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チロと散歩する

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昔飼っていた犬のチロと散歩したときの話です。不定期掲載。
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肢が

肢が

 土曜の朝、顔を洗っているときからすでに違和感を感じていた。チロが悲しく鳴いているのだ。それはかつてのような、自分にもごはんを食べさせてくれと訴えるものではない。けれど、同じくらい悲痛な声だ。くう〜ん、くう〜ん。
 ぼくが外に出ても、チロは喜びのダンスを踊らなかった。肢がないのだ。前肢があるはずのところに前肢がない。後ろ肢があるはずのところに後ろ肢がない。四本の肢が四本とも、あるはずのところにない

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