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OMOI-KOMI 我流の作法 -読書の覚え-

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私の読書の覚えとして、読後感や引用を書き留めたものです。
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2021年4月の記事一覧

世界でもっとも美しい10の科学実験 (ロバート・P・クリース)

世界でもっとも美しい10の科学実験 (ロバート・P・クリース)

 本書は、物理学誌の読者投票で選び出された科学史に残る著名な10の実験を紹介したものです。

 著者は、科学実験における美の要素として、「深いこと(基本的であること)」「効率的であること」「決定的であること」の3つを挙げています。
 その基準に照らして選ばれたのが、以下の10の実験です。

世界を測る ― エラトステネスによる地球の外周の長さの測定
球を落とす ― 斜塔の伝説
アルファ実験 ― ガ

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ニッポン・サバイバル ― 不確かな時代を生き抜く10のヒント (姜 尚中)

ニッポン・サバイバル ― 不確かな時代を生き抜く10のヒント (姜 尚中)

閉ざされた自由 姜尚中氏の本は初めてです。
 本書は、集英社女性誌ポータルサイト(s-woman.net)に掲載した連載記事をもとに加筆修正したものとのことです。記述は平易で非常に読みやすく、著者の考えがストレートに記されています。

 内容は、

1.『お金』を持っている人が勝ちですか?
2.『自由』なのに息苦しいのはなぜですか?
3.『仕事』は私たちを幸せにしてくれますか?
4.どうしたらいい

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数に強くなる (畑村 洋太郎)

数に強くなる (畑村 洋太郎)

 著者の畑村洋太郎氏の本は、今までも「畑村式「わかる」技術」や「決定学の法則」など何冊か読んでいます。

 この本では、数の感覚を磨くための身近な方法を、畑村さんらしく分かりやすい文章で紹介しています。

 数に強くなるためには、(至極当然ですが、)先ずは、すべてのものを「数」で表してみることが基本になります。しかし、すべてのものが予め数量化されているわけではありません。
 この点に関して、日本化

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論より詭弁 反論理的思考のすすめ (香西 秀信)

論より詭弁 反論理的思考のすすめ (香西 秀信)

事実は「詭弁」 著者の香西秀信氏の専攻は「修辞学」です。
 著者は、論理的思考を「実際の議論」の中におき、その不適合性を次々と指摘して行きます。

 「論理的思考」では「事実」に基づき立論します。が、著者によると、「事実」を表現するのもそんなに簡単ではないということになります。

 たとえば、「事実」を表明する場合の「順序」です。
 複数の事実を言葉にする際には、完全に「並列(同時)」に表すことは

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古事記 (梅原 猛)

古事記 (梅原 猛)

 だいぶ以前になりますが、会社の先輩がBlogで阿刀田高氏の「楽しい古事記」という本を紹介されていました。

 古事記は、幼い頃、「やまたのおろち」「因幡の白兎」「海彦・山彦」といった断片的な昔話としては読んだことがあるのですが、「古事記」として「通し」で読んだことはありませんでした。

 今回、読んでみたのは梅原猛氏の訳による「古事記」です。
 内容は、梅原氏の訳文のスタイルにもよるのでしょう、

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吉田松陰一日一言 (川口 雅昭)

吉田松陰一日一言 (川口 雅昭)

松陰の言葉 吉田松陰関係の本は、 このBlogでも「留魂録」や「吉田松陰と現代」等を紹介していますが、今回は、ストレートに「松陰語録」です。

 松陰の著作や書簡等から、編者が日々366の「ことば」を選び並べたものです。詳細な解説はなく現代語訳も直訳調ですが、それがためにかえってダイレクトに松陰の言葉が伝わってきます。
 その中からいくつかご紹介します。

 まずは、物事に対する姿勢について。
 

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渋沢栄一を歩く (田澤 拓也)

渋沢栄一を歩く (田澤 拓也)

 渋沢栄一氏(1840~1931)は、明治・大正期の指導的実業家として有名です。しかし、実業にたずさわるまでの生涯は、幕末の動乱の只中、波乱万丈だったようです。

 武蔵国榛沢郡血洗島(埼玉県深谷市)の富裕な農家に生まれた渋沢氏は、若きころ、江戸で尊王攘夷運動に参加しました。その後、一橋家用人の推挙で1864年(元治元)一橋家に仕えましたが、当主の一橋(徳川)慶喜の将軍就任とともに図らずも幕臣とな

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続 駅名で読む江戸・東京 (大石 学)

続 駅名で読む江戸・東京 (大石 学)

 たまたま図書館で目に入ったので借りてみました。
 以前読んだ「アースダイバー」や「地図から消えた東京遺産」といった本と関心の根は同じです。

 このところ、営みとしての必然性の薄い市町村合併等による「名前の喪失」が著しく、さらに、代わりに登場した新たな名前はといえば、根無し草のような味気のないものになっています。
 そういう中で、身近な土地の由来や今に至る変遷、過去と現在の対比・変貌には、時折思

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進化しすぎた脳 (池谷 裕二)

進化しすぎた脳 (池谷 裕二)

いいかげんな?脳 以前「だまされる脳」という本を読んで、ちょっと大脳生理学に興味を持ちました。

 本書は、著者が数人の高校生相手にフランクな講義をしている、ほぼそのままの様子を文字に起こしたものです。話のテンポもよく、受講者(読み手)の興味をかきたてながらの親切丁寧な語り口は、著者の人柄かもしれません。

 この本を読んで、事実としての新たな知識と発想としての新たな気づきがありました。

 まず

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狼花 新宿鮫IX (大沢 在昌)

狼花 新宿鮫IX (大沢 在昌)

 最近、小説はほとんど読まないのですが、この手の小説で唯一能動的に読んでいるのが大沢在昌氏のこの「新宿鮫シリーズ」です。
 今回手にした「狼花」は、前作の「風化水脈」から数年ぶり、久々の新作(注:このBlog投稿時)です。

 私も、はるか昔はミーハー(今でも本質的には不変)でしたから、大薮春彦氏の「野獣死すべし」「蘇える金狼」といった当時正統派?のハードボイルドにはまっていた時期がありました。映

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メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト 2種 ラインケアコース (大阪商工会議所)

メンタルヘルス・マネジメント検定試験公式テキスト 2種 ラインケアコース (大阪商工会議所)

 会社で企画されたメンタルヘルス研修のテキストで配布されたので、ザッと目を通してみました。

 内容は、大阪商工会議所主催の検定試験に準拠した解説教材なので、「読み物」として面白いというものではありません。
 ただ、以下の目次のとおり、メンタルヘルスに対する職場の役割を体系的にたどることはできます。

第1章 メンタルヘルスケアの意義と管理監督者の役割
第2章 ストレスおよびメンタルヘルスに関する

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落語「通」入門 (桂 文我)

落語「通」入門 (桂 文我)

 著者の桂文我氏は関西の現役の噺家で、私が好きだった桂枝雀師匠の弟子です。

 その枝雀師匠から落語の歴史もきちんと勉強するよう指導され、以来、散逸していた落語史料を丹念に集め、「噺家による落語の本」として自ら著したものとのことです。

 落語の起源から書き起こし、江戸・明治・大正・昭和の名人のエピソードやその時代風俗にも触れた肩の凝らない読み物になっています。
 その中で紹介されたいくつかの薀蓄

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日本の「哲学」を読み解く (田中 久文)

日本の「哲学」を読み解く (田中 久文)

 明治以降、輸入ものの西洋思想が主流でしたが、1930年代、日本でも初めて独自の哲学が生み出されてきたと言います。
 そういった日本哲学の概要だけでもかじれるかと思い、手にした本です。

 本書は、日本哲学を代表する西田幾多郎・和辻哲郎・九鬼周造・三木清という4氏の思想を分かりやすく解説した入門書ですが、やはり、私には荷が重過ぎました。
 哲学の素養のある人から見ると、それなりにポイントをおさえた

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こころのスイッチをきりかえる本―今すぐできる気分転換のコツ (斎藤 茂太)

こころのスイッチをきりかえる本―今すぐできる気分転換のコツ (斎藤 茂太)

 著者の斎藤茂太氏は、1916年の生まれ、精神科医であり文筆家でもあります。ご存知のとおり歌人斎藤茂吉氏の長男で、作家北杜夫氏の実兄です。

 今回は、メンタルヘルス関係の本のつながりでこの本に辿り着きました。斎藤氏の本は初めてです。
 とても読みやすい本で、力んだところのないさらりとした語り口です。
 こういう感じです。

(p22より引用) こころのスイッチの場所は、まず「好きなもの」にある。

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