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小説読んだり映画見たり音楽聴いたり+ヘタな小説を書くことしかしてなかったので、まるでな…

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小説読んだり映画見たり音楽聴いたり+ヘタな小説を書くことしかしてなかったので、まるでなってません。 retarciro@gmail.com https://twitter.com/jaaan093

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  • その他

    その他です。

  • チロと散歩する

    昔飼っていた犬のチロと散歩したときの話です。不定期掲載。

最近の記事

14.ん?

 「あれっ、ぼくの出番はもうおしまい?」  ん? だれか、なんか言った?                             (おしまい)

    • 13.警部さん、こちら! 屁の鳴るほうへ!

       それはすばらしい朝だった。お空はカラリと晴れあがり、お日様はキラキラ輝いていた。こんな日はおうちに閉じこもっているのはもったいない。みんなでおんもに飛びだそう!  けれど、校庭にたくさんの児童が群がっていたのは、なにも天気が良かったからではなかい。先生方も混じっていたが、朝礼があるわけでもない。クラスごとに整列してはいなかったし、かと言って完全な無秩序というわけでもなかった。興奮して意味不明のことをわめいている男子や、たがいの肩に顔を埋めながら泣きじゃくっている女子、口角泡

      • 12. 行ッテ永久少年ニナロウト言イ

         製氷所の重い扉を開けて中に入った途端に、ハジメくんは左右から屈強な腕で取り押さえられた。ロープでぐるぐる巻きにされて、コンクリートの床に投げ出された。天井に整列した白色光の下、床の上は空っぽだった。銀色に光る壁際にはなんらかの機械や計器が固まっていたが、氷の類は皆無だった。製氷所としてはもう使われていないのだ。屈強な男たちが去ると、電気も消えた。  足首までギチギチに縛られたせいで、まったく身動きできなかった。口には猿ぐつわをされたせいで、声を張りあげることもできなかった。

        • 11.十二番目の弟子

           キンイチくんとジロウくんが訪ねたとき、永久の少年少女たちが忙しくしていたのは、夜の活動に備えていたからだ。闇に紛れて町に繰り出すのだ。非永久の児童のために食べ物や日用品を確保する必要もあったが、それよりもまだ十分に遊び終えていない遊びをするためだ。  自宅に戻って、作りかけのプラモデルを再開したり、楽しみにしていたアニメの続きを観たり、飼い犬の様子をうかがったりしたが、家人に見つかりでもしたら面倒だった。部屋に監禁されたり、学校に通報されたりするからだ。  町に潜伏している

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          7本
        • チロと散歩する
          5本

        記事

          10.カリソメ

           キンイチくんとジロウくんがハジメくんに会えたのは、お昼をだいぶすぎてからのことだった。  朝もまだ早いうちから自転車に乗って、見回りをする警官たちや自警団の目をかすめ、泰安寺わきの細道から山に入り、道なき道に分け入って、落とし穴に落ちたり、糞玉を浴びたり、野良犬にまとわりつかれたりしながら、木の上、草むら、岩場に隠れた永久の子供たちの情報を頼りに、ハジメくんのあとを追ってきたのだ。  鬱蒼とした雑木林のむこうに、草木の生えていないごつごつした坊主山がそびえ、永久の子供たちが

          10.カリソメ

          9.どこへでも逃げろ!

           ハジメくんをはじめとする十人ばかりの児童は勇んで町に繰り出したが、そこはもう昨日と同じ町じゃなかった。ハジメくんが永久少年になって以来、学校が学校でなくなったのと同様に、町も変わってしまったのだ。そこは永久の少年少女のための遊び場にほかならなかった。禁じられた遊びはない。永久の子供たちは防災ポスターをビリビリ破り、交通標識を逆向きにした。飼い犬を首輪から解放し、駐車中のバイクを蹴倒した。マンホールの蓋を引っぺがし、立木の枝を折りまくった。  自販機横に備えつけられた空き缶入

          9.どこへでも逃げろ!

          8.青空の下がぼくらの家だ

           校内は騒がしく、かつ閑散としていた。永久の児童がそれぞれ好き勝手なことをする一方で、永久でない児童は学校から逃げだしたからだ。水道は元栓が止められたのか水の噴出は止まっていたが、あちらこちらでガシャン! ガシャン! とガラスの割れる音は続いていて、笑い声や歓声に混じって悲鳴や怒号も聞こえてきた。そんな中、「ハジメくん」と話しかけられた。黒縁の眼鏡をかけた、いたって真面目そうな男子児童だった。「視聴覚室のこと知ってる? 仲間がひどい目にあってるよ」  「視聴覚室?」ハジメくん

          8.青空の下がぼくらの家だ

          7.痛いだろ? 苦しいだろ?

           脱洗脳班は着々と成果をあげていった。  最初はおとなしい児童から始めた。永久になったからといって、だれもが強烈に自己主張したり、迷惑行動を起こしているとはかぎらなかったのだ。 たとえば、二年生のマコさん。同級生が席を離れて勝手に歩きまわっているところを、一人席にすわってお絵描きをしていたので、担任のアカン先生は声をかけた。「マコちゃん、ちょっと来てくれるかな。先生、大事な話があるんだけど」  視聴覚室に窓はなく、打楽器演奏を思う存分できるように防音設備が万全だった。ポツンと

          7.痛いだろ? 苦しいだろ?

          6.逆効果かも

           翌日もハジメくんは猛烈に勧誘を続けた。これまでの成果に満足していなかったからだ。「年とらないんだよ」「死なないんだよ」「苦しくないんだよ」と言えば、希望者がわれもわれもと詰めかけてくるかと思っていたのに、永久少年(および永久少女)を申し出たのはほんのわずかにすぎなかった。  昨晩は、一人だけになった自宅でひたすら「セブンス・コンチネント」ごっこをしていた。「セブンス・コンチネント」は家じゅうのものを徹底的に破壊して、最後は家族三人が自死してしまう映画だったが、壊すことがあん

          6.逆効果かも

          5.腐ったミカンの混ざったミカン箱

           先生方は大弱りだった。児童が永久になった際の対処方法など指導要領のどこにも書いていなかったからだ。授業は事実上不可能になった。永久の児童が一人いただけで、クラスは腐ったミカンの混ざったミカン箱のように腐敗が蔓延してしまうのだ。まともに相手にするだけ無駄だった。永久の児童には先生の権威も大人の威厳も通じないのだから。かと言って無視すれば際限なくつけあがるだけ。いたずらに気力と体力を奪われて、クラスはおしとどめようのない無政府状態と化してしまう。  放課後の掃除および反省会のあ

          5.腐ったミカンの混ざったミカン箱

          4.きみはもう永久少年さ

           ハジメくんは猛烈に勧誘をはじめた。本当は焦る必要なんかないのだ。永久少年には永久の時間があるからだ。けれど、永久少年でない人はそうじゃない。生まれっぱなしの生き方しか知らないほとんどの人は、脇道にそれることも後戻りもできない、一方通行の窮屈な人生を強いられている。ゴールは死だ。それは高いビルから落ちるようなものだ。屋上から飛び降りようとする人が目の前にいれば、だれだって止めようとするだろう。だから、ハジメくんはそうしたのだ。  「永久少年になれば!」教室という教室に飛びこん

          4.きみはもう永久少年さ

          3.パパだったねえ

           夜も遅くなったが、ハジメくんはもちろん元気だった。昨日は一晩じゅう突っ立っていたので、この日は部屋じゅう駆けずりまわった。机と本棚、箪笥、押入の中身を全部、床にぶちまけた上で、アルト笛をへし折り、地球儀を踏んづけ、零戦のプラモデルを床に墜落させた。ベッドをトランポリンにしてドッタンバッタン飛び跳ねたあとは、小太鼓のスティックを両手に持って、壁、柱、電気スタンド、椅子の背もたれ、目につくものをパキンパキンたたきまくった。  開けっ放しのドアからそのさまを目撃して、パパは愕然と

          3.パパだったねえ

          2.ソウイウモノニボクハナッタ

           ばあん! 教室の前の扉を力いっぱい開け放つと、すべての視線が集まってきた。  「遅刻か、ケンジ」担当のヒノモト先生が苛立たしげにつぶやいた。「あれほど気をつけるよう言ってんのに、なんでおまえはわからないんだ。タイム・イズ・マネー。なにごとも時間を守ることからはじまるのであって」 ハジメくんは先生に目もくれないで自分の席に直行した。  「無視か! 言い訳のひとつもなしか? もしもーし、ケンジくん、聞こえますか?」  「ぼくのこと?」教壇を振り返って、ハジメくんは不思議そうに答

          2.ソウイウモノニボクハナッタ

          1.すべてをはじめたのは

           すべてをはじめたのはケンジくんだった。  いや違う。ケンジくんじゃない。  「なぜって、ケンジってのはパパとママが勝手につけた名前だもの。ぼくになんの相談もなしに。自分の名前くらい自分でつけるよ。これからが本当のはじまりなんだ。だから、ぼくはハジメって名乗ることにする」  だから、ぼくらもハジメくんと呼ぼう!  その朝、ハジメくんはかねてからの計画を実行に移すことにした。一晩じゅうパッチリお目々を開けて起きていて、ちっとも眠くならなかったからだ。それどころか、これまでにない

          1.すべてをはじめたのは

          【備忘録】2019年4月19日 アイヌ文化公開講座キロロアン「アイヌ文化で読み解く 「ゴールデンカムイ」」講師:中川裕@アイヌ文化交流センター

          ・昨年11月16日に行なわれた講演に続く中川裕氏による講演。2017年2月17日の講演を加えて三度目の「キロロアン」出演。と御本人が語っていたが、あるいは「ゴールデンカムイ」に関連して三度ということだったかもしれない。 ・先だって『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(集英社新書)(以下*)という本を上梓したばかりだし、「混むだろうな」とは思っていた。会社が早く終わったのでシンタに乗りはしないが飛んでいって、開始の三十分前に会場に到着したが席はもうほとんど埋まっていた。

          【備忘録】2019年4月19日 アイヌ文化公開講座キロロアン「アイヌ文化で読み解く 「ゴールデンカムイ」」講師:中川裕@アイヌ文化交流センター

          【備忘録】2018年11月16日 アイヌ文化公開講座キロロアン「メディアの中のアイヌ」講師:中川裕@アイヌ文化交流センター

          覚書として置いておきます。照明を落とした状態でのメモ書きを元に執筆。聞き間違い、書き間違い、記憶違いがあるやもしれません。 案内メールに添えられた文は「アイヌ民族をとりまくメディアの動きはこれまでと大きく変わってきています。漫画「ゴールデンカムイ」などの登場によって、これまで関心を持っていなかった層もアイヌに目を向けるようになってきました。今回はアイヌ民族とその文化に関する正しい知識の普及のために、さまざまなメディアをどのように活用していくべきかなどをお話しいただきます」。

          【備忘録】2018年11月16日 アイヌ文化公開講座キロロアン「メディアの中のアイヌ」講師:中川裕@アイヌ文化交流センター