マガジンのカバー画像

【読書感想文】まとめ

28
読書感想文の集合体。
運営しているクリエイター

記事一覧

【読書感想文】海辺のカフカ/村上春樹

【読書感想文】海辺のカフカ/村上春樹

好きな作家を聞かれて、私はまず彼の名前を口にする。それはおそらく17歳の時に「海辺のカフカ」と出会ったところから始まっている。

私の入り口は「海辺のカフカ」だった。だからこそ、私にとってはずっと大切な物語だ。今回手に取ったのに特に理由はない。なんとなく読み直したくなったから。彼の小説の多くを何度か読み直している。「海辺のカフカ」も3度目だ。

前回は大学生の時であり、それはもう10年以上も前のこ

もっとみる
【読書感想文】何者/朝井リョウ

【読書感想文】何者/朝井リョウ

朝井リョウ氏は個人的に好きな作家のうちの一人であり、文庫になっているものはほとんど読んでいる。また、単行本も購入することがある程度には彼の作品のファンである。

ただ、いくつか読んでいない作品があって、その一つがこの「何者」である。

なぜ、読んでいなかったのか。その理由こそが、この物語のテーマに重なってきてそうなのだが、怖かったのだ。この物語は、僕にグサグサと容赦なくナイフを刺してくる。それがわ

もっとみる
【読書感想文】52ヘルツのクジラたち/町田そのこ

【読書感想文】52ヘルツのクジラたち/町田そのこ

タイトルに惹かれて。本屋大賞受賞作ということもあり、ずっといつか読みたいと思っていて、私にとってその時が来たのが、2023年11月だった。

圧巻。ダラダラと読み進める小説もある中、本作は一気読みに近いペースで読み終えた。

読了場所は、近所のホーリーズカフェ。ちょうどベビーカーに乗せた息子が気持ちよさそうに眠っている時だった。

物語の終盤、そんな息子の顔を見てかどうかはわからないが、新しくでき

もっとみる
【読書感想文】流浪の月/凪良ゆう

【読書感想文】流浪の月/凪良ゆう

気持ちの良い読後感ではないが、この感じが僕は大好きだ。

久しぶりにそんな作品に出会えた気がする。いつもの如くどのようなタイプの作品か一切知らずに、何かの拍子にデジタルデータで購入していた本書を手に取った8月。

文と更紗、そして梨花の物語。あまりにも悲しい。ただ悲しいというのは僕の欺瞞であって、当人たちにはただの迷惑でしかないだろう.それがわかっていてもなお、僕はそれすら含めて悲しいと感じている

もっとみる
【読書感想文】街とその不確かな壁/村上春樹(4,235文字)

【読書感想文】街とその不確かな壁/村上春樹(4,235文字)

ここ最近(といっても、10年くらい)は、彼の長編小説が出るとその週末に一気に読むことが多かった。というか、そのような読み方をしていた。

ただ、今回は、ゴールデンウィークに読み始めた後、まとまった時間を確保して読むことはせずに、週末に少しずつ読み進め、7/9(日)夕方ごろ、近くの喫茶店で読み終えた。

達成感と安心感。読み終えた後の率直でシンプルな感想。こう言っては何だが何も起きない。ただただ個人

もっとみる
【読書感想文と雑記】猫を棄てる/村上春樹

【読書感想文と雑記】猫を棄てる/村上春樹

夏休みである。今年の僕の夏休みは、8/11~8/16までの6日間。長いようで、短い。せっかくの長期休暇なので、日常ではできないような、やりたいことをやろうと思い立ってみたものの、現実はそう甘くはなく、そのほとんどができていない。

このnoteを書く、という行為もそのうちの一つの行為。なんとかこうして、PCの前に座っている。

これまで一年以上続いていた毎月のnoteの更新が22年7月で止まってし

もっとみる
【読書感想文】六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成

【読書感想文】六人の嘘つきな大学生/浅倉秋成

「月─ ─地球からは絶対に裏側が見えないって。それを聞いてから、意味もなく考えちゃうんだよね。」
浅倉秋成.六人の嘘つきな大学生(角川書店単行本) (Kindle の位置No.378-379). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

就職活動。それは学生にとっては、人格を変えてしまうほどの人生の一大イベントである。

大学入試とは違う人生の節目。入試当時も、これで人生の全てが決まって

もっとみる
【読書感想文】明日、世界がこのままだったら /行成薫

【読書感想文】明日、世界がこのままだったら /行成薫

※ネタばれ含みますので、ご了承ください。

突然見知らぬ世界に迷い込んだワタルとサチの数日間の物語。

知り合いでもない二人は、ある朝、お互いの家の部屋と部屋がくっついた歪な世界で出会う。二人の他には誰も存在しない。

いや、もう一人サカキという女性がいる。突如、現れた彼女からこの世界の役割、仕組みを知った二人。来るべき日までに、文字通り、人生の答えを導き出す物語。

この話を読んでいる最中、僕は

もっとみる
【読書感想文】学び効率が最大化するインプット大全/樺沢紫苑

【読書感想文】学び効率が最大化するインプット大全/樺沢紫苑

随分前に購入していたものの、しばらく積読になっていた本書。年明けっぽい本を探していた時にたまたま思い出し読んでみた。

本書にあるとおり、インプットした記憶を定着させるためには、とにかくアウトプットをすることが大切、とあるので、本書に倣い、本書をインプットしたアウトプットを記しておきたい。

ということで、まずは、欲張らずに3つの「気づき」を記しておく。

3つの気づき・インプットしたら、2週間で

もっとみる
【読書感想文】中国行きのスロウ・ボート/村上春樹

【読書感想文】中国行きのスロウ・ボート/村上春樹

○はじめに村上春樹の小説については、長編・短編問わず、大学時代中心にほとんど読んでいる。

その後の新著についても、ほぼ発売日近辺に読んでいる。それほど、彼の作品が好きだ。一番好きな作家を聞かれれば、まず僕は彼の名前を挙げるだろう。

ただ、エッセイについては、まだ読んでいないものも多い。これについては、ここ4~5年程度で気が赴くままに読んでいる。なので、特に最近は、彼の文章に触れていないわけでは

もっとみる
【読書感想文】雪国/川端康成

【読書感想文】雪国/川端康成

前回に続いて、名作と言われている作品を読んでみよう、シリーズ。

今回は、「雪国」。名前はよく聞くし、有名な冒頭は知っているが、それ以上の知識は何もない。どんな話なのかのイメージすらつかないというのが読む前の状態。

今回は、感想というものでもないけど、単なるメモ程度に記録をしておきたい。

正直読んでいて、情景がイメージできない部分が多かった。

みたいな場面が結構あった。結局、正確に物語を理解

もっとみる
【読書感想文】羅生門・鼻・坊っちゃん・檸檬

【読書感想文】羅生門・鼻・坊っちゃん・檸檬

表題の時代の作品をこれまでほとんど読んでこなかった。タイトルがなんとなくわかるのは、大学受験の時に、著者名と主要なタイトルを暗記したからだろう。

今でも、その暗記になんの意味があったのかよくわからないが、こうして、十数年後に読もうと思うきっかけのようなものにはつながっているのかもしれない。

思えば、2年前に一度、太宰治を数作読んだ。中でも、「正義と微笑」は割と好みだ。主人公の折原進くんの思春期

もっとみる
【読書感想文】紫色のクオリア/うえお久光

【読書感想文】紫色のクオリア/うえお久光

クオリア(英: qualia〈複数形〉、quale〈単数形〉)または感覚質とは、感覚的な意識や経験のこと、意識的・主観的に感じたり経験したりする質のことであり、脳科学では「クオリアはなんらかの脳活動によって生み出されている」と考えられている。
(wikipediaより)

<感想>昨年夏の終わりにおそらく初めて「ラノベ」を読んだ。何が「ラノベ」なのかというと、その定義はよくわからないが、電撃コミッ

もっとみる
【読書感想文】これはただの夏/燃え殻

【読書感想文】これはただの夏/燃え殻

そんな夢を見られる年齢ではないことは、よくわかっている。ただ 十代や二十代の頃と考え方や気持ちは、ほとんど変わっていない。自分でも呆れるくらい未だに、ここではない何処かへの逃避を夢見てしまう。年相応に考え方や身の振り方を変えていける人が信じられない。そういう人は羨ましいが、そういう人になりたくはない。
燃え殻. これはただの夏 (Kindle の位置No.1307-1310). 新潮社. Kind

もっとみる