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13.警部さん、こちら! 屁の鳴るほうへ!

 それはすばらしい朝だった。お空はカラリと晴れあがり、お日様はキラキラ輝いていた。こんな日はおうちに閉じこもっているのはもったいない。みんなでおんもに飛びだそう!
 けれど、校庭にたくさんの児童が群がっていたのは、なにも天気が良かったからではなかい。先生方も混じっていたが、朝礼があるわけでもない。クラスごとに整列してはいなかったし、かと言って完全な無秩序というわけでもなかった。興奮して意味不明のことをわめいている男子や、たがいの肩に顔を埋めながら泣きじゃくっている女子、口角泡を飛ばしながら口論している先生方がいたが、全体は不思議なほど静かだった。その中心に位置するものが完全に沈黙していたからだ。ほとんどの人がそれを見あげていた。校舎に近い場所にある、国旗掲揚のポール、そのてっぺんを。
 ハジメくんがそこに載っていた。ハジメくんの頭だけが載っていた。首の中央でスッパリと切断されて、ポールのてっぺんに突き刺さっていた。ポールに通常は載っているはずの冠頭部のかわりを、ハジメくんの頭部がつとめた形だった。
 不意打ちを食らったかのように「あっ」と口を半開きしていた。髪の毛はやや乱れているものの、傷らしい傷もなく、首から上を眺めるかぎりは普段とどこも変わらない。今にもこちらに気がついて、「なんか用?」とか言いそうだった。
 校庭には在校児童や先生のほかに、学校には用のないはずの子供たちも多数混ざっていた。たいがいは一目でわかる。いろんな場所に首を突っこんできたのだろう。泥、葉っぱ、油、虫、糞尿で汚れた顔と着衣。妙な方向に腕が曲がっていたり、ビッコをひいていたりする。
 永久の子供たちがなによりもとまどったのは、ハジメくんに胴体がないことではなかった。手足がないのに、あんなに高い場所にのぼれたというのも不可解だったが、そんなことはどうでもいい。沈黙。ハジメくんの沈黙がなによりも驚きなのだ。この一週間というもの、かたときたりと休むことなく駆けずりまわったハジメくん。永久の仲間の先頭に立って、どこか輝かしい方角にむかって突き進んでいたハジメくんが、今は完全に沈黙しているのだ。一言だってしゃべらない。一ミリだって動かない。これは現実なんだろうか?
 おーい! みんなはハジメくんに呼びかける。呼びかければいつでも応えてくれるのがハジメくんなのだ。
 おーい!
 おーい!!
 おおおおーい!!!
 そうだ、もっともっと呼びかけるんだ!
 「なにしてんだよ、ハジメくん?」「呼んでるって聞いたから来たんだよ」「体はどこにあるんだよ? これって、なんか新しい遊び? 体を探してこいってこと?」「早く降りてこいよ! 一人じゃ降りられないのか? だったら、なんでのぼったんだバカ!」「そろそろなんかしゃべれよハジメ!」
 呼べども叫べども返事はない。ポールは地上五メートルの高さに過ぎなかったが、永久の子供たちの目には成層圏を突き抜けて宇宙にのびる宇宙エレベーターほども高かった。ならば、せめてもう少し近くに行こう。ポールの真下で呼びかけよう。だが、ポールの周囲は顔のない機動隊員で固められて、近づくことは難しかった。その絶壁のごとき盾は、永久の子供たちの突進を容易に止めてしまうだろうし、その手に握りしめられた棍棒は、相手がたとえわが子だろうが容赦なく振りおろされるに違いないのだ。
 くそう! なんてことを! 勘弁してくれよ! まったく! 朝礼台の周辺を行ったり来たりしながらしきりに悪態をついているのは校長のトカチ先生だった。「わたしの学校で! よくもこんな真似を! ああ許しがたい! 猟奇! 狂気! 凶器! 斧! オーノーッ! マイガッ! マイ学校で!」
 「校長、どうか落ち着いてください」その隣にピタリと寄り添って、教頭のシラオイ先生がなだめている。「あなたがしっかりしなくてどうするんですか? 乗りきるんです。今日が山です。想像してください。この峠を越えさえすれば、そこにはもう、なんの憂いも悩みもないお花畑が広がっているんだと」
 そこへやってきたのは四角四面の面構え、おなじみのクナシリ警部だった。口もとを手で隠し、校長の耳もとに寄せた。ヒソヒソ話だ。
 「目撃者の証言が取れました、校長」しかし、発せられたその声は、ボリュームのつまみを目いっぱいにまわしたかのような、暴力的な大音量だった。校庭じゅうに朗々と響きわたった。
 「昨夜未明、数名の成人男性が梯子と手斧、ちょうどスイカを包んだぐらいの風呂敷包みを抱えて、この校庭に侵入したというのです!」
 「なんと!」校長も負けじ劣らずの大声で答える。「すると、そいつらが犯人ですか? このクソおぞましい猟奇事件の!」
 「被害者のハジメくんを首魁とする永久グループは、ここしばらく地元の反社会分子、不良少年、チンピラといざこざを繰り返しておりました。この衝撃的な事件にはそのいずれかの関与が疑われており、目下調査を鋭意継続中です!」
 あはあ。
 その空気の漏れたような音は、警部が口を閉ざした瞬間に発せられた。校庭に集った児童、先生方が警部の発言にショックを受けている最中に、合いの手のように加えられた。だから、その音に注意を引きつけられたのは、警部ただ一人だった。素早くポールに目を走らせると、「まさかな」とつぶやいた。「気のせいだ。あんなんで口をきけるわけない」
 それでも万が一ということがある。ハジメくんのような異常者が相手では、億が一という可能性だって無視できなかった。急いで梯子を持ってくるよう部下のホロト刑事に命じる。「手斧も持ってこい」と小声でつけ足した。「トランクにある。いざというときはポールを切り倒す」
 「しかし、警部。どうも目論見通りとはいかなかったようですね」もう一人の部下であるアナマ警部補がささやいてくる。「永久のカリスマであるハジメくんが倒れれば万事解決と伺いましたが」
 「テレパシーで通じているわけじゃなかったってことさ」警部は動じない。「言葉を聞いて、その目で見て、物事を判断する。その点は普通人と変わらないってことだ。心で納得する必要がある。やつが本当にくたばって、もう二度と口をきかない、動かないことを。その認識が得られれば、自然と呪縛は解けるのだ。今やつらの心の中は激しく葛藤してるんだろう。時間がかかるというわけだ」
 少し離れた場所では、校長と教頭が本当のヒソヒソ話を交わしていた。
 「それにしてもだ、シラオイくん。ここまでする必要があったのかね?」校長は眉をひそめる。「あの子に苦痛はないと聞いたが、それでもあまり気分のいい光景じゃない。打ち首なんて、いったいいつの時代の話だ。しかもポールに突き刺すなんて! これじゃもう今日限り国旗掲揚なんぞできないじゃないか。国旗を掲げるたびに、このさらし首を思い出しちまう。たしかに血は流れてないよ。だが、あそこに日の丸でもひらめこうものなら、そいつが血の丸に見えちまわないとも限らないだろう」
 「最初は校門に載せたのが、今一つしっくりこなかったそうです」教頭がなだめるように言う。「これじゃ、頭の悪いガキのイタズラにしか見えない。鬼面人を驚かす類のね。ポールに目をつけて、そこに突き刺したらすんなり収まったとか。なるほどとわたしは思いましたね。この事件が国をも動かすほど深刻なものであるがゆえに、あいつの首はあそこにさらされなければならなかったんだと。ポールは新しいものと変えたらいいじゃありませんか。設置場所も変えることです。とにかく、ここは問題が無事に解決を見たことを喜びましょう。そろそろはじめたほうがよくないですか。校長、一仕事お願いします」
 校長がうなずくのを見て、教頭はマイクにむかった。
 「みなさん、どうかお静かに!」スピーカから音の割れた声が響きわたる。「ただいまより校長先生のお話があります! とても大事なお話です。一言一句聞き漏らさないように! 整列はしなくてよろしい。各自、今いる場所で聞きなさい。その場から一歩も動かないで静聴謹聴するように」
一同の注視する中、校長はゆっくりと朝礼台にのぼって話しはじめる。
 「全校児童のみなさん、および教職員の諸君! すでに各人がご自分の目でしっかり確認のことと存じますが、本日は大変残念な報告をしなくてはなりません!」
 沈痛な面持ちに沈痛な声。この校長は相当の役者なのだ。
 「ハジメくんはわたしたちのかわいい教え子でした。みなさんの大切なお友達でした。いつもふざけたことをしでかしては、みんなの心をなごませる人気者で、だれともすぐに仲良しになれて、意外と国語の朗読が得意だったといいます。彼の前には輝かしい未来が待っていました。そんなかけがえのない命が、こんなむごたらしい形で奪われてしまったことは、まったくもって残念至極と言うほかありません。しかし!」
 そこでいったん言葉を切って、視線を左右にさまよわせた。
「わたしたちは問題の本質を見誤ってはなりません。ハジメくんのおかした過ちは、みなさんにとっても決して他人事ではないのです。ハジメくんは重大な勘違いをしていました。自分は子供なんだから、なにをしても許される、みんな大目に見てくれる、と。子供であることを絶対の武器にして、鼻歌まじりに世の中を渡っていけると信じていました。けれど、世間はそんなに甘くはない。こっちの水はああまいぞ、と宣伝しといて、ちゃっかり食い物にしているだけなんです。砂糖に見えて実は食塩だったり、場合によっては青酸カリだったりする。ブルル! ハジメくんは調子に乗りすぎてしまった。結果、こわい人たちの怒りを買って、最悪の事態を招いてしまったんです。ハジメくんをこのように甘やかしてしまったことを、わたしたち、指導すべき立場にある者は大いに反省しなければなりません。わたしたちは断固とした態度を取るべきだった。叱ってしかるべきときにしっかりと叱るべきでした。そして、みなさんも肝に銘じていただきたい。あくまでも、大人に守られた状態でのみ、子供はわがままを許されるのだと。いつまでもあると思うな親と金。出る杭は打たれてしまう運命だし、長いものにはとりあえず巻かれること。それがわからないようなら」
 そう言って、腕だけのばして、ポールのてっぺんを指さした。その人差し指はダーツの矢のようにピタリとハジメくんの頭部を指していた。
 「あんな目にあうということです」
 校庭は静まりかえっていた。そうだ、こうなる運命なのだ。だれもが心から納得したはず。ハジメくんのように生きてはいけないのだ。あんなライフスタイルはアウトなのだ。朝寝坊してはいけないし、朝食を抜いてはいけないし、親を親とも思わないような態度はいけないし、先生に歯向かってはいけない。子供はあくまでも子供らしく、素直でおとなしく従順な存在でいなくてはいけないし、よく食べ、よく遊び、よく学ぶことが必要だとしても、いずれもほどほどにすべきなのだ。社会のルールを踏みにじったら、人生というまじめなものを軽んじたら、一生遊んで暮らしたいなどと不届きなことを望んだら、最終的にはさらし首になってしまう運命なのだ。
 アハハハハ‼ 静寂は笑い声で破られた。
 「アハハハハハハ! おっかしい!」もちろん、それはハジメくんだった。「もっのすごいクソまじめな顔! クソが百つくくらいまじめな顔! いよっ、名演技、アカデミー賞! 残念、ぼくは死んだふりしてただけだよ! ぼくも名演技だったでしょ? 垢で膿賞もらおうかな」
 やっぱりだ、あいつめ‼ 警部はいきり立った。「梯子はまだか? 早くあいつをひきずりおろせ。これ以上一言だってしゃべらせるんじゃない。死んだふりだと? チキショウ、バカにしやがって!」
 ハジメくんは大口開けて笑い狂い、ポールは前後に激しく揺れた。呆気にとられている在校児童、腰を抜かしている先生方、とまどう機動隊員、警察官を尻目に、喜びを爆発させる人たちがいた。
 ハジメくん!
 ハジメくん!
 叫びながらバンザイし、拳を突きあげ、その場でジャンプ、ジャンプ、ジャンピング! そら見ろ、やっぱりズルだったんじゃないか! やるな、あいつ! さすがはじめくん! 早く降りてこいよ! 遊ぼう遊ぼう!
 勢いづいて押し寄せる永久の子供たちに、さしもの機動隊もたじたじだった。問答無用とばかりに振りまわす棍棒も、その激流を押しとどめることは難しい。
 ポールにはすでに梯子がかかっていて、ホロト刑事が上へ上へと急いでいたが、激しく揺れ動くポールのせいで、今にも振り落とされそうだ。
 「警部さんはどこ? 首切り警部さんは?」ハジメくんは視線をさまよわせる。「ちょっとはビックリしてくれた? これはきのうのお返しだよ。きのうは本当にお見事だった。頭をグッと押さえつけて、すぐに首をスパン! だもの。なにが起こったか、すぐにはわかんなかったよ。脇見をしたら、ちょん切られた切り口が見えたから、それでやっとわかったんだ。頭と体の生き別れ。警部さんはぼくの胴体にまたがって、斧を片手にうっとりしてた。ぼくはすぐに悟ったね。ここは死んだふりしといたほうが無難だって。正解でしょ? アハハハハハハ! ところで、こんなこと、しょっちゅうしてんの?」
 パン! と風船の割れるような音。
 「警部! やめてください銃なんか!」アナマ警部補がクナシリ警部を取り押さえる。「ここをどこだと思ってんですか! 早くそいつをしまってください!」
 「斧を寄こせ斧を。もうがまんならん。あいつのドタマをかち割ってくれる!」
 ポールのてっぺんに辿り着いたホロト刑事は、ハジメくんを取り外すのに手こずっていた。頭の両脇をはさんでポールから引っこ抜こうとして、思いきり指を噛まれてしまった。ギャッ! 刑事が梯子から転げ落ちるのと同時に、ハジメくんは宙にダイブした。
 ハジメくん! ハジメくん! ハジメくんにむかって差しのべられるおびただしい手の中に飛びこんだ。
 いったんその中に埋もれたハジメくんは、はじかれたように垂直に飛びあがった。まるでそのまま宇宙に飛び出すかのような勢いだったが、意外にすぐにスピードが落ちる。けれど、地面には決して激突しない。そこには常に永久の仲間が待ち受けていて、ハジメくんをしっかり受けとめて、そして打ちあげてくれるのだ。そおれ! はあい! 行くぞ! 飛べ! みんなは笑う。なんておもしろい、このトス遊び! 今は永遠の、いや永久の昼休みなんだ!
 「おやおやおや」ハジメくんがつぶやいた。

 なんだ、こいつは楽しいな
 世界がグルグルまわってる
 ぼくがまわってるんじゃなくて
 まわってるのは世界のほう
 ぼくが不動の中心で
 空、雲、家、窓、顔、道、地面がまわってる。
 ぐるり、ぐるぐる
 ぐるぐる、ぐるり
 一、二、三、四の
 五の、六の、七、八
 おやまあ八秒世界一周!
 これが世界だ、ちっぽけだ
 ぼくの人生がまわってるんだとしたら
 走馬燈のようにじゃなくて
 なんのようにって言うんだろうか?

 トスがひょっこり回った先はサチコさんだった。ハジメくんを受け取った拍子にごつんとおでこを突き合わせた。「なにしてんのよもう!」サチコさんはハジメくんの生首を両手で持ったまま、思わず叱ってしまう。
 「おっ、サチコさんじゃないか」ハジメくんはこの再会を喜んでいた。「なにこの格好。ラブシーンでもはじまるのかな」
 「バカ。本当のバカ。どうするのこれ? こんなこと望んだわけじゃないでしょ?」
 「うん。だけど、予想がつかなかった結末だから、これはこれでOKかな」
 サチコさんにはまだハジメくんに文句を言いたかった。教科書にボールペンでイタズラ書きするのをやめたほうがよかったのに、とか。けれど、トス遊びの継続を望む児童に無理やり奪われてしまった。
 クナシリ警部は手斧を振りまわしながら、子供たちをかきわけ、ハジメくんに迫る。「うおおおおっ!」と雄叫びをあげて、もはやだれが傷つこうが意に介さない。髪の毛が飛んで、指が飛んだ。血痕が飛び散り、悲鳴があがった。警部を中心に子供たち、先生方、機動隊員、おまわりさんは雪崩を打って転がり倒れ崩れていく。
 さすがのトス遊びにも終わりが来た。変な方角に投げ出されたハジメくんは、グラウンドでワンバウンドしてから、ごんごろごんごろ転がりはじめた。
 うおおおおっ! クナシリ警部が迫ってくる。
 あははははっ! ハジメくんは大笑いだった。まったくこの警部と来たら、最後の最後まで楽しませてくれる。
 「ヘイヘイヘイ!」鋭い声で挑発した。「警部さん、こちら! 屁の鳴るほうへ! ぶっぶっぶう! アハハハハハハ!」
 「黙れ黙れ黙れ黙れ!」
 たちまちハジメくんに追いついた警部は迷わず手斧を振りおろした。これがもしスイカ割りだったら、さぞかし拍手喝采だったろう。会心の一撃。見事に真っ二つに割れたのだから。だが、警部はそれで満足できないらしく、さらに手斧を振りおろす。渾身の力をこめて、二つを四つに、四つを八つに砕き続ける。
 とは言え、これはさすがにやりすぎじゃなかったか? これがもしスイカだったら、パパ、これじゃ食べれないよ! と子供たちは泣きだしていたことだろう。一突きごとに真っ赤な飛沫が四方八方に飛び散って、食欲を削ぐことはなはだしい。
 まったく、それは大泣きもいいところだった。校庭じゅうが号泣だった。涙とは縁を切ったはずの子供たちが、ありったけの声を振り絞ってビイビイ泣いた。体じゅうに刻みこまれた無数の傷から血を噴き出し、久しぶりの空気をせわしなく吸いこみ吐き出しながら、地面をのたうちまわっていた。こりゃすごい! まるで無差別殺戮現場じゃないか。ルモイ先生はさぞかしハッスルだろう。ところが、肝心のルモイっぺと来たら、泡を吹いて倒れてやがる。だらしない! なんて役立たずなんだ!
 「呪縛が解けた」アナマ警部補が真っ青な顔でつぶやく。「神通力が失せたんだ。学校で、いや町じゅうで永久の子供たちは生身の体に戻った」
 小屋の中で、空家で、路地裏で、草むらで、天井裏で、ドブ川で、路上で、かつて永久だった子供たちは深い苦しみの底に突き落とされたのだ。パーポ! パーポ! パトカーが、救急車が、一般車が、バイクが、サイレンを鳴らして、クラクションを鳴らして、ブレーキ音をきしませて、町じゅうを駆けずりまわった。おまわりさん、救急隊員、医者、看護士、一般人は絶叫し、憤慨し、嗚咽した。
 こうして、すべてをはじめたハジメくんは、ぼくらの前から消え失せた。ぼくらはもうハジメくんが笑うところも、飛び跳ねるところも、頭をゴツンとたたくところも見ることができないのだ。
 さようなら、さようなら、ハジメくん!

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