわからないんだ。タイム・イズ・マネー。なにごとも時間を守ることからはじまるのであって」
ハジメくんは先生に目もくれないで自分の席に直行した。
「無視か! 言い訳のひとつもなしか? もしもーし、ケンジくん、
1.すべてをはじめたのは
すべてをはじめたのはケンジくんだった。
いや違う。ケンジくんじゃない。
「なぜって、ケンジってのはパパとママが勝手につけた名前だもの。ぼくになんの相談もなしに。自分の名前くらい自分でつけるよ。これからが本当のはじまりなんだ。だから、ぼくはハジメって名乗ることにする」
だから、ぼくらもハジメくんと呼ぼう!
その朝、ハジメくんはかねてからの計画を実行に移すことにした。一晩じゅうパッチリお目々
【備忘録】2019年4月19日 アイヌ文化公開講座キロロアン「アイヌ文化で読み解く 「ゴールデンカムイ」」講師:中川裕@アイヌ文化交流センター
・昨年11月16日に行なわれた講演に続く中川裕氏による講演。2017年2月17日の講演を加えて三度目の「キロロアン」出演。と御本人が語っていたが、あるいは「ゴールデンカムイ」に関連して三度ということだったかもしれない。
・先だって『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(集英社新書)(以下*)という本を上梓したばかりだし、「混むだろうな」とは思っていた。会社が早く終わったのでシンタに乗りはしな